『パーフェクトワールド』は物語最大の山場に “ライバル”瀬戸康史&中村ゆりが下した決断
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「人生いつ何が起こるかわからない。だからせめて、1日1日を後悔しないように生きよう」。20歳の頃に事故にあった現場につぐみ(山本美月)を連れてきた樹(松坂桃李)。一度別れたことを後悔していると互いに確認しあった2人は、やり直すことを決める。樹が真剣な眼差しで語りかける「もう逃げたくない。過去からも現実からも目をそらさずに正直に生きていきたい」という言葉とともに幕を開けた火曜ドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)第9話は、物語の最大の山場を迎えることとなった。
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これまで、つぐみと樹が再会し恋に落ちたことで周囲の人々との関係性に大きな変化が生まれ、2人が一度別れたことでまたそれがほぼ元通りになり、新たな方向へと進んできた。そして再びやり直すという決断をすることによって、以前よりも大きな変化を強いられることになるわけだ。つぐみにプロポーズをして長年の想いを成就させるところまであと一歩だった是枝(瀬戸康史)に、是枝を密かに想いつづけながらも姉であるつぐみのためにその想いを封じ込めてきたしおり(岡崎紗絵)。しおりはつぐみに対して感情を爆発させ、是枝は樹と真っ向から対峙する。今回のエピソードは序盤から壮絶な対話が積み重ねられていき、つぐみと樹の決断には大きな覚悟が伴うということを改めて感じさせられる。
つぐみの誕生日をサプライズで祝おうとつぐみの実家を訪れていた是枝は樹のもとに向かい、摑みかかるものの思い留まる。そして地震の際に避難所のスタッフから手渡された樹の寝顔の絵を渡した上で「今まで渡せなかったのは俺の醜い嫉妬心だ」と、つぐみへの揺るがない想いと、樹に対して自分が優位にあると考えていたことを洗いざらい告白するのだ。「誰も味方がいなくなって孤立するかもしれない」と、樹に語りかける言葉の向こう側には、つぐみの選択を受け入れ、自分だけは絶対に2人の味方でいようとする決意を感じ取ることができる。是枝という男は、徹頭徹尾“いい人”であるポジションから揺るがない。それはむしろ、このドラマにおける最大の救いであるといえるのではないだろうか。
また、樹と事故以来彼を支えつづけてきた長沢(中村ゆり)との対話では、長沢への感謝とともに、彼女からの告白に対する明確な回答を示す樹。その後待ち受けていたつぐみと長沢の対話では、以前「障がいを日常として捉えなければ一緒に生きていくことはできない」という長沢の言葉を受けて、樹のための最良の策として長沢を頼るつぐみに、長沢は心を動かされる。彼ら4人が繰り広げてきた、複雑で年季の入った四角関係の顛末は、おそらく最良の形で収まったように思える。
それと同時に、長沢が樹に語る「リハビリをやり遂げた」という言葉から改めて感じ取れる、是枝とつぐみの関係性と重なる長沢と樹との関係性。つぐみにとって最大のライバルであり、このドラマにおける“悪役”のような存在として描かれつづけてきた長沢という存在は、強さと脆さを兼ね備えながら好きな相手を想い、その幸せを心の底から願い続ける人物。言うなれば是枝とも、つぐみとも、そして樹とも本質的には同じなのかもしれない。(文=久保田和馬)