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広瀬すずが「奇跡なんてない」と吐き捨てる 『なつぞら』千遥の知られざる悲しみ

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リアルサウンド

 『なつぞら』(NHK総合)第12週の初日は、なつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)が生き別れた妹・千遥がいるはずの住所を訪ねる姿が描かれた。

 千遥を引き取った川谷幸一(岡部たかし)の住所を訪ねるなつと咲太郎。彼らは、幸一に付き添うように部屋から出てきた少女(池間夏海)を見つけた。なつと咲太郎は「千遥」と思わず声をかける。だが、少女は千遥ではなく、幸一の娘だった。

【写真】落胆するなつと咲太郎

 千遥は家出したのだ。それも千遥が6歳のときに。少女は自分の母が千遥にきつく当たったのが原因ではないかと話し、深々と頭を下げて詫びた。

 千遥の行方を話す幸一と少女、咲太郎の声が聞こえる中、静かに涙を零すなつの表情が写映し出される。その表情からは悲しみだけでなく憤りも見えてくる。だが、その憤りは幸一たち家族にではなく自身に向いている。妹が過ごしてきたつらい日々を何ひとつ気づけないまま、自分は過ごしてきたのだと。

 「風車」に戻ってきても、なつの顔に笑顔は戻らない。「どこかで生きてるよ」と力強く励ます咲太郎に、なつは苛立ったような声で「そんな奇跡、信じろっていうの」と返した。「わたしはなーんも知らないまま、今まで生きてた。千遥の悲しみや絶望を知らないまま。幸せに。千遥を見捨てたのに」。茫然としたなつの表情に胸が苦しくなる。

 「お兄ちゃん、奇跡なんてないんだわ」と吐き捨てるように言うなつ。自分の部屋に戻ると、北海道の家族から手紙が届いていた。なつを思う富士子(松嶋菜々子)の優しい語りが、今のなつには刺すように痛い。

 「わたしはもう、そちらへは帰れない。千遥がどうしているのか、2人に何も話してやれない」。劇中、落ち込んだ様子のなつと咲太郎に語りかける父親(内村光良)の声が切なかった。

(片山香帆)