完成から5年、あいりん地区を描く映画『解放区』が10月に劇場公開決定
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©2019「解放区」上映委員会
映画『解放区』の公開日が10月18日に決定した。
2014年に制作され、約5年の歳月を経て一般公開が決定した同作は、地域再開発プロジェクト「西成特区構想」の対象となった「あいりん地区」こと大阪・西成の釜ヶ崎に漂着する若者たちの姿を、ドキュメンタリーの手法を用いて映し出した作品。ドキュメンタリー作家志望の主人公スヤマが、かつて釜ヶ崎で出会い、10代で夢や希望を見失っていた少年たちのその後を追う企画を立ち上げて単身釜ヶ崎に乗り込むが、一夜を共にした女性に所持金を奪われ、恋人やかつての取材相手とも連絡が取れなくなり、やがて街の奥に足を踏み入れていくというあらすじだ。
監督、脚本、編集、主演を務めたのは、テレビ番組『情熱大陸』の演出などを手掛け、俳優や映画監督としても活動する太田信吾。そのほかのキャストには本山大、SHINGO☆西成、琥珀うた、山口遥、佐藤亮、岸建太朗、KURA、鈴木宏侑、朝倉太郎、青山雅史、ダンシング義隆らが名を連ねる。
公開日の発表とあわせて阪本順治のコメントが到着。「2020年、2025年のバカ騒ぎに向けて、日本の繁栄を最底辺から支えてきた人間たちと、その営みを覆い隠して、なんのための国づくりなのか。自戒も含め、まずは映画人が観るべき映画。主人公の自業自得は、あまりに痛快。傑作!」と語っている。
太田監督は、2014年に映像制作者の支援と映像文化の発信を目的とするプロジェクト「シネアスト・オーガニゼーション大阪」の助成対象監督に選出。『大阪アジアン映画祭』での上映を目指して『解放区』の制作を開始したが、大阪市の内容修正指示を拒否したため上映は中止された。太田監督は助成金を返還し、作品の自主上映と映画祭への出品を実施。2015年に『第27回東京国際映画祭』日本映画スプラッシュ部門、2017年に『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』ゆうばりシネマテークに出品された。
阪本順治のコメント
ここ何年もの間に観た劇映画の印象がすべて吹っ飛ぶぐらい、衝撃を受けました。社会性を持ちながら、劇映画本来の醍醐味がここにあります。俳優の存在力、カッティング、自在に動くカメラ、音や音楽など、低予算にも関わらず条件の厳しさはまったく感じさせず、いまの映画業界に愚痴ばかり言っている私は、ですから、ひどく落ち込みました。そして遠い昔、勝新太郎さんが私に言った「サカモト、映画はね、裏切りとすれ違いで成り立ってるんだよ」という言葉を思い出しました。加えて、「フィクションはノンフィクションのように、ノンフィクションはフィクションのように、作るべし」とよく先達が言っていましたが、そのどちらでもありどちらでもないありかたに驚きました。あらためて、撮影隊=芸術を受け入れる度量の深さをあの町に感じ、それでいて『解放区』はその題名のとおり、決してあの地域のみに特化した作品ではなく、この国に住む私たちの脆弱な精神性(排除や偏見や憎悪)にも関わる物語として、あらゆる場所へ越境して行くべき作品です。2020年、2025年のバカ騒ぎに向けて、日本の繁栄を最底辺から支えてきた人間たちと、その営みを覆い隠して、なんのための国づくりなのか。自戒も含め、まずは映画人が観るべき映画。主人公の自業自得は、あまりに痛快。傑作!