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『なつぞら』中川大志が問いかけたアニメーションのリアリティ 次週は山田裕貴に波乱の予感

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 『なつぞら』(NHK総合)第12週「なつよ、千遥のためにつくれ」は、なつ(広瀬すず)がこれでもかというほどの悩みに振り回される週だ。

 12年前に別れた妹・千遥を訪ねたなつと咲太郎(岡田将生)だったが、そこにはすでに妹はおらず、いじめに苦しみ、作り笑いをしながら生きた末、家出をしていた。第66回で信哉(工藤阿須加)が口にする「つらいことばっかりじゃなかったはず」という望みも虚しく、「奇跡なんてないんだわ」と自暴自棄になるなつ。しかし、そんななつを咲太郎は「漫画映画は子供の夢」「千遥に見てほしいものを作れ」と励まし、なつは再びアニメーションへと向かっていく。

 東洋動画では長編漫画映画第2弾『わんぱく牛若丸』のキャラクター検討会がスタート。常盤御前の母性を前面に出したなつの絵と、したたかで強い麻子(貫地谷しほり)の絵とで意見がぶつかることにより、なつはアニメーターとして仕事で責任を取り、認め合うしかないことを知る。下山(川島明)をリーダーとした“下山班”で作画作業がスタートしたある日、なつが運命的な出会いをするのが“カチンコ君”こと演出助手の坂場一久(中川大志)。「アニメーターとしてのなつに大きな影響を与えてゆくのかもしれません」というナレーションが入るほどの人物だ。

 常盤御前のライブアクションでカチンコも打てない不器用な坂場の姿をスケッチするほど、彼を少し下に見ていたなつ(立場としてはなつが先輩)。そこに、なつが描いた動画に「おかしくないですか?」と聞きにくるのが坂場だ。問題となるのは、牛若丸が馬に乗って崖を下る訓練のシーン。なつが描いた動画は体が前につんのめっており、怖がっているなら体を後ろにのけぞらそうとするのではないか、というのが坂場の主張だ。

 動揺しつつもなつは、アニメーターにとって表情は大事な表現と返し、ディズニーの教科書で学んだ「スクウォッシュ・アンド・ストレッチ」を説明しようとするが、博識の坂場に逆に論破されてしまう。下山班の面々も、ファイティングポーズを取れとばかりに、なつに熱い眼差しを向けるが段々とその光景に意気消沈していき、下山も動画の修正を承諾してしまうのだ。

 ここで論点となるのは、アニメーションのリアリティーとは何か。現実的な世界のリアリテイーを追求しようとしているのか、アニメーションにしかできない表現を追求しようとしているのかという東洋動画の問題点をずばり坂場は指摘して見せる。桃代(伊原六花)を誘って川村屋に訪れたなつはそこでも坂場と出会う。東大出身という坂場の学歴に惹かれ
ている桃代と、彼と馬が合わず嫌がるなつ。しかし、坂場のアニメーションは大人にも夢を与えるものだと思ったという考えが、子供向けにアニメーションを描くなつの固定概念を覆していく。「アニメーションにしかできない表現って……」そうつぶやくなつの元に光子(比嘉愛未)がやってきて、そこで会話は幕引きとなる。

 第12週でなつが最後に苦悩するのは、雪次郎(山田裕貴)が川村屋を辞め、役者になるために咲太郎の劇団「赤い星座」の試験を受けたという報告だ。第10週から雪次郎は一人息子として雪月の後を継ぐことと演劇の道とで揺れる葛藤を見せていた。雪次郎を歓迎する咲太郎だが、なつは雪月の人々がどんな思いで東京に送り出したか気持ちが分かるため、彼を必死に説得する。

 以前、「赤い星座」の女優・亀山蘭子を演じる鈴木杏樹が『ごごナマ』(NHK総合)に出演した際、今後山田との共演シーンが多くなっていくと話していたが、その真意は果たして。第13週「なつよ、“雪月”が大ピンチ」では雪次郎を中心とした物語が展開される一方で、予告には坂場が「アニメーションにしかできない表現は見つかりましたか」となつの手を取る姿も。坂場はまさかのなつの恋愛相手となるのか。多くの悩みを残したまま、来週に続けよ。(渡辺彰浩)