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BALLISTIK BOYZ、ヒップホップグループとしての大きな希望 ラッパー ダースレイダーが考察

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 BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEのメジャーデビューアルバム『BALLISTIK BOYZ』は、まるでエネルギーの塊をパッケージングしたような、ハイテンションで勢いのある作品でした。これほどパワーのある音楽作品を、10代後半から20代前半の若者が表現していることに大きな希望を感じます。

 メンバーの多くはLDHが運営する総合エンタテインメントスクール「EXPG STUDIO」(以下、EXPG)の出身者で、子供の頃からしっかりとボーカルやダンスのトレーニングを受けていたそうです。そのため、同世代のアーティストとはスタミナが違います。しかも、メンバー中3人はアメリカ留学をしてきたとのことで、英語も話せるし、本場のヒップホップカルチャーを吸収している。その上、メンバー全員がマイクを持ち、アクロバットまでこなせてしまう。日本の若手のダンスボーカルグループというと、その初々しさやルックスの良さを売りにして、パフォーマンス面においては未熟であっても良しとする傾向もありますが、LDHは海外のサッカーチームのように、長年をかけて世界に挑戦できる次世代のアーティストを育成してきました。その成果が、BALLISTIK BOYZだと言えるでしょう。

 こうしたアーティストは、一朝一夕に生まれるものではありません。会社に明確なビジョンがあり、アーティストをしっかりとサポートするスタッフがいてこそ生まれるものです。長期的な視点から若手の育成に力を注いできたLDHの姿勢には、見習うべきところがあります。育成中のアーティストがメディアに取り上げられる機会は少ないので、その過程はあまり世間的に知られていないかもしれませんが、こうして形になると、彼らが抱いていたビジョンの正しさが証明されますし、過程もまた一つのストーリーとしてファンたちに共有されていきます。エンタテインメントの作り方としても、LDHの方法論は興味深いです。

 アルバムに収録された楽曲にも、LDHならではの継承のストーリーが息づいていると感じました。例えば1曲目の「テンハネ -1000%-」にはEXILE SHOKICHIさんが、2曲目の「PASION」にはDOBERMAN INFINITYのP-CHOさんやR&BシンガーのJAY’EDさんが参加しています。これらの楽曲のトラックは、2000年代初頭にアメリカのヒップホップシーンで大活躍したプロデューサー・Just Blazeなどのサウンドを思い起こさせるもので、制作陣がリアルタイムで影響を受けた音楽を現代的にアップデートした作品だという印象を受けました。テンションの高い前のめりなトラックの上で、勢いのあるマイクリレーを披露するスタイルは、それこそ2000年代初頭にデビューしたDOBERMAN INCやNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDなども連想させます。

 音楽には20年周期の流行があると言われていて、実際に最近は90年代後半のサウンドが再評価されています。そう考えると、来たる2020年代は前述のJust Blazeのほか、TimbalandやSwizz Beatzのような派手なサウンドが再評価される可能性があり、その意味で本作『BALLISTIK BOYZ』は2000年代のブラックミュージックを現代に伝えるものであると同時に、今後のトレンドを予見した作品であると言えるかもしれません。そこには、90年代のヒップホップ・アーティストが親世代の聴いていた70年代のファンクなどをサンプリングし、現代的にアップデートしたのと相似するものがあります。BALLISTIK BOYZのメンバーにとってはきっと、こうしたサウンドはリアルタイムではないからこそ新鮮に響いているのではないでしょうか。

BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE / 「テンハネ -1000%-」 Music Video

 「テンハネ -1000%-」のMVもド派手で面白かったです。ヒップホップにはルーズなのがカッコイイという美意識があるので、ガンガン踊ってバク宙まで披露するような表現はなかなか生まれてきません。彼らの表現はエンタテインメントとして、これまでのヒップホップとはまた違うジャンルを開拓していく可能性がありそうです。また、昨今はYouTubeをはじめ、様々な映像メディアがあるので、彼らの見た目にも楽しいパフォーマンスは大きな武器となっていくはず。

 MVの中で、彼らが好きなヒップホップカルチャーを全開で表現しているのも良かったです。ラップやダンスやビートはもちろん、ファッションから小物まで明確にヒップホップマナーを意識していて、しかもそれをメジャーなポップスのフィールドで表現しようとしている。こうした表現が、同世代の一般的なリスナーに影響を与えていくと、J-POPのシーンも変わっていくかもしれませんし、リスナーやファンのライフスタイルも豊かになっていくのではないでしょうか。

 日本の音楽業界は、これまで国内需要で成り立ってきたわけですが、サブスクリプションサービスなどの興隆によって、音楽における国境はなくなってきています。ヒップホップは今やワールドカルチャーなので、BALLISTIK BOYZがそれをベースにした表現をしている以上、世界中どこでもブレイクの可能性はあると思います。そして、彼らが世界に挑戦すると、その行動はそのまま同世代へのメッセージにもなるでしょう。BALLISTIK BOYZにはぜひ、グローバルな音楽シーンへの突破口を作って欲しいですね。

■DARTHREIDER a.k.a. Rei Wordup
77年フランス、パリ生まれ。ロンドン育ち東大中退。Black Swan代表。マイカデリックでの活動を経て、日本のインディーズHIPHOP LABELブームの先駆けとなるDa.Me.Recordsを設立。自身の作品をはじめメテオ、KEN THE390,COMA-CHI,環ROY,TARO SOULなどの若き才能を輩出。ラッパーとしてだけでなく、HIPHOP MCとして多方面で活躍。DMCJAPAN,BAZOOKA!!!高校生RAP選手権、SUMMERBOMBなどのBIGEVENTに携わる。豊富なHIPHOP知識を元に監修したシンコー・ミュージックのHIPHOPDISCガイドはシリーズ中ベストの売り上げを記録している。
2009年クラブでMC中に脳梗塞で倒れるも奇跡の復活を遂げる。その際、合併症で左目を失明(一時期は右目も失明、のちに手術で回復)し、新たに眼帯の死に損ないMCとしての新しいキャラを手中にする。2014年から漢 a.k.a. GAMI率いる鎖GROUPに所属。レーベル運営、KING OF KINGSプロデュースを手掛ける。ヴォーカル、ドラム、ベースのバンド、THE BASSONSで新しいFUNK ROCKを提示し注目を集めている。

■リリース情報
『BALLISTIK BOYZ』
5月22日(水)発売
【CD+DVD+グッズ】¥4,630+税 ※初回生産限定盤
【CD+DVD】¥3,241+税
【CD】¥1,852+税
※【CD+DVD+グッズ】 形態は初回生産限定盤のため販売数に上限を設ける場合あり

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