完成後自ら命を絶った監督による約4時間の大作「象は静かに座っている」公開決定
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「象は静かに座っている」
中国映画「象は静かに座っている」が、11月より東京のシアター・イメージフォーラムほかで公開される。
本作は廃れた田舎町に暮らす、生きることに疲弊した4人の男女を捉えた群像劇だ。友人の自殺を目の前で目撃した暴力的な青年、将来の目的を見出せない少年、母親と折り合いが悪く教師と肉体関係を持つ少女、家族に見放され時間を持て余す老人。北の僻地・満州里のサーカス団にいるという、ただ座り続けている奇妙な象の存在を知った4人が過ごす長く陰鬱な1日が描かれる。
完成後に29歳の若さで自ら命を絶った北京電影学院出身のフー・ボーが監督、脚本、編集を手がけた3時間54分に及ぶ長編。作家としての顔も持つ彼が自身の著書「大裂」の中で、もっとも気に入っていた同名短編を映画化した。ハンガリーの監督タル・ベーラを師と仰いだ彼は、人物を追いかける極端な長回し、自然光にこだわったライティング、グレーの色調で統一された画面といった手法で初長編を撮り上げている。キャストにはチャン・ユー、ポン・ユーチャン、ワン・ユーウェン、リー・ツォンシーが名を連ねた。
生前のフー・ボーは本作の主題を「世界の美しさには秘密が隠されていると彼は思った。世界の心臓は多大な犠牲を払って脈打っており、世界の苦悩と美は様々な形で均衡を保ちながら関連し合っていて、思慮の入る余地のないこうした欠落の中、究極的には一輪の花の幻影を得るために、多くの生物の血が流されるかもしれないのだ」とアメリカの小説家コーマック・マッカーシーの一説を引用し、語っている。
フー・ボーの死後、映画が初披露された第68回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞、長編初監督作品賞スペシャルメンションを受賞。また中華圏を代表する映画賞の1つ、金馬奨では最優秀作品賞、脚色賞、観客賞の3冠に輝いた。日本では2018年に第19回東京フィルメックスで上映されている。
(c)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen