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ロロ10周年、三浦直之が語る現在とこれから

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高評価のうちに放送を終えたNHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』。その脚本を手がけた三浦直之主宰の劇団ロロが今年10周年を迎え、『はなればなれたち』が6月22日(土)より吉祥寺シアターで上演される。今作とこれからについて、三浦に話を聞いた。

劇団結成10年を迎え、ふだんとは違うプロセスで作品をつくっているという三浦。「ロロでは“こんな感じでやりたい”と俳優に伝え、その場で動いてもらったものをもとに僕が戯曲を書く形が多かった。今回は戯曲を書くことと、空間や俳優への演出とをもう少し切り分けてみようと思いました。脚本家としての僕は納得がいかなくても、とにかく書いて、演出家三浦に渡す。脚本の欠点を演劇として立ち上げたときにどうポジティブなものにできるかも演出家の仕事だから、脚本家三浦の知らない可能性を演出家である自分と俳優とでどうつくっていけるかを考える。それが脚本のリライトにつながる、という形です」。とはいえ、その変化をつくるのは簡単なことではないという。「油断すると脚本家の自分が“こんな話じゃだめだ”って言ってくる。それを振り切って、“俺は演出家だ!”って自分に言い聞かせて毎朝稽古場に向かっていました」。

今作にはミュージシャンの曽我部恵一、アニメーション作家のひらのりょうも俳優として参加する。「曽我部さんは僕らより年齢が上だけれど、みんなとフラットに話してくれるし、僕の演出にも柔軟に対応してくれる。ひらのさんは演劇のクリエイションに関わるのが初めてだから、ちょっとしたことにも新鮮に感動してくれる。それが稽古場を和ませてくれます」。

さらに客演には、三浦にとってたいせつな役者たちが揃う。「旗揚げ作品から度々参加してくれた多賀(麻美)ちゃん、僕が俳優として参加した作品(『蒲団と達磨』)で出会った大石(将弘)さん、一昨年オーディションで出会った油井(文寧)さん。僕にとって大きな出会いだった人たちといっしょにつくるのが『はなればなれたち』。来年1月の本公演『四角い2つのさみしい窓』では今回出ない亀島(一徳)も加えてメンバーだけでフルスケールの作品をつくる。“四角い2つの窓”って要はロロのことなんです。メンバーとかなり密に向き合う作品になります。窓、つまり透明な壁のように、分断されているけれど、相手が向こう側に見えるイメージがずっとあって。分断されている相手とどうやったらつながれるかを次の公演では考えたい。2作とも集団についての作品にはなるけれど、『はなればなれたち』はこれまでの物語で、『四角い2つのさみしい窓』がこれからの物語になればいいとおもっています」

10年の集大成となる『はなればなれたち』の半年後、これからの物語となる次作では、再演を見据えた挑戦も考えている。「『はなればなれたち』では、主人公の〈向井川淋しい〉が30歳手前になるくらいまでの半生を描きます。だから僕や劇団メンバーの実年齢より歳下で物語が終わる。一方『四角い2つのさみしい窓』は実年齢より歳上、40歳手前くらいの物語にしようとおもっています。再演を強く意識して、いまのみんなが演じると少し歳上なんだけど、この先再演するときにその年齢に合うものになる、これから自分たちがなるであろう人たちを意識して書きたいとおもっています」。結成10年目に、数年後の再演を視野に入れた作品が生まれる。観客にとってはうれしいニュースだ。

「もしロロが僕のプロデュースユニットだったら、若い俳優を使っていつまでもボーイ・ミーツ・ガールや青春ものを書き続けたっていい。でも劇団となると、みんな歳を重ねていくから、その歳に合わせて新しい何かを書かなきゃいけない。それって僕にとってはすごくポジティブなことです。この世界でどう老いられるかを考えながら、作品をつくっていきたいです」

さらに今後の展望について、思いがけない言葉も飛び出した。「最近、外の仕事をたくさんやらせてもらっておもうのは、ロロで作品をつくるのがいちばん楽しいから、僕個人としてはいかにロロだけをやり続けられるかを追求したい。もちろん外の仕事はとても勉強になりますし、共通言語をもたない人にどう言葉を届けるかという機会を与えてもらえるのは大事ですけど、将来的にはロロだけをやるようになりたいとおもいながら過ごす1年でした。そのために、劇団とは別のコミュニティをつくりたい。劇場を持っている劇団もありますけど、それとは別の形で自分たちの場所を持つ方法を探りたいんです。僕ら、ずっと作品で出会いを描いてきた。未知の者同士が出会うことを、作品の外でも実践できるといいなとおもっています」。

劇団という形態をポジティブに捉え、作品を生み出し続けるロロ。これからの作品とともに、劇団とは違う形で彼らに出会える機会を楽しみに待ちたい。

ロロ『はなればなれたち』は、吉祥寺シアターにて6月30日(日)まで。

取材・文:釣木文恵