IZ*ONEら所属事務所が悪質書き込みに法的措置へ 韓国アイドルファンのSNSとの向き合い方
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昨年末、fromis_9とIZ*ONEの所属事務所であるOFF THE RECORD ENTERTAINMENTから、両者に対する虚偽や悪質な書き込みに対する法的措置をとることを公式発表。さらに6月5日、改めて正式な捜査依頼を行なうと予告した。これは韓国では珍しいことではなく、ある程度知名度のあるアーティストが所属する事務所はほとんどがこのような発表をした経験がある。
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以前韓国での芸能スキャンダルに関する記事でも言及したが、こうした動きの背後には韓国が日本以上のネット社会であり、「ネチズン」と言われるネット市民の雰囲気や書き込みを気にする傾向がかなり強いことが関係していると思われる。韓国では基本的には犯罪の容疑者が起訴されるまでは実名報道されないという法律があるため、特に芸能人の場合はマスコミの指す「A氏」が誰なのかという憶測も出回りやすい。さらに、ネットのコミュニティへの書き込みや「チラシ」と呼ばれる真偽が不明な噂だけを基にした記事が書かれることも珍しくはない。もちろん日本でも同様の問題はあるが、韓国の場合は噂話の広がりやすいソーシャルネットワークの利用が日本よりも盛んだったり、ファン同士が繋がりやすいウェブコミュニティが存在するために、デマや真偽のたしかではない話が広まるスピードが速い傾向がある。また、韓国のアイドルのファンドムは「政治的」と言われるように、“推し”へのポジティブなロビー活動と並行してそれ以外のグループに関するネガティブな「アンチ活動」が日本よりも盛んである。近頃はグループ数も増え、SNSの発達によって異なるファンドムからの視線も受けやすいために、以前のようなあからさまなアンチ行為はしづらくなってきている。しかし、一般人を装って他グループのデマを書き込むファンの存在が明らかになり、ファンドム単位での謝罪騒動に発展する事態は現在でもよく見られる。
文在寅政権になってから発足した「国民請願掲示板」では国民が直接政府に請願を書き込めるが、この場でも特定の芸能人への中傷めいた請願が書き込まれることは珍しくはない。しかも、ただ「書き込まれた」という事実だけがニュースとして取り上げられる場合もある(ちなみに書き込んでから30日位内に賛同者が20万人を超えた場合は、大統領府の首席秘書官らが何らかの回答をすることになっているが、あくまでただ回答をするだけである)。このようなネット上での書き込みが芸能人のメンタルヘルスに及ぼす深刻な悪影響は、事件が起こる度に指摘されている。
K-POP人気の国際的な広がりに伴い、このような韓国のネット上での出来事が海外のファンに及ぼす影響も大きくなっている。外国語が理解できるファンが自主的に情報を翻訳するSNSアカウントが今では定着しているが、問題は「多言語が理解できること」と情報や文脈の正しさを判断できる能力、つまり「ネットリテラシー」が必ずしもイコールではないということである。母国語でも情報の正誤を見抜けないことがあるように、外国語を理解できてもその情報ソースの見方を理解しているとは限らない。その結果、真偽のたしかではない噂が情報拡散速度の速いSNSを媒介して韓国外でもひとり歩きし、広まってしまうケースもある。不確かだがスキャンダラスな情報を見出しの餌にし、記事を読ませるために利用する媒体はどこの国にも存在する。そしてそれが正しくなくても、後からの訂正が広まることの方が少ないのが事実だ。
このようなネット上の特性から、韓国のアイドルファンの間ではSNS上でのアンチ発言やデマを発見した場合はスクリーンショットなどで保存しておくという働きかけがある。ネットでの動向に最も敏感なのはファンで、事務所が裁判の材料としてそのような「証拠集め」を呼びかけることが多いからだ。実際、それが証拠の一つになり、誹謗中傷やデマの書き込み主が裁判で有罪になるケースも増えている。最近も歌手のチョン・ジュニョンが所持していた盗撮動画に特定のアイドルグループメンバーがうつっていたというデマを流布した複数の人物が、裁判で有罪になったという報道があったばかりだ。しかしデマや中傷の書き込み主が有罪になったとしても、一度ネット上に流された情報から付けられた印象を簡単に書き換えることは出来ない。過去にはヒップホップグループ・EPIK HIGHのリーダー・Tabloのように学歴詐称をしているというデマがネットで広まり、同級生の証言や卒業アルバム、スタンフォード大学長の証言などの証拠まで明らかになったにも関わらず、ほとんど芸能活動が出来なくなる事態まで追い詰められたこともあった(参考:Kstyle)。デマの流布主が逮捕されて有罪になったにも関わらず、現在でもこの噂を信じる人が集まるネットコミュニティは存在するという。
アイドルファンに限らず、Twitterなど自分でタイムラインを形成できるSNSでの情報収集では、無意識のうちに自分が見たい、あるいは自分の思想に沿うような情報だけを取捨選択してしまいがちだ。そのような場所で自分の目に入る情報は偏りがあり、それが世に中の全てではないということは心に留めておいた方が良いだろう。また、SNS上では、情報の真偽よりもいいねやRTなどの“共感”とみなされる印が多いこと=正義である、という価値観に支配されがちだ。特に言語的な壁のある海外の情報に関しては翻訳アプリを使用する等、ある程度自分で情報源を確認する方が誠実だろう。そしてそのソースが明記されていない情報に関しては、そのまま信頼するべきかどうか一度立ち止まって考えてみてから扱うべきかもしれない。(DJ泡沫)