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King Gnu「白日」が2019年リリース曲として上半期ストリーミング1位、ヒットの理由を再考察

音楽

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リアルサウンド

 Billboard JAPANが発表した2019年上半期ストリーミングチャート「Streaming Songs」で、King Gnuの「白日」が5位にチャートインした。1~4位はすべてあいみょんが昨年以前にリリースした曲であり、今年リリースの曲に絞ると「白日」が最上位にあたる。現状「白日」は、2019年を代表するヒットソングとなりつつあると言えるだろう。

King Gnu – 白日

「白日」のチャート動向と配信主流における“ヒットソング”の定義

 Billboard JAPANが提供するCHART insightを元に「白日」がどのように広まっていったのかを振り返りたい。「白日」のストリーミングが解禁されたのは配信リリースと同日の2月22日金曜日。同チャートには3月4日付(2月18日~2月24日集計)から登場しており、つまり集計週後半からの参入だったが、初登場15位をマークしたということになる。好発進の要因としては、『バズリズム02』(日本テレビ系)での、「今年コレがバズるぞ!BEST10」や、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)での「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年間ベスト10!」など年始の地上波番組で2019年注目のアーティストとして名前が挙げられていたことや、同チャート2月25日付(2月11日~2月17日集計)のラジオ放送回数が11位であるように、リリース前からメディアプロモーションを積極的に行っていたことにより、コアな音楽ファンから注目を集めたことなどが考えられる。また、1月19日より「白日」を主題歌とするドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)の放送がスタートしており、そこから流入した新規リスナーも多かったのではないだろうか。

 2月28日にMVが公開されると、ストリーミングでも順位を押し上げ3月11日付(2月25日~3月3日集計)のチャートで2位に浮上し、その後6週にわたり同順位をキープ。その間、『イノセンス~』の盛り上がりとともにダウンロードでも順位が上昇。3月23日に最終回が放送されると、4月1日付(3月18日~3月24日集計)の総合ソングチャート「JAPAN HOT 100」で6位にチャートインし、1度目のピークを迎えた。その後、ストリーミング再生数もDL数も落ち着きを見せていたものの、4月26日放送『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でのパフォーマンスを機に再上昇。5月13日付(4月29日~5月5日集計)のチャートではストリーミング再生数が再び2位となったほか、MV再生数やツイート数もジャンプアップ。GW期間における春フェス出演がMステ効果を後押ししたと考えられるだろう。また、これまで圏外だったカラオケ指標が同タイミングで62位となっている点からはライト層への浸透が窺える。カラオケ指標はその後さらに上昇し、現在15位前後を推移している。

 その後も勢いを落とすことはなく、ストリーミングチャートでは5位以内に留まり続けたほか、その他各指標でも上位をキープ。ストリーミングチャートの場合、一度上位にランクインすれば、プレイリストなどでピックアップされ、さらに多くの人に聴かれる機会が増えていく。こうして「白日」はロングヒットを記録した。「白日」は現状フィジカルでのリリースはないが、配信が主流となっている現在の音楽シーンの場合、フィジカルなしでもヒットソングは生まれるのだということが、この曲によって改めて証明されたといっても差し支えないだろう。

 上記の経緯をまとめると、ラジオ→MV→ドラマ→音楽番組とフィールドを移行しながら、コアな音楽ファンから一般層まで、幅広く訴求していったことがロングヒットの要因である。しかしもちろんそのような戦略を敷けば誰でもヒットソングを生み出せるというわけではない。

「白日」は間口が広く、同時に通を唸らせる要素のある曲

 たとえば、スローテンポであるはずなのに、ビートが2倍で刻まれ続けているため、いわゆるスローバラードとは異なる印象を受けるテンポ感。Aメロ→Bメロ→サビという定型的なJ-POP構造とは違う展開。拡声機を片手に歌う常田大希(Gt/Vo)と、その常田に“嫌われない歌声”と称された井口理(Vo/Key)によるツインボーカル。譜割りが細かく、音程を激しく上下させるようなボーカルのライン(カラオケで多く歌われているようだが決して歌いやすい曲ではない)。このように、「白日」には従来のJ-POPにおけるヒットソングとは異なる要素が多く、「こういう曲調の方がきっと流行るから」という予定調和は読み取れない。しかしそれゆえに、この曲には何となく看過できないような、絶妙な違和感、フックが多数ある。

 一方、バンド名のロゴに「JAPAN MADE」とあるように、彼らは自身の楽曲にJ-POP的な要素を意識的に取り入れていることをインタビューなどで度々明言している。ここで言うJ-POP的とは、言い換えると“歌をフィーチャーする”ということで、特に「白日」は特にそういう要素が強い。この曲は、井口のファルセットボイスとピアノの二重奏から始まっているし、以降も井口の澄んだ歌声が美しく聴こえるようなバランスで成り立っている。

 つまり「白日」という曲自体が、間口の広く、同時に通を唸らせる要素のある曲だったからこそ今回のようなロングヒットに結びついたのだ。バンドシーンといえば、少し前までは「どういう曲調だったらフェスで盛り上がるか」という尺度が偏重されがちな傾向にあった(いわゆる“四つ打ち”が流行ったのもそのためと言える)が、今はそれほど重視されていないように思う。“配信からヒットが生まれる”という環境が整ったことによってそうなっていったのか、自らのクリエイティブの強度を信じ、世に提示することのできるミュージシャンが増えたからそうなっていったのか――という点に関しては“鶏が先か卵が先か”みたいなところがあるが、いずれにせよ、シーンが面白くなってきたことは明らかだ。今後の展開が楽しみであると同時に、バンド、捨てたもんじゃないぞと今は思っていたりする。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。


■作品情報
King Gnu 配信シングル「白日」
日本テレビ系土曜ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』主題歌
ダウンロード/ストリーミングはこちら