VTuber 富士葵、ファンと共に作り上げた“新感覚”なライブ キクノジョーらも登場の生誕祭レポ
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6月15日、池袋HUMAXシネマズで行われたxRエンターテイメント3Dスペース・SPWNにて、6月18日に誕生日を迎えるVTuber・富士葵が、『富士葵生誕祭令和元年』と題したリアルイベントを開催。音楽を軸に富士葵のこれまでを振り返るトークコーナーや圧巻のライブが行われ、アーティストと観客が一体となって楽しめる「SPWN DIVE」アプリを使用し、劇場の観客だけでなく、ニコニコ生放送の配信を見ているファンも一緒になって彼女の誕生日を盛大に祝った。
富士葵は、“キミの心の応援団長”をコンセプトに、マルチタレントとしてYouTubeチャンネルなどで動画配信を中心に幅広く活動しているVTuber。今回の会場となったSPWNは、VTuberやバーチャルアーティストのステージとなるバーチャル3D空間上のエンターテイメントスペースで、VTuberにとって新たなる聖地とも言える会場だ。「SPWN DIVE」と連動することで、アーティストとファンが一緒に作っていく参加型ライブを実現する。
400人を超える超満員の“葵歌劇団”(富士葵ファンの総称)で埋め尽くされる中、開演前の注意事項のアナウンスを富士葵が務め、歌劇団との和気藹々なやり取りに早くも会場は温まり、イベントがスタート。ステージ上には事前に募集していた100個近くのデジタルフラワースタンドが並び、その背景には東京の夜景が映し出される。MCを務めるVTuberの“甲賀流忍者!ぽんぽこ”と“オシャレになりたい!ピーナッツくん”が登場。興奮してハシャギまくる2人の動きに観客は大爆笑。そしてピーナッツくんの音頭で観客が「よっしゃいくぞー!」と雄叫びをあげると、この日の主役・富士葵が登場。大歓声を受けた富士葵は興奮した様子でファンと司会に感謝の挨拶をした。
椅子に座ってのトークを始める前にモニターが登場し、VTuberの仲間たちからお祝いのビデオメッセージが流れる。世界初のバーチャルシンガー・YuNiからバースデーソングが贈られたり、月ノ美兎やばあちゃるなど、“VTuber界のアベンジャーズ”とも言うべき10組以上の人気VTuberたちからのメッセージに富士葵の人望の厚さを感じた。さらに、ときのそらからは富士葵とMCを務める『そらあおと!』(Tokyo FM/毎週土曜日27時30分)のレギュラー放送が7月から始まることも報告された。
続いて過去にYouTubeにアップされた富士葵の音楽動画を厳選して振り返る、「富士葵ミュージックヒストリー」のコーナーへ。2017年12月8日の初投稿から、これまでアップされた動画は100本以上。この時間限定で、今まで歌われた楽曲名が「SPWN DIVE」アプリで見られるという連動システムが発動し、トークを聞きながらスマホでチェックすることができた。中島みゆき「ファイト!」や、山下達郎「希望という名の光」などを選曲した理由について富士葵は「応援をしたいって活動を始めたんだけど、なかなかできていなくって、歌で応援してみようかなと思ったのがきっかけ」と語る、また、2018年4月26日に発表した「旅立ちの日」で“すっぴん”(旧モデル)から卒業した時の裏話など様々な思い出話も明らかに。富士葵初のリアルライブイベントであった『Fight!~ FOOD×ENTERTAINMENT BATTLE』(2018年)で歌われたオリジナル応援ソング「君のミライ」をファンと共に合唱する場面は、バーチャルとリアルの垣根を超えた一体感があり、実に感動的であった。
続いて富士葵が動画の中でチャレンジしている「はじめてシリーズ」を再現するコーナーへ。“神様兼任VTuber”・天神子兎音をゲストに迎え、MCを加えた4人のうち、ビリビリペンや激辛ペヤングを1人だけが実際に体験し、そのリアクションを見て観客や視聴者が「SPWN DIVE」で誰が本当にチャレンジしているかを投票するというファン参加型の企画を行った。そして富士葵の初期からの相棒であるキクノジョーが登場し、感動のメッセージの後に歌劇団と共にサプライズでハッピーバースデーソングを富士葵にプレゼントするなど、ファンとの交流を大いに深めた。
そして後半は富士葵の真骨頂であるライブへ。「太陽系デスコ」(ナユタン星人)から始まり、2曲目の「Rising Hope」(LiSA)ではこの日初お披露目となる新衣装で登場。ピンクのメッシュが入ったエクステをつけ、ホットパンツにブーツ、というバージョンアップした衣装にどよめきが起こる。今までの可愛らしい富士葵から、セクシーで攻めた、大人っぽい富士葵に大変身し、激しいロックチューンと衣装が実にマッチしていた。そして最後はオリジナル曲「ユメ⇒キミ」。富士葵の伸びやかな歌声を楽しめると同時に、明日の希望を感じる歌詞のこの楽曲は、まさに彼女のコンセプトに沿ったアンセムとも言える。間奏では観客もコーラスに加わり、感動的な空間を一緒に作り上げるイベントとなった。
最近ではライブビューイング会場として使われる映画館も増えた。今回の「SPWN」でのライブは、VTuberが1人のアーティストとしてステージに立つ空間であり、等身大の富士葵が目の前でパフォーマンスをし、その後ろにある2つのモニターで顔のアップなどが映し出されるというものだった。しかし、スクリーンのライブ映像を見ているのではなく、アーティストのライブを目の前で見る感覚と変わらないリアルさがそこにはあった。また、アーティストはアンコールで登場した際にラフなTシャツ姿で登場することが多いが、それと同じようにアンコールはTシャツ姿で出てきたり、終演後の“ミーグリ”(ミート&グリート)では、ファンのリクエストに応えたポーズで記念撮影や会話をするファンサービスもあった。終演後のリラックスした表情や、何気ない会話や動きから伝わるイベント本番とのオンオフの切り替えなど、演出の巧みさと細かさが秀逸で、VTuberの枠に収まらない富士葵の人気の秘訣の1つが感じられた。一方で、現実のアーティストが“やりそうなこと”を具現化し、観客もアイドルイベントをトレースしたかのようなリアクションをする空間は、一つの作品のようでもあった。まさに“新感覚”なライブ体験と言えるだろう。
(文=本 手/写真=福田華菜)