The Winking Owl、メンバー復帰で踏み出した新章への一歩「悩んでる感じが完全に取っ払われた」
音楽
ニュース
The Winking Owlが、2ndフルアルバム『Thanksラブレター』を6月19日にリリースした。
メジャー1stアルバム『BLOOMING』(2016年)からミニアルバム『Into Another World』(2017年)を挟み、フルアルバムとしては約3年ぶりのリリースとなる同作。タイトルの通り、The Winking Owlのベースにあるラウドロックやエモといった音楽性に軸足を置きながらも、リスナーに寄り添うような、より外との繋がりを意識したポップネスも感じられる一枚となった。
今作からは、2016年6月に脱退したRanmalu(Ba)が復帰し、改めて4人体制での再スタートを切ったThe Winking Owl。Ranmalu脱退から復帰までの3年の間に起こったバンドの変化、これまでにない表現/アプローチに挑戦したというLuizaの作詞やYomaの作曲など、今作から始まるThe Winking Owlの新たなモードについて話を聞いた。(編集部)
音楽でしか得られないものがあることを再認識(Ranmalu)
ーー前回インタビューしたのが2016年5月、メジャー1stフルアルバム『BLOOMING』リリース時でした(The Winking Owl、バンドの個性を生み出すものとは?「Luizaが歌うことでサウンドが完成する」)。その1カ月後にRanmaluさんの脱退が発表されて。
Ranmalu(Ba):そうでしたね。
Yoma(Gt):前作のアルバムツアーが終わって、それで脱退という。
ーーだから、びっくりしたんですよ。アルバムも発売されて「これからいくぞ!」というタイミングでしたし。
Luiza(Vo):確かに!(笑)
Ranmalu:ですよね(苦笑)。
ーー脱退理由というのは、発表にあったとおりで。
Ranmalu;そうですね、オフィシャルサイトに発表したとおりです。脱退後は2年半ぐらい、音楽から離れて普通の仕事をしていたんですけど、ちょいちょいメンバーと会ってはいたんですよ。The Winking Owlのライブを観に行ったりもしていて。で……いつぐらいでしたっけ?
Yoma:去年の年末ぐらいに、そういう話をしたんです。
Ranmalu:すぐに答えは出せなかったんですけど、そう言ってもらえたのは素直にうれしかったです。
ーーなぜ再びRanmaluさんに声をかけようと思ったんですか?
Luiza:これは私からの提案で。Ranmaluくんがライブを観にきてくれると、Yomaさんと仲よくしてるし、KenTくんもすごく楽しそうに喋っているし。会っていない時間のほうが長いはずなのに……だったら、戻ってきてもらったほうが、楽器隊も楽しくやれるんじゃないかなってノリで提案してみたんです。
Yoma:Ranmalu脱退後は何人かサポートメンバーを迎えて活動していたんですけど、タイミング合わなかったりでなかなか正式メンバーとして迎えることが出来なくて。それでメンバーと「今後どうしていこうか?」と話していたときに、「やっぱりRanmaluがしっくりきていたよね?」という話になったんですね。人間的にもよく知っていて、やりやすい人柄でもあったので。あと、本人もバンドを辞めて違う仕事をしていたんですけど、音楽もやりたそうな感じがしたんです(笑)。
Ranmalu:そういう感じが出ていたんですね(笑)。
Yoma:うん(笑)。そういうのも感じていたので、もう一回誘って、またこの4人でやれたらいい方向に行くんじゃないかなと思って誘うことにしました。
KenT(Dr):でも、まさか戻ってくるとは思ってなかったなあ。
Ranmalu:それは俺が一番思ってるよ(苦笑)。
KenT:僕は3年半ぐらい前にこのバンドに加入したんですけど、僕が入って1年後ぐらいに辞め……やがったんですよね(笑)。だから、辞めると言われて正直そのときはブチ切れていました。今だから言えるけど(笑)。
Yoma:1stフルアルバムを出して、これからって時期になんで辞めるんだよ? とは思っていましたけど、もちろん本人の中ではいろいろあったんでしょうね。
KenT:まあいろいろあった結果、今は元の状態に戻れたので。しかもすごくナチュラルに戻ってきてくれて、今までずっとやってきたぐらいの空気感なんですよね。
Ranmalu:でも、ベース自体ほぼ弾いてなかったんですよ。趣味でギターを弾いたり友達とスタジオに入ったりはしていたんですけど、やっぱり音楽とは関係ない仕事が生活の中心だったので。
ーーそこで戻っていくことは、かなり大きな決断ですよね。
Ranmalu:いろいろ考えましたし、もちろんプレッシャーや不安もありました。でも、何よりも音楽から離れてみて、音楽でしか得られない経験や景色や感情があることを再認識できたので、音楽の世界にまた戻れるのなら戻りたいなと考えたときもあったので……単純にそう言ってもらえたのはうれしかったですね。
Luiza:やっぱりRanmaluくんは一番バンドマンっぽいんですよ。
Ranmalu:バンドマンっぽい?
Luiza:そう。ライブも心から楽しんでいるのが、横で歌っていると伝わってきますし、本人もライブを観に行くのがすごく好きだし。私からするとRanmaluくんが一番「バンドが生きがい」みたいに、昔から見えていたかな。それは今もそうなんですけど。だから、久々にみんなで音を合わせてベースの音を聴いたら「本当に2年のブランクあったの?」って驚きましたし、「昨日ライブしてきたのかな?」っていうようなグルーヴを出してきたので、やっぱりバンドが好きなんだなって感じました。
Ranmalu:こういうふうに直接言ってもらえるのって、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいですね(苦笑)。
やっと表に出すことができた「ポップでキャッチーなもの」(Yoma)
ーーそんなRanmaluさんを再び迎え、The Winking Owlは3年ぶりのフルアルバム『Thanksラブレター』をリリースします。この3年の間にはミニアルバム『Into Another World』(2017年5月発売)やシングル『Try』(2018年11月発売)もありましたが、まずRanmaluさんが脱退したあとにThe Winking Owlをどういう方向に進めようと考えていましたか?
Yoma:僕たちはインディーズ時代にエモやポストハードコアというジャンルで括られてきたんですけど、メジャー1作目のフルアルバム『BLOOMING』ではそれを受け継ぎつつ、よりメジャー感がある進化したサウンドを目指していました。でも、自分たちとしてはもっと前からよりポップでキャッチーなものも好きだったのに、前作ではそこまでやりすぎないようにしていたところがあって。実は6曲目の「Night & Day」は『BLOOMING』を制作しているときにはデモができていたんですけど、当時はまだ出すタイミングじゃないよねってことになって、去年の11月に出したシングル『Try』のカップリングで先に発表していたんですけど、やっと表に出すことができた曲なんです。
ーーそうだったんですね。となると、Luizaさんが書く歌詞にもその影響が及ぶんじゃないかと思いますが?
Luiza:そうなんです。以前からサウンドと歌詞をイコールにさせないとひとつの作品にはならないと意識していて。私は回りくどい表現の仕方が昔から好きで、そのほうが奥ゆかしさがあると思っていたんです。時間が経ってから読んだときに最初の解釈と変わっていたりするのって、自分の中の成長にもつながったりするじゃないですか。そういうのって面白いなと思っていて書いていたんですけど、そればかりに固執しちゃうとよくないなと。特にこのアルバムのサウンドには外側に向けて他者とつながっていけるような書き方が合うと確信して、そういう歌詞を書こうと決めました。ただ、すごく大変でしたけど(笑)。
ーー逆にストレートでわかりやすくすることに、恥ずかしさもあったり?
Luiza:そうなんです。4曲目の「片想い」なんてどストレートに書いたので、「大丈夫かな?」ってみんなに確認を取りましたし(笑)。この曲はR&Bっぽいなと自分の中で解釈していたんですけど、R&Bの歌詞ってどストレートなものが多いから、だったら思い切って書いてみようかなというのもありました。あとは、7曲目の「one for all」もです。これは初めて他者とつながりたいっていう内容で、価値観が違う人と仲よくやっていくことがテーマなんですけど、ちょうど去年にサッカーワールドカップがありましたよね。サッカーってパスを回さないとゴールまで繋がらないじゃないですか。ひとりで蹴り続けるのってあんまりよくないと言われているのを知った上でサッカーを観たら、素晴らしいスポーツなんだというのを改めて理解したんです。
ーーワールドカップがきっかけで、他者とのつながりと向き合ったと。
Luiza:はい。だいぶ自分と向き合いましたね、この曲に関しては。すごくつらい作業でした(苦笑)。自分の弱いところも認めないと言葉として表現できないし、相手を否定しちゃうことになってしまうし。そういうことがあったおかげで自分も成長できたし、歌にも影響はあるのかなと思います。
ーー3年前のインタビューで、Luizaさんは『BLOOMING』の歌詞に「探す」というワードが多く含まれていると言っていましたが、それを踏まえて新作を聴くと「見つかった」のかなと思いまして。
Luiza:ああ、なるほど。そうかもしれませんね(笑)。
ーー他者に向けて語りかける、意思を伝えてつながることで見えたものもあるでしょうし。アルバムタイトルに使われている“ラブレター”というワード自体、まさに他者とのつながりを表すものですしね。
Luiza:まさにおっしゃるとおりです。ラブレターは異性だけに使う言葉にしておくには勿体ないなと思って。
ーー気持ちを伝えるというのもそうだし、相手との気持ちの共有というのもあるし。でも、このタイトルはこれまでのThe Winking Owlの作品からすると、かなり勇気のいるタイトルかなと。「片想い」や「君のままで」といった曲名しかり。
Luiza:ですね。日本で活動しているので、日本人がパッと見て読める、それも他者に向けて客観視できるようにというのを意識して、ちょっと冒険してみました。
挑戦するにあたって何かしらイメージや裏テーマがあった(KenT)
ーーポップでキャッチーなものって、一見シンプルでストレートという印象がありますけど、実はものすごく計算されていたり作り込まれていたりするものだと思うんです。このアルバムで皆さんがトライしている演奏やアレンジもまさにそういうものだなと。演奏面、めちゃめちゃ凝っていますものね。
KenT:はい、仕上がってます(笑)。なかなか挑戦が多かったですね。
ーーそれこそわかりやすいメロディ、わかりやすい言葉を伝えるとなると、歌を邪魔しない演奏も必要になってくるのかなと思いますが?
Yoma:そうですね。今回は今までよりもわかりやすく、難しい演奏という部分はちょっと少ないんですよね。ギターソロも前作より全然少ないですし。だからといって簡単になったわけではなく、地味に難しい演奏が結構増えたんじゃないかな。
ーーRanmaluさん、久しぶりのレコーディングはいかがでした?
Ranmalu:実は復帰したときにはもう完成していたので、制作には関わっていないんです。確かにおっしゃるとおり、『BLOOMING』のときに悩んでいた感じが完全に取っ払われて開けた感じが全編通して感じられる。でも、演奏する側としては難しいアプローチもあるので、そういう意味ではミュージシャンとして、プレイヤーとして成長させてくれる曲たちが揃っていると思います。
KenT:うん、間違いない。
ーー個人的にはドラムがとにかくカッコいいなと思って。ちょっとしたフレーズが耳に残るんですよ。
KenT:そう言っていただけると、頑張ったかいがあります(笑)。さっき挑戦が多いと言いましたけど、挑戦するにあたって何かしらイメージや裏テーマというのがあって。これは初めて言うんですけど、4曲目の「片想い」はサビでは4つ打ちでわかりやすい大きいビートなんですけど、AメロやBメロ、フィルなんかはグルーヴィーなものが多くて、イメージとしてはレッチリ(Red Hot Chili Peppers)のチャド・スミスなんです。
ーーそういうエッセンスが含まれていると。
KenT:はい。5曲目の「Confession」は日本のロックバンドだけど洋楽に近いアプローチということで、ワンオク(ONE OK ROCK)のTomoyaさんを意識したし、8曲目「君のままで」は先輩のFIVE NEW OLDのHAYATOさんのドラムをイメージしたり。もちろん自分の要素も混ぜつつなんですけどね。僕のカラーが一番ストレートに出ているのは、10曲目の「Loser Unbeatable」かな。何も考えずに叩ける、疾走感があるビートで、フィルの一つひとつが毎回アドリブで叩けてしまうような感じなんです。もしアルバムを1周聴いて「KenT、丸くなったな」という印象を持った人がいたとしたら、何度か聴いてほしいな。楽曲の良さを引き立たせるためにこういうプレイをしているんだってことを理解していただきたいですし。そこは聴きどころといいますか。注目していただきたいポイントです。
それってカバーじゃなくてコピーだなと(Luiza)
ーー初回限定盤にはアコースティックアレンジによるカバー曲を収めたボーナスディスクが付属。かなりバラエティに富んだ選曲ですが、これはどのように決めたんですか?
Luiza:最初は私が「この曲どう? これはどう?」と聞いて。あとは、Twitterでアンケートを募りました。
Yoma:「カバーするなら何を聴きたい?」みたいに。
Luiza:ダントツ1位はParamoreでしたね。ファンから見ても私たちのイメージがParamoreに通ずるものがあるんだとわかりましたし、自分たちも大好きなバンドだし。
ーーそこにスピッツやテイラー・スウィフトが入ってくるのが面白くて。選曲、アレンジ含めて気持ちよく聴くことができました。
Luiza:よかったです(笑)。なんだかんだ自分たちのカラーはしっかり出そうとは考えていたかな。テイラー・スウィフトの「Shake It Off」は初めてこういうテイストに挑戦したし、おしゃれな中にもYomaさんらしいギターフレーズもしっかり存在しているし。
ーーこちらのアレンジでも、楽器隊の皆さんはかなり新たなトライがあったんじゃないかと思いますが?
KenT:今でこそアコースティックライブをする機会が少しずつ増えてきましたけど、カホンをレコーディングするのはこれが初めてでした。なので「これでいいのかな?」っていう気持ちもありつつ、でも録り音を聴いてみて「ああ、いいなあ。これでよかったんだ」と思えたりして。シェイカーを振ったりタンバリンを叩いてみたり、シンプルにこの制作は楽しかったですね。もちろん楽曲が大前提として素晴らしいものなんですけど、それを抜きにしてもいい仕上がりになっていると思います。初回限定盤でしか聴くことができないので、なるべく多くの方に手にとっていただきたいですね。
ーーYomaさん、アコースティックギターのレコーディングはいかがでした?
Yoma:インディーズ時代にアコースティックミニアルバム(2013年発売の『Voyage』)をリリースしているんですけど、スタジオレコーディングでここまでしっかりアコースティックギターを弾いたのは本当に久しぶりで。そういう意味ではかなり緊張しました。
KenT: Yomaさん、ずっと大変そうでしたもんね(笑)。
Yoma:やっぱりエレキとは全然違って、ニュアンスをしっかり出せるまでに結構時間がかかりました。人の曲をアレンジして、そこでどう自分たちらしさも出せるのか考えながら進めていったので、悩むことも多かったですけど、それも含めてすごく楽しかったですよ。
ーー最後の「Don’t Know Why」(ノラ・ジョーンズ)のアレンジにびっくりしましたよ。この曲だけはアコースティックというわけではないですものね。
Yoma:この曲はLuizaが元のアレンジを考えてきて。
Luiza:(このアレンジが)降りてきました(笑)。最初は普通にピアノだけであの原曲の雰囲気を表現しようかなと思ったんですけど、それってカバーじゃなくてコピーだなとあとで気づきまして。今までのYomaさんのノリ、ジャンルとはまた違うアプローチの仕方だったので「大丈夫かな?」って心配はあったんですけど、今までとは違う感じになりました。ちょっと味を変えてみるじゃないけど、カレーに醤油をかけるような(笑)。そういうノリで聴いてもらえればなって。
ーーカバーって本来、そういうものですものね。原曲に対するリスペクトはもちろん、好きが強すぎるとどうしてもコピー止まりになってしまうし。
Luiza:そうなんですよね。カバーするからには原曲を超えないといけないっていうのはあります。でも、原曲のイメージが強いと、それを超えていいのか、同じ目線で歌うべきか、それともThe Winking Owlのボーカルとして歌うのか。最初はそこで悩みましたし、だからこそすごくいい経験になりました。歌い手としても成長するきっかけになったかな。まだまだ成長途中ですけど、刺激ありまくりでした。
ーーこれを『Thanksラブレター』というオリジナルアルバムと同時に制作したというところに、The Winking Owlの成長を強く感じました。
Luiza:ありがとうございます!
KenT:ファンの人たちは現時点でまだこのアルバムを聴けていないので、どんな曲が人気になるのかがまだわからない。きっとメンバーが思ってもみなかった、まさかの曲が好評かもしれないし。
ーーまた、ライブで披露することで印象が変わる曲もありますし。
Yoma:それはありますよね。
KenT:音源を超えていきたいですね。
(取材・文=西廣智一/写真=林直幸)
■リリース情報
2ndアルバム『Thanksラブレター』
2019年6月19日(水)リリース
初回限定盤
価格:¥3,000+税
全12曲収録 + SPECIAL DISC
通常盤
価格:¥2,500+税
全12曲収録
<収録曲>
1.Thanksラブレター
2.Try
3.NEW
4.片想い
5.Confession
6.Night & Day
7.one for all
8.君のままで
9.The Tears Turn To A Rainbow
10.Loser Unbeatable
11.Just For Tonight
12.Flame Of Life
<初回限定盤SPECIAL DISC収録曲(アコースティックカバー)>
1.楓
2.We Don’t Talk Anymore
3.That’s What You Get
4.Shake It Off
5.Don’t Know Why
■ツアー情報
『ThanksラブレターTOUR2019』
6月19日 (水) 新 潟 CLUB RIVERST
6月20日(木) 福 島 CLUB #9
6月29日(土) 広 島 CAVE-BE
6月30日(日) 香 川 DIME
7月02日(火) 金 沢 vanvan V4
7月03日(水) 長 野 LIVE HOUSE J
7月07日(日) 福 岡 Queblick
7月09日(火) 岡 山 IMAGE
7月17日(水) 仙 台 MACANA
7月19日(金) 札 幌 SPiCE
7月22日(月) 京 都 MUSE
7月23日(火) 静 岡 UMBER
7月28日(日) 高 崎 club FLEEZ