King & Prince、1stアルバムで示す“新たなる王道” 収録曲のサウンドを聞く
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デビューシングルから3枚連続で、初週30万枚以上のセールスを記録しているKing & Prince。2018年5月のデビューから約1年を経て届けられた1stアルバムのタイトルは、堂々のセルフタイトルである『King & Prince』だ。ここでは通常盤に収録されている17曲を、主にサウンド面を中心に聴いていきたい。
(関連:King & Prince 平野紫耀と永瀬廉の異なる魅力 「シンデレラガール」「君に ありがとう」から考察)
アルバムの幕開けは、デビューシングルであった「シンデレラガール」。四つ打ちをはじめとするエレクトロニックな音と、ストリングスの音色の絡み合いが、King & Princeのボーカルのみずみずしさを引きたてる。編曲は、大御所である船山基紀。彼は、古くはKinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」(1998年)など数多くのジャニーズ関連楽曲を手がけており、まさにツボを心得た手練れによるサウンドだ。
「Sha-la-laハジけるLove」では、ファンキーなギターも響く。この生音の使い方の塩梅も絶妙だ。
3rdシングル「君を待ってる」の作詞は高橋優。「シンデレラガール」と同様に、エレクトリックな音やストリングスの音色が響くのだが、「君を待ってる」ではさらにブラスセクションも加わっている。2番のAメロにおける、低音を強調したドラムや弦楽器の響きも楽曲に躍動感をもたらしている。
「Naughty Girl」は、心地良いギターのカッティングが大きな軸となっているダンスナンバー。King & Princeによるラップも登場するなど、新しい側面を見せている。
イントロからテクノなアプローチを聴かせるのが「Can’t Stop Now」。終盤ではEDM的な高揚感も感じさせる。
「マホロバ」は、ナオト・インティライミが作詞・作曲・編曲を担当。編曲には、彼の楽曲を数多く手掛けている大久保薫も参加している。King & Princeのボーカルが情感とともに前に出ているのは、シンガーソングライターのナオト・インティライミの作品ゆえかもしれない。
トラップが鳴り響くミディアムナンバーが「別々の空」。メンバーのソロのボーカルの個性が色濃く出ている楽曲だ。トレンドをつかみながらKing & Princeの新しい表情を引きだすことに成功している。
「Moon Lover」は、船山基紀編曲による華やかなビッグバンドジャズ歌謡だ。そこから一転して、「FEEL LIKE GOLD」はデジタルなロックナンバー。ボーカルにはときにオートチューンも施されている。
本作でも異彩を放つのが、平野紫耀と髙橋海人によるヒップホップ色の濃い「Big Bang」。ここでもトラップが鳴るが、オリエンタルな弦楽器の音色も響く。
「Dance with me」は、本作でもっともブラックミュージックに接近したソウルナンバー。ブラスセクションが前面に出て活躍する。続く「Super Duper Crazy」は、ギターロックにEDMのビルドアップも投入したサウンドだ。
2ndシングル曲「Memorial」は、本作で大きく流れを変える存在。他のシングル曲と同様に、エレクトリックな音とストリングスの音色を配したサウンドは、非常にドラマティックだ。
岸優太、永瀬廉、神宮寺勇太による「Letter」は、アコースティックギターのカッティングからストリングスもまじえたフォーキーなサウンドへ。「Song for you ~君を信じて~」は、プログラミングのリズムとストリングスが響くミディアムナンバー。
ブラスセクションで幕を開け、リズムも軽やかなのが「君に ありがとう」。初回限定盤ではここで終わりだが、通常盤はバラード「King & Prince, Queen & Princess」が最後を飾っている。アルバムとしての完成度は通常盤のほうが高いだろう。
さて、『King & Prince』というアルバムは、エレクトリックなサウンドを使う一方で、ストリングスやブラスセクションも配する。その比率は、絶妙にメインストリームのJ-POPという感じだ。多くの楽曲が、複数の作家で作曲されていることも、いかにも現代らしい。『King & Prince』は、2019年のメインストリームのJ-POPの姿をパッケージしたアルバムという感触もする。いわば新たなる王道なのだ。(宗像明将)