福山雅治は正義のヒーローになれるのか 『集団左遷!!』良心と保身の究極の選択を問う
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日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)第9話が6月16日に放送された。
参考:福山雅治は答えのない問いに挑み続ける 『集団左遷!!』が『半沢直樹』とは決定的に異なる理由
会社が大きな舵を切ったとき、選択を迫られるのは経営者だけではなく、社員もそれぞれの立場で影響を受ける。会社を存続させるために不正にさえ手を染めるべきかという問題は、社員一人ひとりにも良心と保身の究極の選択を突きつける。『集団左遷!!』第9話では、会社員として何を守るべきかがクローズアップされる回となった。
日本橋支店をめぐる疑惑は、頭取の藤田(市村正親)が横山(三上博史)の関与を隠ぺいしたことで闇に葬られた。自身と対立する会長と副頭取を排除するために横山と取引した藤田だったが、横山の狙いは別のところにあった。外資系ネット通販ダイバーサーチとの提携。その背景には「先を読んで変わらなければ銀行は生き残れない」という横山の考えがあった。銀行を舞台とする『集団左遷!!』だが、現実でも、大手メガバンクでは大規模な人員削減や無人店舗の導入が推進されている。金融サービスといえども時代の変化を避けることはできない。問題はその方法である。
日本橋支店にプールされていた裏金と別に存在するもうひとつの金のありかを巡って、第9話では熾烈な攻防が繰り広げられた。常務の隅田(別所哲也)とともに、横山から政治家へ渡った資金の証拠をつかむために奔走する片岡(福山雅治)。日本橋支店副支店長の真山(香川照之)をはじめ、なつかしの旧蒲田支店メンバーの再登場もあったが、特に横山のもとで支店統括部部長をつとめる梅原(尾美としのり)の良心の葛藤が丹念に描かれていた。梅原は横山による贈賄が記録されたメモ帳を鮫島(小手伸也)から託される。片岡の同期というだけで疑いの目を向けられる梅原にとって、いわば“踏み絵”を踏ませるような仕打ちであったが、そこで梅原がとった行動はドラマ全体のハイライトになった。
また、抜き差しならない関係の片岡と横山は、これまでも直接対決を通じて火花を散らしてきたが、2人の間の亀裂がより明確になったのが第9話だった。「不正によって築かれた三友の未来を次の世代の行員たちに生きてほしくない」と語る片岡と、「銀行が生き残るのには脱銀行しかない」と主張する横山。ともに働く行員の人生を背負おうとする片岡と、三友銀行の未来のために不正な行為も辞さない横山。2人の考えは交わらない平行線のようである。それでも片岡が真っ向から自分の思いをぶつけてきたのは、どこかで横山を信じている部分があったためと思われる。また横山にしても、片岡に言いたいことを言わせ、その上で廃店を回避するチャンスも与えてきたという点でフェアな部分を持ち合わせている。しかし、三友銀行のためという共通の思いを持ちながら、理解し合えない片岡と横山の違いは、ここに来てとうとう決定的になってしまった。
片岡が不正を見過ごせない理由は多分に片岡自身の性格によるところも大きいが、それだけではない。一度不正な行為に手を染めてしまえば二度三度と過ちを繰り返すのが人間であり、一度失った信用を取り返すには当初の数倍の努力が必要だ。片岡の姿勢は信用を根本に置く銀行員として基本かつ王道と言える。一方で、清濁あわせ飲む藤田や目的を達成するために手段を選ばない横山は、ある意味で世間の写し鏡のようであり、彼らのもとで働く行員も見て見ぬふりをする者が大半だろう。計算も保身もなく、最初から負けを宿命づけられた戦いを続ける片岡は、梅原が言うとおり「馬鹿」なのかもしれない。しかし、そんな片岡の活躍を見て心の中で小さなガッツポーズをあげてしまう自分がいる。単純すぎるとわかっていても、正義のヒーローがどこかにいてほしいと願っているのだ。