最新の研究結果から真の姿が明らかに! 『特別展 三国志』展、開幕
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《関羽像》明時代・15〜16世紀 新郷市博物館
最新の研究成果を踏まえて三国志の実像に迫ろうとする『三国志』展が、東京国立博物館で7月9日(火)より開幕する。
今からおよそ1800年前。後漢王朝の混迷に端を発し、魏・呉・蜀の三国が群雄割拠した「三国志」の時代。実は近年、重要な発掘成果が相次いだことで、その実像が明らかになってきた。
中でも三国志研究史上最大の発見と言われているのが、2008年〜2009年にかけて発見された、魏の礎を築いた三国志の英雄、曹操の墓。同展では曹操のほか、呉の皇族級の人物の墓からの出土品や、後漢から三国時代の兵器など、中国から来日する最新の考古発掘成果約160件の展示を通して、リアルな三国志世界の再構築を試みている。
会場は、プロローグ/エピローグと全5章で分けられ、100年あまりに及んだ三国志の時代の政治・経済・軍事・文化・生活・宗教を紹介していく。
プロローグ「伝説の中の三国志」では、伝説から生まれた詩文や絵画を紹介。小説『三国志演義』の一幕を鮮やかに描いた壁画や、尊崇されて神となった武将、関羽の迫力ある像などが登場する。
続く第1章では「曹操・劉備・孫権」といった英雄たちのルーツを紹介。蜀の初代皇帝となった劉備の先祖と伝わる人物の墓より出土した品々などから、前漢時代の貴族の生活がうかがうことができる。
第2章では巨大帝国へと成長した「漢王朝の光と影」にスポットを当て、漢時代の豪華な墓の副葬品や、後漢時代の農民の反乱「黄巾の乱」に関する資料が展示される。
そして、三国の熾烈な争いに迫る第3章「魏・呉・蜀 三国の鼎立」。ここでの注目は、三国志時代の主力兵器のひとつ、弩(ど)と呼ばれるクロスボウでの戦いを再現した展示室。実際に出土したリアルな武器と、1千本を超える大量の矢が天井に装飾され、三国志時代の水上戦の解説とともに鑑賞することができる。
第4章「三国歴訪」では、魏・呉・蜀の異なる風土、思想や習慣をそれぞれの出土品から紹介する。漢王朝の文化を受け継いだ魏、物産豊かな内陸の蜀、外国での交流で賑わう呉、といった三国の特色が浮き彫りにされる。
そして、第5章「曹操高陵と三国大墓」では各地の権力者の古墳を紹介。ここでの最大の見どころは「曹操高陵」と呼ばれる曹操の墓だ。
会場では曹操の墓室の一部を実寸大で再現。「墓は質素に」という曹操の遺言そのままに珍しい宝などはなく、「魏武王」の石碑、土器の一種、髪飾りの一種、そして世界最古となる可能性がある白磁などが展示されている。
歴史書『三国志』や、小説『三国志演義』に端を発し、今もなお、映画や漫画、ゲームなどさまざまなコンテンツとして人気の衰えることのない三国志の世界。同展に展示された多くの実物資料を前にすると、それらがリアルな世界として立ち現れてくるのが実感できるはず。英雄たちが駆け抜けた時代を、最新の研究成果とともに存分に楽しんでほしい。
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