Julia Wuに聞く、「Summertime」カバーへの思いと“シンガー”としての信念
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現在、台湾を中心に活動するR&Bシンガー・Julia Wu。過去、「FLY」のリミックスや「Rendezvous」で向井太一とコラボした彼女が、6月26日からRIRI×KEIJU×小袋成彬による「Summertime」のカバーを配信開始した。今回リアルサウンドでは、台湾にいる彼女とZoomでビデオ電話インタビューを行った。幼少期を中国は上海で過ごし、オーストラリアで育った彼女が歌手を目指すまでや、活動における信念、そして今回のコラボへの思いに至るまでをじっくりと語ってもらった。(編集部)
『X-FACTOR』出演から歌手デビューに至るまで
――まずはバイオグラフィーからお聞きしたいのですが、生まれはオーストラリアですか?
Julia Wu:8歳まで上海にいて、8歳からオーストラリアに移住したの。以来、ずっとオーストラリアで、2年前から台湾で活動してるのよ。
――幼い頃から歌うのが好きだったのですか?
Julia Wu:いいえ、小さい頃はずっとクラシックピアノをやっていたの。だからクラシック一辺倒でシンガーになりたいと思ってもいなかったわ。
――そんなJuliaさんがシンガーを志したのはなぜですか?
Julia Wu:ハイスクール時代に色んなスタイルの音楽を聴くようになったのが大きかったと思う。それまでクラシックしか聴いてなかったんだけど、友達の影響でジャズとかR&Bを聴くようになって、なかでもレディー・ガガにすごく影響を受けたの。ゴージャスなパフォーマンスをみせつつ、ピアノの腕もしっかりしていて、歌もうまくて、彼女の曲の中に色んなスタイルがあるってところにすごく影響を受けたわ。それで自分でもチャレンジしてみたいって徐々に思うようになったのよ。(オーストラリアのオーディション番組)『X-FACTOR AUSTRALIA』に出場したのもチャレンジのひとつね。歌の経験がまったくない状態でのチャレンジだったので、すごく緊張したのを覚えているわ。
――歌の経験がまったくないのにオーディションに出たのですか?
Julia Wu:だから歌詞が飛んじゃったのよ(笑)。大学はボストンのバークリー音楽大学に通っていたんだけど、そこではピアノが専攻だったから、人前で歌う機会がなくて。だから『X-FACTOR』が文字通り人前で歌う初めての機会だったわ。この時ホイットニー・ヒューストンの「I Wanna Dance With Somebody」を歌ったんだけど、曲をアレンジして歌詞を全部覚えるのに2週間くらいしかなくて。それでいきなり本番だったから、そりゃ緊張するわよね(笑)。両親は私がクラシックにいかないっていうのでガッカリしていたけれど、最終的には「あなたがハッピーなのが一番だから、歌いたいならやってみれば」って応援してくれたわ。
――この番組がきっかけで台湾でデビューすることになったのですか?
Julia Wu:『X-FACTOR』は大学3年の時に出たんだけど、それは経験としてやってみようって感じで、誰でもいいからサインして! って感じではなかったわ。実際、それでデビューに至ったわけではないしね。大学2年の頃からアジアのメジャーレーベルとかプロデューサーにEメールを送っていたんだけど、誰も返事をくれなくて、唯一返事をくれたのが当時ソニーにいた今の台湾の担当者だったの。けどいざって時に彼はソニーを辞めてしまっていて。だからデビューさせてくれたのは彼ってわけではないんだけど、最初のやりとりがきっかけで友達付き合いが始まって、たまに一緒に作業をするようになって。そして私が卒業を迎えた時に彼から「本気でやりたいんだったら台北にくれば? デビューしてアルバムを作ってっていう流れは作れるよ」って言われたの。それで卒業後に一旦オーストラリアに戻って家族と話し合ってから台湾に来たのよ。
――オーストラリアで活動するという選択はなかったのですか?
Julia Wu:うーん……。US、UKっていうのがその先にあるとすると、オーストラリアで頑張ってもあまり先に進めるような気がしなかったの。オーストラリアで新しく契約先を探すよりは、すでに培ってきた台湾の担当者との友情を取ったって感じね。
――そして2017年に台湾でデビューされましたが、R&Bを中心に、これまで色んな曲をリリースしてますね。
Julia Wu:そもそも好きで聴いていたのはソウルとかR&Bだけど、台湾にきてからラッパーやEDM系など色んなアーティストとコラボレーションする機会をいただいて。それらは私からするとチャレンジではあったんだけど、デビューしてわずか2年くらいの間で色々なことをやらせてもらって、本当にありがたいなと思ってる。けどこれからは自分が本来やりたかったR&Bがもっと出せたらなと思ってるわ。
――ちなみに、今どんな音楽をよく聴いていますか?
Julia Wu:新しいR&Bをよく聴いているわ。エラ・メイとか、H.E.R.、ダニエル・シーザー、ジョルジャ・スミスとかね。ジョン・メイヤーは昔から好きだし、あとはマライア・キャリーやホイットニーのクラシックもよく聴いてる。R&Bが一番好きだけど、案外ジャンルにはこだわらないかな。
――台湾のR&Bシーンは現在どのような状況なのでしょうか?
Julia Wu:R&B系の歌モノがまた喜ばれるようになってきたかな。ここのところヒップホップ系が優勢だったけど、その流れにのってR&Bの人達がフィーチャーされるような形で人気が出てきたわ。その流れの中に私も入ってるんじゃないかな。あと、台湾の若いリスナーは色んな音楽をオープンに受け入れているように私は感じていて。基本的に台湾の人ってバラードとかゆったりとした曲が好きで、そこにヒップホップの影響が結構強いR&Bってどうなのかなって思ったけど、若い人達はもっと聴きたいって応援してくれてるの。だから若いR&Bアーティストも増えてるような気がしてるわ。
――台湾のオススメR&B/ヒップホップアーティストは? もちろんあなたがオススメ1位だとは思いますが(笑)。
Julia Wu:ふふ、ありがとう(笑)。そうね、まずはØZIっていうラッパーかな。彼は(台湾で最も権威のあるアワード)『ゴールデン・メロディー・アワード(金曲奨)』でベスト・ニュー・アーティストを受賞したのよ。あとはR&Bシンガーのジェイ・チョウとか、クマチャン(KUMACHAN)とか。
――クマちゃん?!
Julia Wu:ええ、すごくドープなラッパーで、プロデューサーとしても活躍しているわ。チャイニーズネームは「熊仔」で「ベア・ガイ」っていう意味なのよ。
「RIRIのバージョンをあまり変えたくないなっていうのが一番だった」
――Juliaさんは日本人シンガーの向井太一さんともコラボしてますね。
Julia Wu:彼のチームが私がKUMACHANとコラボしたビデオを見てコンタクトしてきてくれたの。彼のアルバムを全部聴いたんだけど、サウンドが新鮮で、R&Bっぽいモーメンツもあって、声も美しくて。そんな彼が私を見つけてくれて、一緒にやろうといってくれたことにとても興奮したわ。最初にやったのが「FLY」っていう曲のリミックスで、その次に「Rendezvous」って曲を一緒にやったの。この曲の自分のパートは5分くらいで出来たわ。曲がすごく良かったから、聴いてすぐに歌詞が自然と降りてきたの。
――そして今回、RIRIさん、KEIJUさん、小袋成彬さんによる「Summertime」のカバーをすることになりました。この曲をカバーすることになった経緯を教えてください。
Julia Wu:この曲の中国語バージョンが欲しいという話が持ちかけられたの。このままで十分素晴らしいのにっていうのが私の最初のリアクションだったわ。新鮮な空気感とか、夏のバイブレーションとか、どこを切ってもタイトルにふさわしい曲になってるしね。私が普段書く曲とは違ってハッピーなアップビートの曲だったので、歌わせてもらってすごく楽しかったわ。
――普段はハッピーな曲は書かないのですか?
Julia Wu:そうね。個人的にはあまり書かないわ。私の曲の中でハッピーなバイブスがあるものは、私とプロデューサーとの共作なのよ。私がひとりで書いたものはわりとチルってる感じで、ラブソングなんだけど悲しい感じの曲が多いの。だからこういう曲を歌うのはとても新鮮だったわ。
――カバーするにあたって、心掛けたことなどありますか?
Julia Wu:RIRIのバージョンをあまり変えたくないなっていうのが一番だった。メロディもそのままでパーフェクトだし、アレンジもそのままで十分ビューティフルだし。ようするに私が中国語で歌うことで、台湾のオーディエンスがより共感してくれればいいだろうと思ったから、私は出来るだけ笑顔で歌うっていうことを心掛けたわ(笑)。けどMVはオリジナルと全然違う内容になっちゃった(笑)。オリジナルのゴージャス感を伝えつつ、日々を楽しんでる感じを伝えたかったの。だから友達に大勢来てもらってビーチでくつろいだりして、いわゆる普通の人の普通の一日を表現したのよ。そういう日常を盛り上げる音楽っていうコンセプトで作ったMVになってるわ。だから私はとにかく楽しんでるって感じを出そうと思ったのよ。
――RIRIさんの歌声の印象は?
Julia Wu:とにかく声が素晴らしいわね。今、女性シンガーであそこまでで歌える人ってそんな多くないんじゃないかしら。彼女の音楽には私の好きなR&Bの要素がいっぱい入っているから、聴いてすぐにピンとくるものがあったわ。
――この曲を引っ提げて8月末には日本でライブをするそうですね。
Julia Wu:ええ、すごく楽しみよ。実は2年前にF4のヴァネス・ウーが日本でツアーした時にキーボーディストとして日本に行ってるの。その時とはまた違った立場での来日になるから、すごくスペシャルだし興奮しているわ。
――そんな経験があったんですね。
Julia Wu:デビュー前に色々経験しておいた方がいいってことで、彼のツアーに参加したの。今私が組んでるプロデューサーとヴァネスが友達で、彼と前に仕事をしたことがあったので、それでヴァネスを紹介されて。アーティストを間近で見ながら勉強することができたので、本当に素晴らしい経験だったわ。
――その時以来、2度目の来日ですか?
Julia Wu:3回目になるわ。実はジョン・メイヤーを日本武道館まで観に行ったことがあるのよ(笑)。東京はすごく賑やかで人が多くて観光的な要素もいっぱいあるっていうイメージね。だれど大阪に行った時は東京とは違って、すごく静かで穏やかで、“禅”みたいな印象を受けたわ。賑やかなところだけじゃなくて、ああいう“禅”を感じられる日本にもまた行ってみたいわね。
――今後、日本進出、世界進出なども考えていますか?
Julia Wu:具体的にはまだ考えてないけど、とにかく自分の音楽を色んな人に聴いてもらいたい。今回の「Summertime」がきっかけとなって、私の音楽を日本のオーディエンスに聴いてもらえたらすごく光栄ね。あと私はやっぱり英語が一番気持ちよく歌えるから、これからも英語の曲は出していくと思うし、とにかく色んな国の人に私の音楽を聴いてもらいたいわ。
――幼少期を中国・上海で過ごした後、オーストラリアで育ち、アメリカ留学もして、現在は台湾で活躍中と、非常にグローバルな方ですが、それらの経験は自分の音楽活動に反映されていると思いますか?
Julia Wu:そうね、それらの経験があるから今の私がいると思ってる。それは音楽のみならずね。色んな国で暮らして、複数の文化や背景に触れてきたことは私の財産だし、すごく恵まれているなと思っていて。その経験は自然と私の音楽に表れていると思うし、それをみなさんがありのままに受け止めてくれたら嬉しいわ。
――そんなJuliaさんが貫いている信念はありますか?
Julia Wu:ポジティブでいるってことかな。台湾の音楽業界を見てみると、楽じゃないなと思うことの方が正直多いわ。幸い、私にはアーティストを支えてくれる素晴らしいチームがいるけどね。けど成功って教科書がないから、やりながら進んで行くしかないでしょ。デビューしてからのわずかの期間でも色んなことがあって、私も浮き沈みを経験したけれど、まだまだ覚えていかなきゃいけないこと、成長しなきゃいけないことがたくさん出てくるんだろうなと思う。けどシンガーになるって自分で決めたんだから、引き下がることはできないし、前にどんどん進んで行きたい。そのためにもポジティブな気持ちは忘れないようにしなきゃと思ってるわ。
――今後の予定を教えてください。
Julia Wu:3rdアルバムを制作中よ。デモ録りまで終わった曲もいくつかあって、今はミュージシャンの手配とかをやってるところ。内容はまだオールシークレットよ(笑)。
――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
Julia Wu:まずは、私を温かく迎え入れてくれてありがとう。私の曲を気に入ってくれたら嬉しいな。これまで日本のアーティスト2人とコラボしたけれど、これからもどんどん新しいことにチャレンジして、自分の枝葉を広げていきたいと思ってる。日本でもライブをやるし、みなさんとお会いできるのを楽しみにしてるわ。
(取材・文=川口真紀/通訳=染谷和美/写真=Zero Liu)
■配信情報
Julia Wu
「Summertime (Julia Wu Mix)」
主要サブスクリプションサービス含め配信中
■イベント出演情報
『ANESSA Presents”Summertime Live 2019”』
出演:Julia Wu(台湾) / KEIJU(日本) / RIRI(日本)
※abc順
日時:2019年9月7日(土)
開場 18:00 / 開演 19:00
会場:The Wall Live House
問合せ:JUSTLIVE
KKTIX:support@kktix.com
料金 自由:NTD 800(オールスタンディング)
一般発売日:7月20日(土)台湾時間正午12時
プレイガイド:KKTIX
『PARA-』
出演:Julia Wu(台湾) / KEIJU(日本) / RIRI(日本)
※abc順
ほかDJ:未定
日程:2019年9月1日(日)
時間:OPEN/START 16:00
会場:SHARE GREEN MINAMIAOYAMA
料金:自由4,000円(税込)
※1ドリンク、別途オーダー必要
問合せ:Zeppライブ 03-5575-5170(平⽇:13:00〜17:00)
チケット:eplusにて販売
・オフィシャルHP先⾏:7月10日(⽔)12:00 〜7月15日(⽉・祝)23:59
・PG最速先⾏:7月17日(⽔)12:00 〜7月22日(⽉)23:59
・PG先⾏(プレオーダー) :7月24日(⽔)12:00 〜7月28日(⽇)23:59
主催:DIGLE MAGAZINE / the future magazine
協賛:ソニー・ミュージックエンタテインメント
後援:J-WAVE
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