吉高由里子が見つけた「何のために働くのか」の答え 『わたし、定時で帰ります。』撮影を終えて
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6月某日、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の最終回が撮影されているスタジオにやってきた。スタジオ内に足を踏み入れると、早速、主人公・東山結衣を演じる吉高由里子が楽しそうに笑う声が聞こえてくる。どうやらワーカーホリックの元婚約者・種田晃太郎(向井理)との2ショットシーンのリハーサルのようだ。「おなかすいたよー。ね、いま何食べたい?」(吉高)、「ちょうど3時のおやつの時間だ。んー……ごはん(笑)」(向井)。そんな何気ない会話が役柄とシンクロして、結衣と晃太郎の絶妙な距離感をリアルにしていく。いざ本番になると、台本にないセリフも飛び出す。カットがかかると、そこにいた誰もがほっこりとした気持ちでいっぱいになっていた。
【写真】向井理におんぶされる吉高由里子
オフィスシーンの撮影時には、デスクで伸びをしているエンジニア・吾妻役の柄本時生の脇腹をチョップ! 新人・来栖役の泉澤祐希の肩をトントンとたたき振り向きざまにほっぺをプニッ! 先輩・賤ヶ岳役の内田有紀とは「今のおかしい!」とスタッフにツッコミを入れて大笑い。かと思えば、今度は自分がバレッタを外す段取りを忘れてしまい、メイクさんにツッコまれ「ごめんごめん~」と、まるで歌舞伎役者のような素振りで謝って見せる。
「こんなに楽しい現場は、なかなかない」「吉高さんがいつも場を明るくしてくれた」。リアルサウンドのインタビューに答えてくれたキャストもプロデューサーも、こぞってそう話していた。きっと、『わたし、定時で帰ります。』というドラマは、東山結衣が職場の仲間たちの閉塞感を解き放ってきたように、吉高由里子の軽やかな人間性がもたらす周囲の笑顔があってこそ、成立した作品だったように思う。
共演者たちが続々とクランクアップを迎える中、吉高がインタビューに応じてくれた。『わたし、定時で帰ります。』を通じて、彼女自身が感じたこととは?
■「私を受け入れてくれる現場でした」
ーーいよいよ撮影も大詰めですが、率直な今の気持ちを教えてください。
吉高由里子(以下、吉高):本当に「もう終わってしまうんだ……」という気持ちが大きくて。特に今日は、みんながクランクアップする日なのですごく寂しいですね。みんな話が面白い方たちばかりで、一緒にやっていてすごく楽しかったから。それに、この作品は見てくださっている方々も、とてもいい人ばかりだったから、終わってほしくないですね。ネットの書き込みとか見てても「自分たちの周りは……」とか「うちの会社は……」とか、すごく真面目なご意見を頂き!
――ネットの反響も、チェックされるんですね!
吉高:見ますよー(笑)! いつもはあまり見ないんですけど、このドラマを見ている人たちの書き込みはすごく勉強になって楽しかったです。「こういう世の中なんだ」「こういう時代なんだ」って。今まで、知らなかったことを知る機会にもなるドラマで、すごくたくさん勉強になりました。
ーー反応を見ていると、「結衣のような先輩がほしかった」「理想の上司だ」というような声もありましたが、いかがですか?
吉高:本当かよ~? って(笑)。私自身は、全然そういうタイプじゃないから。きっと、そう感じてもらえたのは、脚本があってのありがたみですよね。
ーー共演者のみなさんが「この現場は楽しい」っておっしゃっていたのが印象的で、吉高さん自身が現場で心がけていたことはあったんですか。
吉高:自分が一番楽しもうという気持ちは常にありますね。「眠い」とか「疲れた」みたいな方向にいくのは簡単だけど、「疲れを忘れて楽しむ」っていう方向に切り替えた方が、満喫できるというか。せっかく出会えた作品なので、自分の心に残る作品にもしたいと思っていて。でも自分のスタミナの配分を、まだ把握してないところもあります(笑)。午前中に騒ぎすぎて、午後になってすぐにグッタリしちゃったり……。そういう私のことも、現場のみんなが受け入れてくれてたのも、楽しくて居心地がよかったんだと思います。
■「仕事も自分も大切に、人生を楽しんでほしい」
ーーお仕事ドラマではなりますが、向井さん演じる晃太郎と中丸雄一さん演じる諏訪巧との三角関係もひとつ見どころとなっていますね。今回、向井さんとの共演はいかがでした?
吉高:向井さんとは今回初めてお会いして、共通の友だちもいないですし、本当にゼロからのスタートだったんですが、本当にドシッと構えてくれて、堂々としているし、一緒にやってて安心できました。常に平常心で、正しいことしか言わないので、向井さんならなんとかしてくれそうって思うことができました。もしかしたら、ちょっと頼りすぎちゃったかもしれない(笑)。すごく物知りなので、私がわからないことがあると丁寧に説明してくれて。知的だけど、知識を振りかざすタイプではないのも、ありがたかったです。冷静そうに見えて、実は熱い部分もある、いろんな引き出しを持っていて面白い人だと思いました。
――それに対して、中丸さんはいかがでした?
吉高:本当に「いい人」です! 振ったらなんでもやってくれるし、優しい性格なんだろうなと、ちょっと変わっている部分もあるけど(笑)。中丸さんとのシーンは、なかなかカットがかからなくて、無茶振りのアドリブも多かったんです。結衣と巧のやりとりにプロデューサー陣が“萌え~”ってなってたから! 『わた定』は台本に書いてある、書いてないを忘れちゃうくらい、エチュード感覚で演じられた部分も多くて。時生さんもなんでも返してくれましたし。そういう演技ができたのは、本当に楽しかったです。
ーー「普通」のオフィスを描いているので、取り立てて大きな事件が起きているわけではないですが、印象的なシーンが多いように思います。
吉高:そうですね。どの場面が1番なんて決められないですね。みんなそれぞれに思い出があります。江口(のりこ)さんの王丹役もハマっていましたし、シシド(・カフカ)さんの三谷役は、真面目で心の内が言えないという部分が本人にも通じるものがありましたし。同じ環境で働くというか、生きていくって、そういうことですよね。みんなが同じところに共感しなくてもいいと思ってて。いろんな人の立ち場を考えるきっかけになって、ドラマを見たことで少しでも気持ちが楽になってくれる人が増えてくれたら嬉しいなって、やりがいに繋がりますね。
ーー個人的には、「休んでも居場所はなくならない」という結衣の考え方が、このドラマの核になるように思っていて。「突っ走るか、リタイアか」みたいな2択から、「休みながら頑張ろう」という新しい選択肢を見せてくれたんじゃないかと。吉高さん自身は、働くと休むのバランスはどのように考えていますか?
吉高:私もしばらく仕事を休んでいた経験があるんです。そのときは辞めようかなぁって考えていて……。何か別のことがやりたかったとかじゃなくて、それこそ「やるか、辞めるか」の2択しかないって思い込んでたのかも。そしたら、会社の人が「いやいや、辞めて何するの? とりあえず、休んでおいで」って言ってくれたんです。そういう人と出会えた時点で、私は運がよかったなって。人との出会いや仕事との出会い、得たもの、アウトプットしたもの、全部自分の中で幸せに繋がっているんだと感じています。
ーー30代になって、何か心境は変わりましたか?
吉高:恐ろしいくらい何も変わらないですね(笑)。そろそろちゃんとした趣味を見つけないとと思うくらい。旅行が趣味と言ったら、そうなるかもしれないんですけど、休みがないとできない趣味じゃなくて、日常的にリフレッシュできるようなものを。よく取材で「リラックス方法は?」とか聞かれるんですけど、「寝る?」「飲む?」しか言えなくて(笑)。
ーー泉澤さんが、吉高さんとオンラインゲームの話で盛り上がると、お話していましたよ?
吉高:あ、そうだ! ゲームがめっちゃ好きなんですよ。それも、16歳の時から変わらない(笑)。家に帰って、ゲームして、寝る……みたいなのが、15年経った今でもやっているので、ときどき「怖~!」ってなります。
ーー今後、女優のお仕事で挑戦してみたいことはありますか?
吉高:「ああいうジャンルをやってみたい」「こういう仕事をやりたい」と思うことはありますが、まだ言葉にできるほど具体的にはなってないですね。縁があって繋がった人たちと一緒に、いいものをたくさん残していけたらいいな、と思いながらやってます。やれることをやっていくしかないです(笑)。
ーー最後に、最終回を楽しみにしている視聴者のみなさんに、メッセージをお願いします!
吉高:まずは、今まで見てくれてありがとうございますと伝えたいです。このドラマは誰も間違っていないし、みんなが共感してくれる作品なので、結局「なんのために働くのか」ってよくわかってない人もいるかもしれないし。全員バラバラでいいと思うし、休んでもいいし、頑張って働いてもいい。でもちゃんと仕事も自分も大切にして、人生を楽しんでほしいなって思います。私自身、ラストシーンを撮影しながら、すごく気持ちが軽くなったんですよね。「そんなこともあるか」って前向きなラストになってると思うので、ぜひ最後まで楽しんでください。
(佐藤結衣)