ドラマ『あなたの番です』は主題歌でも謎が深まる? Aimer「STAND-ALONE」歌詞を読み解く
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「毎週、死にます」ーー衝撃的なコピーが話題の、原田知世と田中圭がW主演を務めるドラマ『あなたの番です』(毎週日曜夜10:30~11:25、日本テレビ系)。同ドラマの第1章最終話となる10話が先週放送され、本日23日23時より特別編が放送される。
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『あなたの番です』は異例の二期連続ドラマ。第1章ではマンション「キウンクエ蔵前」に住む13人が、それぞれ“殺したい人”を書いてその紙をランダムに引いていく“交換殺人ゲーム”が展開された。第1章最終話ではなんと主人公である手塚夫婦の妻・菜奈(原田知世)が、自宅のベッドで死んでいるところを夫・翔太(田中圭)が発見するという衝撃のラストだった。6月30日放送の第11話からは『あなたの番です-反撃編-』がスタート。新たに横浜流星や、田中哲司の出演も決まった。キャッチコピーは、「殺られる前に暴いてやる。」で、翔太が妻・菜奈の命を奪った殺人鬼に迫る。その間をつなぐ今夜の特別編では、これまでの事件を振り返るとともに、菜奈と翔太の恋の軌跡も描かれるという。
同ドラマの主題歌は、〈さよならって 君が叫んでる〉というサビでおなじみの、Aimer 「STAND-ALONE」。同曲のMVに出てくる女性が、奈緒が演じる尾野幹葉であり、「301号室」という幹葉が住む部屋番号まで出てくるので、幹葉が重要人物なのではないかと思わせる内容だ。Aimer自身も「何かが起こる予感に満ちた一曲です」と語っている。
しかし、MVや楽曲のインパクトもさることながら、第1章最終話の前後で、歌詞の見方が変わってくるのがこの曲の面白い部分だ。
〈さよならって 君が叫んでる さよならって 今も叫んでる〉
ここでの〈さよなら〉について、最終話までは、事件の混沌から夫を守ろうと嘘をつく菜奈から翔太に対しての〈さよなら〉だと感じていた。また同時に、〈さよなら〉は毎週死んでいく死者達の声であり、その叫び声が今でも聞こえてくるような気がする、残された住人達の苦悩にも思えた。
しかし、最終話を終えて読むと、殺された菜奈からの本当の意味の〈さよなら〉に聞こえ、つづく〈間違いだらけでも そのドアを開ければいい〉も、隠し事を重ねる菜奈の心のドアを開こうとする翔太と重なる。実際、翔太は菜奈に対して「嘘でも、全部信じるからね。菜奈ちゃんが言うことは、全部俺にとっては真実になるんだからね」とまっすぐに言う場面もある。その後の〈何も変われないなら 悲しい歌ずっと 歌ってもいいの〉は、このままでは菜奈が苦しむと、マンションから引っ越すという変化を菜奈に諭している翔太のように思えるし、事件の謎を解くために残ろうとする菜奈の諦めの念にも聞こえる。
〈STAND-ALONE 歪んだ世界で
STAND-ALONE 描いた世界へ
バイバイ 窓辺に 月明かりも届かない場所 〉
「STAND-ALONE」は「孤独」や「孤立」という意味。動機がある者には完璧なアリバイがあり、どの殺人の犯人も一向に逮捕されない状況で、自分以外誰も信じられない登場人物たちの姿と重なる。この部分も先と同様、最終話までは独りで問題に立ち向かう菜奈の想いのように思えた。しかし、続く〈何もかも投げ出して 暗闇に浮かぶ 星になりたい夜〉は、最終話で妻を殺された翔太の茫然自失の感情や、死んで星になった菜奈に寄り添い、自分も星になってしまいたいという痛切な想いにも感じることができる。
〈探していたはずの線を 失くしてきたもので描いて
曖昧過ぎたのは 始まりとルールの性能
何も守れないなら 刻んだ名前も 失くしてもいいよ〉
また、この部分は、まさに『あなたの番です』の冒頭、住民会で何気なくそれぞれが“殺したい人”を書いてその紙をランダムに引いていったすべての始まりそのもの。「自分が書いた人が殺された場合は、次はあなたがその犯人が望む人を殺す番です」という曖昧なルールに追いつめられていく。交換殺人ゲームに巻き込まれ、大切な人が危険に犯されるくらいなら、“殺したい人”を書いたメモ=〈刻んだ名前〉を無しにしたいと葛藤するのは菜奈の想いであり、菜奈亡き後は翔太の悔いを表すように思える。
〈最初に 君がついた嘘 夜明けは来るよと囁き
泣きたい ほど あの時間こそが幸せだった
星座すら逃げ出して
一人立ち尽くす 星の見えない夜
STAND-ALONE〉
未来に希望を抱かせるような言葉を翔太にかけ、交換殺人ゲームのことに限らず、自分の結婚のことさえ隠していた菜奈の嘘。それでも菜奈がいたあの頃が幸せで戻りたいのに、ついに星になった菜奈にさえ見放された気分で、孤独にさいなまれるという、翔太の想いにぴったりと重なる歌詞だ。
このように、最終話までは一人で真実を掴もうと奔走する菜奈の歌に聞こえていたものが、最終話で菜奈を失い、菜奈の意志を引き継ぐかのように真相に迫っていく翔太の歌に聞こえてくるのだった。
ちなみに、このドラマの企画・原案は秋元康であり、彼は以前「恋人のことをどれくらい知ってますか?」をコンセプトにしたドラマ『愛してたって、秘密はある。』を企画し、まさかの結末を用意していた。今回の『あなたの番です』も、夫婦の信頼関係を問うような予想外の展開が待っているかもしれない。また、「STAND-ALONE」のMVに幹葉が出演していた意図とは? 物語がラストを迎える時には「STAND-ALONE」の聞こえ方が、さらに変化する可能性もある。ぜひ本日の『特別編』や『反撃編』と照らし合わせながら、歌詞を味わってみてほしい。(深海アオミ)