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シンガー xiangyuとは何者? 水曜日のカンパネラチームバックアップの“謎の新人”に迫る

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 水曜日のカンパネラ(以下、水カン)のサウンドプロデューサー、ケンモチヒデフミとマネージャーのDir.Fこと福永泰朋がバックアップするシンガーxiangyu(シャンユー)が、5月にデビューEP『はじめての○○図鑑』を発表した。「謎の新人」が枕詞になっている彼女はどんなアーティストなのか? インタビュー記事を参照し、本人とケンモチ、福永の3人にメールで寄せてもらったコメントを交えつつ紹介していこう。

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 名前は中国語だが日本人。本名が「あゆみ」で姓に川が関係しているため、鮎を意味する中国語「香魚」の読みをステージネームにしたそうだ。

 僕は昨年9月7日、2度目のライブ(青山・月見ル君想フ)から何度か見ているが、小柄な女の子がひとりでステージに立つといういかにも心細い状況から、餃子のかぶりものやビニールプールなどの小道具を駆使して波乱を起こし、徐々に観客を巻き込んでいく痛快なライブには、水カンの優雅な騒擾を彷彿とさせるところがある。

 異なるのは、Gqom(南アフリカ発祥の殺伐ハウスミュージック)を取り入れた「プーパッポンカリー」やアラビックな「ヒューマンエボリューション」、ケルト風のフィドルの音色が印象的な「餃子」など、エスニック色の濃いダンスミュージックへの傾倒がより顕著なことだ。歌詞面でも、「餃子」は彼女の好物の歌だし、「Go Mistake」は“ゴミ捨て行く”のシャレ、「風呂に入らず寝ちまった」は曲名のまんま。いわば、xiangyu自身の生活や心の動きを覗いた気がして共感まじりに微笑んでしまう、という趣だ。

 水カンと比較する声について福永は「世の中に馴染めば違いは自ずとわかると思うので、僕は気にしていません。本人の持ち味をしっかり出すことを一番意識しています」と言う。「本人の持ち味」は彼が常に重視していることだ。6年前、デザインフェスタに出展していた服飾学生のxiangyu(もちろん本名)にいきなり「歌ってみない?」と声をかけたのがきっかけだそうで、ピンときた理由が「ホームセンターにあるもので服を作っていたから」というのは実に福永らしい。「社会に何か発信したい気持ちが爆発していて、そこに可能性と広がりを感じた」のだそうだ。

 最初に「謎の新人」と書いたが、それもそのはず、彼女は「音楽歴は2018年9月から」と公言している。初ステージは同9月5日(下北沢・ERA)だから、それまでは歌もダンスも未経験だったわけだ。福永の誘いを断って新卒で就職するが、仕事中にラジオから聞こえてきた阿川佐和子の「誰も気づいていないけど、自分には別の才能が眠っているかもしれない」という発言に触発され、そういえば「歌ってみない?」って言ってくれた人がいたな、と思い立って福永と連絡をとったという。当時は音楽に興味がないどころか友人とのカラオケさえ避けていたそうだからなかなか唐突だが、好奇心と度胸と行動力に感心するエピソードだ。さすが山登りが趣味というだけのことはある。

 もっとも生来の目立ちたがり屋でもなく音楽家に憧れていた人でもないので、初めはライブでも緊張するばかりで毎回泣いていたという。徐々に楽しめるようになり、音楽も好きになってきたきっかけは、曲作りにガッツリ関わり始めたことらしい。

「最初のころから曲のテーマや簡単な歌詞をケンモチさんに投げたりはしていましたが、さらっとしかやっていなかったんです。でも、自分の興味のあることや日々の生活のことを曲に乗せよう! と本腰を入れ始めてから、キーワードを能動的に探すようになったというか、常にアンテナを張って生きるようになりました。そうしてできた曲たちはやっぱり思い入れが強いし、自分自身と離れていないので、ライブパフォーマンスのイメージが膨らみやすくなり、楽しさが倍増しました」(xiangyu)

 仕事でもなんでもそうだが、努力すること、楽しむこと、好きになること、自信を持つことには、ニワトリと卵的な切っても切れない関係がある。それぞれの伸びが他の要素と刺激し合って、福永が言う「本人の持ち味」を自然に発揮できるようになるのだ。ライブ後の反省会を目にしたことがあるが、真剣な表情で意見をぶつけ合う3人の姿からは、彼女が徐々にキャラクターを開花させてきた環境をうかがい知れる気がした。

 では、xiangyuのキャラクターとはどんなものか。彼女の魅力を、ケンモチは「裏表のない性格。天真爛漫さ。努力家であるところ。芯があって通る声(居酒屋でどんなに混んでいても必ず店員を呼び止めることができる)」、福永は「感情が表に出やすいところ。他人から見て何か言いたくなってしまうような抜けや隙間があるところ。慎重でありながらも何か決めたことについては自分で進もうというリーダー的な一面も持ち合わせている」と語る。僕にも彼女の人柄を垣間見る機会はあったので、この評には納得がいく。

 昨年9月、川崎のBAYCAMPでクリトリック・リスを見たとき、フロアに降りて股間にセットしたテルミンを女性客に触らせるスギム得意のセクハラ演出にxiangyuはロックオンされた。いやがっても不思議ではないし、スギムの狙いもそれだったはずだが、彼女は「おじさんの股間を触らせてもらえる機会なんてそうそうないんで、光栄でした」とニッコリ。むしろステージさばきの面で勉強になったと目を輝かせていた。

 4月、コメカとパンスの二人からなるテキストユニットT.V.O.D.と僕がレギュラーを務めるネット番組『TVODの焼け跡テレビ』にxiangyuが出演してくれたときも、年長の男性ばかりの共演者を相手にまったく物怖じすることなく、予備知識のない話題にも積極的に食いついて、しっかり収穫を得て帰っていった。

 こうしたエピソードからも、彼女が音楽を始めた原動力として指摘した「好奇心と度胸と行動力」がうかがえる。飾ったところがなく、誰ともオープンに接してその「現場」を楽しむことができる。こういう人は強い。野望を尋ねられて「いい作品を作りたい」「もっと沢山いろいろなところに呼んでいただけるようになりたい」と語っていたが(参照)、ケンモチと福永が引いた水路をピチピチと泳ぎ、順調に「持ち味」を伸ばしていければ、どちらも自然に実現するだろう。

 4月に「ヒューマンエボリューション」を先行配信したとき、ヒトが他の生物と連続した生命体であることを言祝いだ同曲によせて、xiangyuは「いつの日か地球生息生物のオフ会が出来る日を願って。その時はチーターやイゾラドの方と乾杯がしたい」とコメントしていた。その心意気やよし。彼女が今後どんなエボリューション(進化)を遂げ、どこへ辿り着くのか、僕もできるかぎり見守ってゆきたい。(高岡洋詞)