Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > センチミリメンタル、アニメ『ギヴン』OPテーマで表す愛の深さ “凶器”のような歌声と歌詞を分析

センチミリメンタル、アニメ『ギヴン』OPテーマで表す愛の深さ “凶器”のような歌声と歌詞を分析

音楽

ニュース

リアルサウンド

〈深くえぐって そのついでにいっそ記憶も奪ってよ〉

 7月11日に放送がスタートするTVアニメ『ギヴン』(フジテレビ“ノイタミナ”ほか)のオープニングテーマ「キヅアト」は、センチミリメンタル・温詞(あつし)の切実な歌声と心の叫びのような歌詞が、互いを求め合うほどに傷つけ合ってしまう“ヤマアラシのジレンマ”を抱えながら、心の距離を近づけていく登場人物たちの心を代弁しているようだ。きっと誰もが『ギヴン』との親和性の高さと、歌詞に表現された愛の深さに驚くことだろう。

劇中バンド“ギヴン”が歌う、エンディングテーマにも関わるセンチミリメンタル

 アニメ『ギヴン』は、新書館『シェリプラス』に連載中の漫画が原作で、これまでにコミックが5巻発売されている。原作者のキヅナツキにとって、初の長編作にして代表作として名高い。物語は、高校生離れしたギターの腕前を持つ上ノ山立夏が、佐藤真冬の歌声に惚れ込み、自身のバンド“ギヴン”と共に成長していくというもの。しかし、単なるバンド物語でない。バンドを軸に切ない恋愛模様が描かれており、“ノイタミナ”初のBLアニメとして、早くから話題を集めていた作品だ。楽器や演奏シーンの描写の細かさと、ガラスのように脆く繊細ながら鋭さを持った、真冬のむき出しの言葉(歌詞)も読者の評価が高く、アニメでどう描かれるかにも熱い視線が注がれている。

 そんな注目作なだけに話題性にこと欠かず、キャスティングの妙もその1つだ。過去に囚われ続ける佐藤真冬を、『アイドルマスター SideM』などに出演して、人気高騰中の矢野奨吾。真冬の過去を受け入れて、なおも手を差し伸べようとする上ノ山立夏を、『BANANA FISH』のアッシュ・リンクス役などで高評価を得た内田雄馬が演じる。この矢野と内田というフレッシュな組み合わせの2人が生み出す化学反応に、各方面から大きな期待が寄せられているのだ。またギヴンの“大人組”メンバーとして、中山春樹役に舞台を中心に活躍する中澤まさとも、梶秋彦役に実力派・江口拓也が脇を固める。この劇中バンド・ギヴン名義となっている、センチミリメンタルが作詞・作曲・編曲などサウンドプロデュースを手がけるエンディングテーマ「まるつけ」も聴き逃せない。

TVアニメ「ギヴン」PV

 そうした話題のアニメ『ギヴン』のオープニングテーマ「キヅアト」を歌うのが、作詞、作曲、編曲、歌唱、ピアノ、ギター、プログラミングといったすべてを1人で手がける、温詞(あつし)によるソロプロジェクト・センチミリメンタルだ。2015年に“ねぇ、忘れないでね。”というプロジェクト名でバラードの「ラブソング」を発表し、この曲で『イナズマゲート2015』でグランプリ獲得。2年連続で『イナズマロック フェス』に出演した経験を持つ。2018年からは、プロジェクト名を現在の“センチミリメンタル”に改めて活動を行い、これまでに「トワイライト・ナイト」「しんすい」「死んでしまいたい、」「wear」などの楽曲を発表してきた。

“凶器”の声で歌う“狂気”の愛

 大きく息を吸うブレスの音で始まる「キヅアト」は、耳をつんざくエレキギターと、『ギヴン』で真冬が最初に歌い出したあの瞬間、立夏の心が動かされた声は、きっとこれだったんじゃないかと思うような歌声にハッとさせられる。自分に言い含めるように歌われるAメロは、孤独な感情の表れのようだ。幾重にも重なったコーラスが広がるBメロには、ギヴンのメンバーを表す〈春夏秋冬〉という言葉が出てきて、メンバーの支えによって前を向く姿が表現されている。スピード感溢れるサビは、自分の心の内の願望を吐き出すように歌われ、どこか少年っぽさがありながら、しかし内側からは熱いものがこぼれ出すような、ピュアな歌声が実に瑞々しい。舞台上で、まるで自分自身の感情をそのまま客席に向かってぶつけるような表現力は、無垢さゆえの強さと畏れが同居していると感じる。

 温詞が手がけるソリッドなバンドサウンドやアレンジも、楽曲の世界観へと聴く者を深く導いてくれる。特にピアノだけをバックにしながら低く重たい歌声を聴かせるDメロは、非常に聴き応えがあって心惹かれるものがある。オーケストレーションされたサウンドをバックにしたパートでは、広い空に向かうように歌い上げる。高く晴れやかな歌声が広がるその様子は、生々しさの残る傷を受け入れて、1つに溶けていくような感覚がある。そこからのラストのサビには、傷を抱えて葛藤していたそれまでの姿はもうない。あるのは、すべてを受け入れ、決意し、覚悟を決めて凛として立つ姿だけだ。

 この「キヅアト」という曲が秀逸で、聴く者の琴線にもっとも触れることができるのは、きっと誰もが1つや2つは持っている心の傷に、直接触れてくる感覚があるからだろう。心の傷というのは、触れられればその時の痛みがよみがえって疼き、時には膿が吹き出して傷口が広がってしまうことさえもある。たいていの人ならば、誰も触れることのできないように、胸の奥に鍵をかけてしまっているものだが、温詞はサビで、〈深くえぐって そのついでにいっそ記憶も奪ってよ〉と歌っている。すでに経験して知ってしまった痛みを、引きずり出して追体験することほど辛いことはない。しかし、それ以上の痛みを覚悟してまでも、その傷に触れてほしいと願う相手とは、その人にとって一体どれほど大きな存在なのか。過去に痛みを経験したことがある人ならば、きっと想像するだけで涙が溢れてくるだろう。

センチミリメンタル 「死んでしまいたい、」 MUSIC VIDEO

 センチミリメンタルが昨年発表した「死んでしまいたい、」という曲には、〈いま僕が抱いているこの矛盾の数々こそが僕のすべて〉という歌詞が出てくる。同曲は、死んだほうが楽だと思えるほどの痛みを抱えながら、それでも生きたいと願う人間の本能や性を歌った。愛を知ってしまった人は、どんなに苦しくても、生きることを選ぶようにできているーー人はそれを“狂気の沙汰”と呼ぶかもしれない。『ギヴン』にも「真冬の声は、狂気で凶器だ」という立夏のセリフが出てくる。愛と狂気は、紙一重なのだ。そしてその矛盾が、数々のドラマを生んできた。センチミリメンタルの歌には、そのドラマがある。人間としての矛盾を孕んだ温詞の言葉と歌声は、まさしく“凶器”だと言える。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

■リリース情報
「キヅアト」
7月12日(金)から各音楽サイトで配信

■アニメ情報
TVアニメ『ギヴン』
7月11日よりフジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜24:55 放送開始 ほか各局でも放送 
FODにて独占配信
※初回放送は、7月11日(木)25時10分スタート、FODは 25時40分スタート
※放送日時は変更となる場合あり。
原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」連載中)
監督:山口ひかる
シリーズ構成:綾奈ゆにこ
キャラクターデザイン/総作画監督:大沢美奈 
美術設定:綱頭瑛子
美術監督:本田光平
色彩設計:加口大朗
撮影監督:芹澤直樹
撮影監督補佐:中川せな
CG監督:水野朋也
編集:伊藤利恵
音響監督:菊田浩巳
音楽:未知瑠
アニメーションプロデューサー:比嘉勇二/秋田信人
アニメーション制作:Lerche
オープニング・テーマ :「キヅアト」 センチミリメンタル
エンディング・テーマ :「まるつけ」 ギヴン

<CAST>
佐藤真冬:矢野奨吾/上ノ山立夏:内田雄馬/中山春樹:中澤まさとも/梶 秋彦:江口拓也
村田雨月:浅沼晋太郎/鹿島 柊:今井文也
公式サイト
公式Twitter

■関連リンク
Twitter
Instagram
公式サイト