玉城ティナが語る、転機となった『Diner ダイナー』での経験 「今後の人生において強みになる」
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平山夢明の同名小説を、蜷川実花監督×藤原竜也主演で実写映画化した『Diner ダイナー』が7月5日に公開される。元殺し屋で天才シェフのボンベロが店主を務める殺し屋専用のダイナー<食堂>を舞台に、ウェイトレスとして働くことになってしまったオオバカナコが、次々と店にやってくる殺し屋たちの殺し合いに巻き込まれていく模様を描く本作。
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藤原竜也が演じるボンベロの食堂へ新人ウェイトレスとして売られた孤独な少女・オオバカナコを演じたのは、今後も出演した『地獄少女』や『惡の華』など話題作の公開を控える玉城ティナだ。蜷川監督に「彼女となら心中してもいい」と言わしめヒロイン役に抜擢された彼女に、蜷川監督とのやり取りや撮影時のエピソード、そして今後の展望などについて話を聞いた。
ーー蜷川実花監督とは昔からお知り合いだったんですよね。
玉城ティナ(以下、玉城):デビュー直後の14歳ぐらいからお仕事でご一緒させてもらっていましたけど、ずっと写真家とモデルという関係性ではありました。
ーー今回は初めて“映画監督”としての蜷川さんとご一緒したと。
玉城:そうですね。素直に嬉しかったです。『さくらん』や『ヘルタースケルター』など蜷川さんの作品はもちろん観ていて、すごく好きな世界でした。そんな蜷川さんの最新作に自分がヒロインとして携われるのは、すごく光栄なことだと思いました。
ーーということは、これまでは蜷川さんとお芝居の話をすることもなかったってことですよね?
玉城:なかったです。今回のお話をいただいた1カ月前ぐらいに、蜷川さんに撮っていただくスチール撮影があったんです。その時に、蜷川さんに「今後何をしていきたいの?」って聞かれて、「女優さんをやっていきたいです」と答えたんですけど、そしたら「じゃあ今度一緒にやろうよ」みたいな話になって……。まさかこんなに早いタイミングで実現するとは思っていなかったので、すごく驚きました。今考えると、それがオーディションだったのかもしれません。
ーー『ヘルタースケルター』や『さくらん』など、蜷川監督の作品にはどういうイメージを持っていましたか?
玉城:まず、女の子が絶対的にかわいい。そのかわいさと壊れた時の落差がすごく激しくて、それが蜷川さんの作品の好きなところなんです。女としてどう生きていくかというテーマもそうですね。だから今回の『Diner ダイナー』はこれまでの作品とはまた少し違って、新しい印象を受けました。
ーー蜷川監督の作品で男性が主演というのは初めてですもんね。一方で、玉城さんが演じたオオバカナコは観客視点の役割を担う、裏の主人公とも言えるキャラクターです。
玉城:蜷川さんの作品でヒロインを演じるということは、『さくらん』の土屋アンナさんや『ヘルタースケルター』の沢尻エリカさんと並ぶことにもなるので、これはもうすごいことだなとプレッシャーもありました。ただあまり考えすぎていても仕方ないなと思ったので、撮影に入ってからはとにかくカナコを演じ切ることだけを考えていました。
ーー蜷川監督は、玉城さんについて「彼女となら心中してもいい」とコメントされていました。
玉城:本当にありがたいですね。作品を観てくれた友人や関係者の多くの方が、私に対する蜷川さんの愛をすごく感じるって言ってくださったんです。それは役者として最高に嬉しいですし、蜷川さんがそこまで覚悟を持って私をヒロインに起用してくださったのは本当に感謝しかないです。
ーー蜷川監督とは役についてどういう話を?
玉城:監督との共通言語みたいなものを持っていたかったので、“話し合い”と言うまで堅くはないですけど、撮影に入る前に、事前にカナコ像については2人で話をしました。あと、蜷川さんから、実際の“玉城ティナの要素”を脚本に取り入れたいという話を聞いていたので、私自身の話もしましたね。
ーー具体的にどういう部分が取り入れられたんですか?
玉城:具体的に何がというよりかは、雰囲気的なことだと思います。カナコは原作の設定から年齢も若くなっているので、私の世代の考え方だったりとか、私が話したことや私自身の雰囲気を、カナコに反映させてくれたのではないかなと思います。
ーーウェイトレスの衣装もかなり似合っていましたが、ああいうところにも玉城さんのイメージがうまく反映されているように感じました。
玉城:確かにそれはあったかもしれません。あの衣装って、結構体のラインが見えるので、私をイメージしてデザインしてくれたのであれば嬉しいですね。衣装がブルーなので、監督が「アリスみたいだね」って言っていたのがすごく印象的で。物語的にも『不思議の国のアリス』っぽさがあるので、そういうところも意識されていたのかもしれません。
ーー藤原竜也さんをはじめ、窪田正孝さんや小栗旬さんなど、共演者の方々もかなり豪華ですよね。
玉城:本当に「すごいな」の一言です。「私がこの中にいて大丈夫かな」って思いました。改めてポスターを見てみても、「すごいなー」って。これだけ主役級の役者さんと日本でトップのクリエイターの方々がスタッフとして集まって、純粋にやりがいを感じさせる監督がまずすごいなと。カナコは受け身の役で、個性の強いキャラクターたちにどう対処するか、どう耐え抜くかが重要だったんですけど、そこは私自身の境遇とも絶妙にリンクしていました。
ーー玉城さん自身も“耐え抜かなければいけない”という思いがあったんですね。
玉城:ほぼ毎日、撮影がありましたし、常にカナコでいなければならなかったんです。それに加えて、次々と個性の強い殺し屋さんたちがやって来て、私はそれを受けていかなければならなくて……。なので、耐え抜く力は今回の現場でかなり身についたと思っています。
ーー宙吊りにされたり、水浸しになったりと、かなり体も張っていましたね。
玉城:でも私、映画の中で必要なことであれば全然大丈夫なんです。大変だと感じたこともそんなになかったですね。藤原さんや窪田(正孝)さん、蜷川さんたちが、現場での居方や佇まいも含めてやりやすい環境を作ってくださったので、そこに感謝しながら演じていました。
ーー今後公開が控えている『地獄少女』や『惡の華』などを含めダークな印象の役柄が続きますが、玉城さんにはそういう役柄がすごく似合っているように思います。
玉城:それは私に怯えていてほしいってことですか?(笑)。でもそういう役柄は自分でも合っているなと思います。作品自体もそうですが、キャラクター性が強い役柄だったり、何かに怯えたり立ち向かったりするキャラクターを演じることは多いですし、演じていても楽しいですね。でも、逆に思われることも多いんですよ。
ーー『ドルメンX』や『ういらぶ。』などで演じた、明るくて芯の強い感じですよね。
玉城:そうです。強そうとか、罵りそうとか……(笑)。そういうイメージもわりと言われたりするんですけど、極端に振り切れているイメージが両方あるのも面白いですよね。
ーー演技を始めて5年になりますが、玉城さんの中で何か意識の変化はあったりしますか?
玉城:最近すごく思うのは、やっぱり人の話をちゃんと聞かないとダメだなと。それってすごくシンプルなことだけど、気持ちに余裕がなかったりすると、周りが見えなくなったりしちゃうじゃないですか。なので、なるべくお芝居をする時は、共演者の方々や監督さん、スタッフさんなど、いろんな人たちの話をよく聞いて、しっかりコミュニケーションを取ることを大事にしています。
ーー今回の『Diner ダイナー』は、玉城さんにとって転機となるような作品だと思いました。
玉城:私自身も本当にそう思います。20歳の時にこの作品に出会えたのは、本当に運命だったり奇跡みたいなことだと思いますし、これから先、20代を生きていく中で、何度も振り返る作品になる気がします。作品ごとに成長することは少なからずあると思うんですけど、『Diner ダイナー』の前と後では、他の作品よりも変わった実感は大きかったです。自分の中で何が変わったのかは、具体的にはわからないですけど……まず、あの環境にいられたことがとても大きかったです。
ーー具体的に何が変わったかはわからないけど、確実に何かが変わったと。
玉城:蜷川さんが私をすごく見守ってくれて、信じてくれたので。それを感じながらお芝居ができたのは、本当にありがたいことです。自分がその責任を負って、世界を全うできた達成感はありました。カナコが思ったように、私にもこの映画の中に居場所がある。それは、これからの人生において強みになると思います。
ーー今後の活躍にも期待しています。
玉城:ありがとうございます。まだまだやってない役柄もたくさんあるし、見えてない一面や見せてない一面もたくさんあるので、いろんな役を演じていきたいです。年齢を重ねて大人になってきたからこそできる役もあると思うので。いろんな役柄で必要とされて、そこに自分がいることで何かを生み出すことができるのがこの仕事の醍醐味だと思うので、今回の『Diner ダイナー』のような経験が今後も続けば、それはすごく幸せなことだと思います。(取材・文・写真=宮川翔)