中村倫也、木下晴香、山寺宏一……映画『アラジン』吹替版を支える優れた歌唱力に注目
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ディズニー長編アニメーションで世界的に有名な作品『アラジン』が、同名タイトルで実写映画化された。本作はアニメーション版のファンを魅了し、さらにウィル・スミスのジーニー役が映画ファンの中で話題となっている。しかし、注目を浴びているのはそれだけではない。プレミアム吹替版のキャストの豪華さも集客の一翼を担っている。主人公のアラジンには中村倫也、ヒロインのジャスミンには木下晴香が抜擢された。さらに注目されていたジーニーは、アニメーション版と同じく山寺宏一が吹き替えを務める。ドラマや映画でも活躍する中村を筆頭に、アニメーション界トップスターの山寺、ミュージカル界実力派の木下と豪華キャストが歌声を披露することで、作品の評判も上々だ。
ミュージカル映画にとって歌唱力は、かなり大きなウエイトを占める。昨今のミュージカル映画でヒットを飛ばした作品と言えば、『ラ・ラ・ランド』(2016年)や『グレイテスト・ショーマン』(2017年)などが有名だろう。とくに『グレイテスト・ショーマン』の大ヒットの所以は、歌唱力が大きく評価されたからと言っても過言ではない。「This Is Me」のキアラ・セトルや「The Greatest Show」のヒュー・ジャックマンの伸びやかで力強い歌声は、作品のストーリーとも重なり、背中を押されるような楽曲となった。『アラジン』もまた、同じようにヒットを飛ばしているだけの要素は充分だ。日本国内での注目度で言えば、中村と木下の歌声で、従来のアニメーション版よりもさらに広い層に届いているように思う。
中村は俳優でありながら、歌唱力にも定評がある。過去にミュージカル作品『RENT』や『残酷歌劇「ライチ 光クラブ」』などで生の歌声を披露し、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)の劇中でも歌唱シーンがあった。他にも映画やバラエティ、ラジオなどで度々美声を披露し、SNSで話題をさらってきた。今回『アラジン』の吹き替えでは、主人公アラジンのセリフだけではなく、歌唱シーンの吹き替えも担当している。長編アニメーションの頃から、ディズニー作品の定番ソングとして愛されてきた「ホール・ニュー・ワールド」で、木下と息のあったハーモニーを見せている。中村の声はもともと甘く、若々しい印象だ。やや高い歌声もまた、アラジンの無垢な青年という役柄に合うように聴こえる。丁寧な歌い方には誠実さが見え、伸びのある声は優しい印象を抱かせる。
一方、木下の声は透明感があり、芯の強い女性という印象だ。木下は歌唱の際、かなりはっきりと発声している。その様子が、強い意志のある女性というジャスミンのキャラクターにマッチしているのだ。生歌で勝負してきたミュージカル女優だからこそ、声の安定感は群を抜いている。二人のハーモニーは相性抜群で、非常に耳馴染みが良いため、アラジンとジャスミンの距離が縮まるという重要なシーンでは、芽生える恋心を自然と感じさせるハーモニーとなっていた。
さらに『アラジン』を掘り下げたとき、忘れてはならないのが、山寺宏一の力だ。過去にも、ディズニー長編アニメーションで数多のキャラクターの声を担当している。長編アニメーション版『アラジン』のジーニーをはじめ、『美女と野獣』の野獣、ドナルドダック、『リトル・マーメイド』のセバスチャンなど、その役柄はディズニー作品だけでも10以上に及ぶ。そんな山寺は、本作で「アラビアン・ナイト」の歌唱を披露するシーンがある。長編アニメーション版では、行商人のペドラーが歌っているこの楽曲を実写版ではジーニー役の山寺が担当した。実は、この行商人のペドラーは、ジーニーが姿を変えているという説があり、よく見るとペドラーの指はジーニーと同じ4本、そして海外版ではジーニーの声優を務めたロビン・ウィリアムズがペドラーの声も担当している。この一説はすでにジョン・マスカー監督とロン・クレメンツ監督が真実だと明かしており、こういった経緯が影響して、今回の「アラビアン・ナイト」の歌唱に山寺が抜擢されたのではないかと推測できる。「アラビアン・ナイト」での山寺の声は重厚感があり、ストーリーテラーさながらの風合いがある。物語の幕開けにふさわしい歌唱と言えるはずだ。さらに「フレンド・ライク・ミー」では、得意の様々な声色と底抜けに明るいテンションが、存分に発揮されている。数多の声を持つ山寺だからこそ、この表現力を成し得ることができたのだろう。顕著に実力が現れるシーンとなった。
『アラジン』の人気は衰えを知らず、公開3週目に突入してもなお、連日テレビや街中で楽曲が流れ、盛り上がりを見せている。本日6月21日には、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、中村と木下が「ホール・ニュー・ワールド」を披露。劇場で楽しんだミュージカル『アラジン』の世界をテレビでも堪能することができる。束の間の“魔法の絨毯の旅”をぜひ楽しんでほしい。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■公開情報
『アラジン』
全国公開中
監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガスト、ガイ・リッチー
音楽:アラン・メンケン
出演:メナ・マスード、ナオミ・スコット、ウィル・スミス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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