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劇団EXILE秋山真太郎が小説家デビュー! “活字嫌い”が作家になったいきさつを語る

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秋山真太劇団EXILEの秋山真太郎郎

劇団EXILEの秋山真太郎の処女小説『一年で、一番君に遠い日。』が7月11日に発売された。EXILEをはじめ、多くのメンバーが所属し、多彩な活躍を見せるLDHにおいて初の“小説家”誕生である。驚くべきは秋山が、もともと作家を目指していたわけでもなく、それどころか執筆を始める3年ほど前まで、本を読む習慣もほぼなかったという点だ! “活字嫌い”だった男がなぜむさぼるように本を読み始め、自身でも執筆するに至ったのか? 創作の経緯に迫る。

秋山が執筆したのは、短編小説よりもさらに短い、掌編小説と呼ばれる短い物語。以前からショートムービーの脚本を書くなどしてきたが、小説に関しては「書こうとも思わなかったし、自分に書けるとも思っていなかった」という。だが、さまざまな編集者との出会い、そして彼らの言葉に背中を押された。

「いろんな編集者の方とお会いする機会があったんですが、どの方も口を揃えて“面白いかどうかを自分で勝手に決めないでくれ。そこは自分たちが判断するから。とにかく、何か書いたら見せてくれ”とおっしゃるんですね。そう言われるうちに“書いてみようかな?”、“自分でも何か書けるんじゃないか?”と思い始めて(笑)。書いたそばから恥も外聞も捨てて、編集者に送るようにしました」

もうひとつ、彼に自信を植え付けたのが、2015年より開催され、彼が第1回のアンバサダーを務めた公募の文学賞、ショートショート大賞でのこと。

「実はそこに自作を10編ほど応募していて、そのうちの1編が約8千の応募作の中から最終候補(27編)に残ったんです。アンバサダーを務めており、コネに見えるんじゃないかということで、名前は伏せて選考していただいたんですが、最終候補まで残ったことは大きな自信になりました」

そこから3年にわたって少しずつ作品を書きため、そのうちの20編を1冊にまとめたのが今回の小説集である。それぞれの物語の時代やシチュエーションはさまざまだが、いつのまにか異世界への落とし穴、ファンタジーの領域へと迷い込んでいく様子が綴られる。

「全くゼロから作った物語もありますが、ほとんどの作品は僕の実体験が基になっていて、そこから(ファンタジー要素を)加筆、創作していくという作り方をしています」とのこと。それもあって、冒頭の『食うか食われるかのドブの底で』をはじめ、演劇や芸能界を舞台にした作品も多い。

ちなみに表題作の『一年で、一番君に遠い日。』はもともと、この掌編小説集のタイトルとして「何かちょっとカッコいい言葉を……と思って(笑)」先にタイトルだけを考えたもので、そこから物語を編んだという。七夕(7月7日)の織姫と彦星の物語などをモチーフに、七夕の翌日を“一年で、一番君に遠い日”としているのだが、7月8日は秋山の誕生日でもある。「僕自身、ずっと7月8日生まれであることがイヤだったんです。なんで七夕みたいなオシャレな日じゃないんだ?って(笑)。その思いを回収したいと思って書きました」と明かす。

いまや、俳優、タレント、ミュージシャンなど、小説を書く芸能人は珍しくはないが、ごく最近まで本を読むことも好きじゃなかったという者がいきなり小説を書き始めるというのは稀だろう。

「子供の頃、本を読むのは宿題の読書感想文のときくらいで、カフカの『変身』を薄いからという理由で選んだり……。20歳で東京に出てきて俳優を始めたけど、舞台で毎日200ページもある台本に向き合っていて、それから家に帰ってさらに活字を読もうなんて気にはなれなかったです」

だが、1冊の小説との出会いが、結果的に彼の人生をも変えた。

「ちょうど同じ時期に別々のふたりの人に司馬遼太郎さんの『峠』を勧められたんです。文庫で上中下あって“いや、これ読めるのか? 俺”と思ったんですけど、読めちゃって、メチャクチャ面白かった! あ、俺、小説読めるんだって思って、そのタイミングで又吉(直樹)さんが『火花』で芥川賞を獲って、そこでそのときの芥川賞、直木賞、本屋大賞受賞作を全部読んでみて、ショートショート大賞の審査委員長の田丸雅智さんと知り合ったことでショートショートも読むようになって……。それからここ数年、ジャンルを問わずに年に100冊くらい読んでいます。最近読んだものでは辻村深月さんの『かがみの孤城』、それから真藤順丈さんが沖縄問題を描いた直木賞作『宝島』が圧倒的に面白かったですね」

むさぼるように読み始め、そして自ら書くようになって改めて感じたのが“日本語の美しさ”とその中に含まれる“情報量”だった。

「文章で画(イメージ)を想像させるというのが映像作品にはない本の魅力ですよね。それこそほんの数ページ、数行に映画の2時間に匹敵するような情報が詰まっていたりする」

もうひとつ、これまで深く意識してこなかった、自らの心の内の“原風景”ともいうべき存在にも気づかされた。

「僕は長崎出身なんですけど、これまでそのことをそこまで意識することはなかったんです。ただ、今回の作品にも(戦争を題材にした『風をさがしてる』など)メッセージ性の強い作品が多いですよね。それは長崎で受けてきた(原爆に関する)教育や培ってきたものがあるからだと思います」

作家、脚本家、プロデューサー、そして俳優……“肩書”にはこだわらない。

「単純にクリエイトするのが好きなんです。長めの小説も書いてみたいし、今回の作品を実写化やアニメ化もしてみたい。まあ、1作書き終えるごとに、次の作品を書く自信なんてなくなっちゃうんですけどね……」

30代の半ばを過ぎ、表現者としての野望は広がるばかりだ。

取材・文:黒豆直樹 撮影:稲澤朝博



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