坂元裕二ら推薦、女子高生と元犯罪者の触れ合い描く短編「触れたつもりで」上映
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「触れたつもりで」
東京の池袋シネマ・ロサが贈る「新人監督特集上映」の1本として、短編「触れたつもりで」が8月4日から10日に上映される。
黒沢清や諏訪敦彦が監督領域の教授を、坂元裕二が脚本領域の教授を務める東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻で制作された本作。「向こうの家」の西川達郎が監督を、川原杏奈が脚本を手がけた。劇中では、女子高生・ももが元犯罪者という噂のある男・由之と出会う。互いに傷を持つことから心を通わせていく2人だったが、ある事件の共犯者になってしまう。「バウムちゃんねる映画祭」の大田恵里圭、「湯を沸かすほどの熱い愛」の泉光典、「赤色彗星倶楽部」の櫻井保幸らがキャストに名を連ねた。
本作の公開にあたり、坂元は「見たいものだけを見ることが生きる術とされる世界で、この人たちは見たくないものばかり見ていて、それはそれで何やら満たされている。そんな、妙に幸福感を覚えるラストでした」と、諏訪は「私とあなたは同じ一つの景色を見れるのだろうか? それが可能に思える瞬間に、世界は壊れ、はなればなれになってしまう。絶望と希望の狭間にあるその儚さの(つまり映画の)味わいが確かにそこにある」とコメントを寄せた。
特集では本作とともに、西川の過去作「ゼンラレジスタンス」と川原の監督作「がらんどう」も併映。連日20時30分から上映を行い、舞台挨拶やトークショーの実施も予定している。また「新人監督特集上映」では、今後「終末の獣たち」「大橋隆行監督特集」「さくらになる」と週替わりでプログラムを展開していく。
坂元裕二 コメント
見たいものだけを見ることが生きる術とされる世界で、この人たちは見たくないものばかり見ていて、それはそれで何やら満たされている。そんな、妙に幸福感を覚えるラストでした。
古厩智之 コメント
閉じこめられている。
ピアノ屋で、家で、不穏な通奏低音が響く中、強くそう感じる。
ふたりがピアノを弾くシーン。
その閉じこめられた部屋で、奏でられる2台のピアノ。
背を向けたままで、互いの顔も見ずに、だけど通じ合う。
あぁ、そうかと思う。
「テーマを絵にしよう」という強い意志。それがこの映画を美しくしている。
車がクラッシュする「トンネルの出口」。
時空を越え、「現在と過去がつながる幻視」。
「緑の中、罪を背負ったままカーブを曲がり消えていく男」。
映画であることの喜び。それは運動体そのものになりたい意志が見えてくることなんだなぁ。
幻視を現前させようとしていて、興奮しました。
諏訪敦彦 コメント
私とあなたは同じ一つの景色を見れるのだろうか? それが可能に思える瞬間に、世界は壊れ、はなればなれになってしまう。絶望と希望の狭間にあるその儚さの(つまり映画の)味わいが確かにそこにある。
(c)東京藝術大学大学院映像研究科