BTSがチャーリーXCX、ザラ・ラーソンとコラボ グループへの信頼高める粒ぞろいの楽曲を分析
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現在、事前登録受付中のスマートフォン向けゲーム『BTS WORLD』。プレイヤーはBTSのマネージャーとなってメンバーたちとコミュニケーションをとり、共に最高のアーティストとして成功することを目指す育成ゲームだという。BTSは6月28日にこのゲームのサウンドトラックをリリースする予定だ。現在、同作からのリードシングルとして、注目のシンガーやプロデューサーとのコラボレーショントラックを連発している。世界的なブレイクスルーとなった『LOVE YOURSELF』シリーズを完結したのち、『MAP OF THE SOUL』シリーズを開始したBTS。サウンドトラックはそうしたコンセプチュアルな連作とは異なる位置づけになるだろうが、リードトラックを聴くだけでやはりクオリティも話題性も十分に高くなることが期待できる。
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6月7日にリリースされた「Dream Glow」ではイギリスのシンガー・チャーリーXCXとコラボレーション。ビートを手がけたプロデューサーは、彼女との仕事も多いStargateだ。彼女のツイートによれば、2017年に彼女が韓国を訪れた際にBTSと会い、コラボレーションのアイデアが持ち上がったという。元になったのは彼女が数年前に書いていた楽曲で、クラブで出会った特別な“輝き(glow)”を持った人と恋に落ちるという、今回リリースされたものとはまったく違う内容の詞だった。BTSのメンバーたちは、この“輝き”を自己実現のメタファーに読み替えることで、リスナーに対するエンパワメントを重視した、BTSらしさがあふれる一曲に仕上げた。
続いて6月14日にリリースされた「A Brand New Day」ではスウェーデンのザラ・ラーソンをフィーチャー。こちらはまたもやチャーリーXCXとも関係が深いUKの人気プロデューサー、Mura Masaがビートを手がけた。音数を絞り、1つひとつのサウンドの「鳴り」を丁寧につくりこんだMura Masaらしいビートは、アメリカを中心とするメインストリームのポップスやK-POPとは一味違う感触をBTSのレパートリーにもたらした。印象的に用いられているカットアップされた笛の音色は韓国の伝統楽器・テグムによるもの。K-POPグループとしてのアイデンティティを示しつつ、近年定番となっているフルート系の音色の流れをふまえ、過剰なエキゾチシズムは感じさせない仕上がりになっている。
……というように、豪華なコラボレーションのラインナップと楽曲の魅力に気を取られがちだが、どちらも「成長する」「夢を掴む」というテーマが敷かれているのは「アーティストとしての成功を目指す」というゲームの内容ともシンクロしたものだろう。
さて、BTSはこれまでも数多くの欧米のミュージシャンとコラボレーションを果たしてきた。ただ、ニッキー・ミナージュ、ホールジー、スティーヴ・アオキ、Desiigner等々、もっぱらアメリカのミュージシャンとのコラボレーションが多かったのとは対照的に、今回の2つのリードシングルではヨーロッパのミュージシャンが登場しているのが示唆的だ。『MAP OF THE SOUL : PERSONA』収録曲「Make It Right」のソングライターにエド・シーランがクレジットされていたり、あるいはメンバーのRMがソロとしてHONNEとコラボレーションを繰り返したりと、もちろんイギリスとのコネクションがこれまでもないわけではなかった。とはいえ、アメリカのビルボードチャートに爪痕を残したのち、次いでヨーロッパ方面にも目を向けているのでは、と思えてくる。
BTSの今後の展開に関する憶測はここまでにしておこう。改めて本題に戻れば、やはり立て続けにリリースされた楽曲の粒ぞろいな良さはグループに対する信頼を高めている。とりわけMura MasaのややK-POPらしからぬ個性にあふれたビートはとても新鮮で、シンガーのみならずこうしたプロデューサーの積極的な起用も期待したいところだ。(imdkm)