ジェシカが語る、LAで学んだ表現とクリエイティブへの挑戦「日本と海外の架け橋になりたい」
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ジェシカが、8月7日21時からオンエアの『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演。「トリオ THE ワールドワイドな女」というテーマでトークする。ジェシカは、LAを拠点にダンサー、モデル、振付師として活躍中。これまでにケイティ・ペリーやP!NK、T-Painなど数々のアーティストのバックダンサー、アワードショーに出演し、2013年には『JUSTE DEBOUT』の米国大会で優勝。日本人女性初のアメリカ代表として世界大会に出場した。2015年には、『So You Think You Can Dance』でファイナリストとなり、全米カナダツアーも経験した。日本では姉であるベッキーとメルカリのCMで共演したり、バラエティ番組にも出演し、世界規模で活躍の幅を広げている。今回リアルサウンドでは、来日タイミングでジェシカにインタビュー。これまでの経歴からアメリカでのダンスの経験、日本のダンスシーンの変化や表現で大切にしていること、これからの挑戦について語ってもらった。(編集部)
ダンスは心
ーージェシカさんが17歳の時にダンスと出会ったきっかけを教えてください。
ジェシカ:昔からテレビに出ているアーティストさん達をよく見ていて、「いいな、私も踊りたいな」という夢はあったんですけど、どうしたらダンスを習えるかさえ全然知らなくて。17歳の時に友達が「ダンスのクラスを受けにいくんだけど一緒に行かない?」って誘ってくれたことがきっかけです。ダンスにジャンルがあることも知らなくて、初めてのクラスがブレイキンのクラスだったんですけど、自分にはこれじゃないな、と思って(笑)そこから色んなジャンルや先生を知って開拓していきました。
ーーテレビでよく見ていたのは誰のパフォーマンスでしたか?
ジェシカ:安室奈美恵さんとか、MAXさんとか、KinKi Kidsさん、あとSPEEDの(新垣)仁絵ちゃんはずっと見ていました。かっこいいですよね。
ーー最初に自分に当てはまったダンスのジャンルは何だったんですか?
ジェシカ:やっぱりヒップホップですね。教えていたのが黒人の先生で、英語の歌詞に合わせて振り付けしてるのを見て「かっこいい!」と思って。私はハーフですが当時はそんなに英語が喋れなくて、ダンスをきっかけに初めて英語も勉強するようになりました。
ーー21歳の時にLAに拠点を移したんですよね。ダンスを始めてから4年で思い切ったのはなぜですか?
ジェシカ:当時の私は週に1本か2本クラスを受けているだけで「私はダンサー」だと思っていたんですよ。習っていたダンススクールで18歳から4年間発表会に出演して、21歳の発表会の時にアメリカから来ていたショータイムという先生が特別に作品を作るということで、オーディション制でその作品に参加できる機会があったんですね。他の作品はお金を払えば誰でも踊れるんですけど、それに関してはちゃんとしたオーディションがあって、受けてみたら通ったんです。合格者の中で私が唯一英語を少しだけ喋れたのでアシスタントにつくことができて。そこで初めてアメリカの仕事やリハーサルの仕方、振付や表現力を直に学んで、「発表会終わったらアメリカに行こう」とその時に思いましたね。
ーーLAでダンスに挑戦したいと思ったんですか。
ジェシカ:4年目の発表会の時に自分がセンターに置かれることがあって、少し調子に乗ってたんですね。「結構いいところにいってんじゃん」って。だけどアメリカに行ったらクラスで一番下手くそだったんですよ。レベルが全然違って。「趣味でダンスやってるの私」とか「看護師なんだけど、エクササイズで踊りたいし」って言ってる子の方が振り覚えがめちゃめちゃ早くて。その子たちより全然だめで、始めは落ち込みましたね。そのころは毎日7クラスぐらいあって、朝から晩までスタジオにいました。
ーーストイックですね。
ジェシカ:でもそれぐらいのペースでやってたので上手くなるのは早くて、自分でも「あれ? 1カ月前にはできなかったけど簡単にできるな」とか、感覚の掴み方がちょっとよくなってきたりとか。
ーーその頃にはすでに仕事もしていたのですか。
ジェシカ:全然です。まずはじめは観光ビザで、学生ビザに切り替えて、事務所のオーディションに3回目で受かったんですが、事務所とサイン契約した時に、「じゃあビザ取ってくださいね、スポンサーになりますから」と言われて。そこからビザを取るために半年間資料を集めて過去の経歴を見せて「私アメリカに残るべき人材ですよ」というのを証明しなきゃいけないんです。お母さんに電話して、ファッションショーやモデルをした時の写真やインタビューも全部出してもらって。
ーー経歴が必要なんですね。
ジェシカ:そうですね。だから、本当に才能がある子でも過去の経歴がないと一旦日本に帰ってきて経歴を積んで、そのペーパーワークがあった上でビザを取らなきゃいけないから大変なんです。才能だけでいけるわけじゃないんですよね。
ーー海外に行って勉強するのが一番の近道なのにそれができない。
ジェシカ:そう。すぐに働けないとか。可哀想ですよね。
ーー普段のLAでの生活でインスピレーションを受けることはありますか?
ジェシカ:やっぱりダンスかな。プロの世界だけ見ているよりも、街でサルサクラブに出かけた時に、一般の人がシンプルなステップをこなして楽しそうに踊っている瞬間とか見ると、楽しさとかピュアな気持ちが届くのって一番大事だなって思いますね。結局、ダンスは心なんですよね。あと、自己表現がとてもオープンなので、私自身の性格ももっとオープンになりました。日本に住んでる間は、合わせなきゃ、波を立てないようにしなきゃと思うことも多くて、それに染まってしまっていたと思うんですよ。だけどLAだとみんな自分のことが大好きすぎて、誰も私のことをジャッジしないし、気にもしてないのが嬉しくて。日本だと「太ったでしょ」「痩せた?」「疲れてる?」なんて言葉もよく聞いていたんですが、向こうなんて少し太ったぐらいじゃ何ともなくて。渡米は21歳でしたが、当時は周りに比べられるたりジャッジされることに対して毎回怯えていたので、それがなくなったのは大きなステップでしたね。
ーーLAの生活の中でのもっとも大きな転機は?
ジェシカ:拠点を移したことが大きいけど、一つ挙げるなら9年越しの夢だった『So You Think You Can Dance』に受かった時ですかね。日本から渡った時にテレビのショーを見て出ようと決めたものの、翌年そのオーディションの一次審査で落とされて、「私は本当にダンスが上手くないんだなって今日思った、やめたほうがいいのかもしれない」ってすごく落ち込みました。そこから毎年オーディションの情報は聞いていたのですが、「まだ準備ができていない」「まだ怖い、こんなんじゃまた一次審査で落とされる」って。だけど9年経った時にエド・シーランの「Thinking Out Loud」が流れてきて、「この曲めっちゃいい、こういう曲でこういう振りを夢だったテレビのショーで踊れたらどんなに幸せかな」ってふとオーディションのことが頭をよぎって、調べたら3日後にオーディションがあったんです。「これ見ちゃったからにはもうやらなきゃダメだよな」と覚悟を決めました。その時も「絶対受からない、そんな甘くない」とは思いましたが、どんどんトップに近づいていってとうとう受かったんです。夢って叶うんだと思いました。
振付をどんどんしていきたい
ーー『アメリカズ・ゴット・タレント』(公開オーディションのリアリティ番組)での活躍や多数のアーティストのMVにも出演していますが、『Juste Debout 2013』(2ON2で勝負を決めるストリートダンスの世界大会)での優勝がとても印象的でした。出演の経緯を教えてください。
ジェシカ:パートナーのComfortが「『Juste Debout』出ようと思うんだけど、一緒にやらない?」って言ってくれて。彼女とヒップホップ部門に参戦して、違う子とハウスの部門に参戦したんです。私本当はハウスの方が得意なんですよ。だけどハウスでは予選落ちして「ちぇっ」とか思っていたんですが、ヒップホップで予選通って、「あれ? また通った、勝ち進んでいっちゃってる」と思っているうちに決勝まで進んでいました。
ーー渡米する前からLAではコンテストに出るという目標を持っていたんですか?
ジェシカ:全然ないです。私はバックダンサーやコマーシャル、ツアーやミュージックビデオのお仕事をメインでするのが目標だったのですが、仕事が入らない時にクラスを受けたりフリースタイルの練習をして、それをどこで発散するかっていったらバトルしかないから、「ちょっと試しに行こうかな」という気持ちもあってたまに出ていました。実力を試すためだったので、できればやりたくなかったですけど(笑)、やらなきゃいけない、これに誘われたってことはやるべきだと言い聞かせてました。
ーー優勝したことへの周りの反響も大きかったですか。
ジェシカ:姉(ベッキー)からたまたま電話がかかってきて。「今ニューヨークにいるんだけどバトルで勝って」って言ったら、「へー、そうなんだ。おめでとう」とだけ言われて電話を終えたんです。その後姉が私のことをTwitterで、「妹が何かの大会で勝ったらしい」って一言ツイートしたんです。そしたら誰かがそれを調べて、「え? ベッキーの妹『Juste Debout』のイベントで勝ったの?」みたいな感じでニュースになっていたので私もびっくりしました。
ーーベッキーさんとは『メルカリ』のCMで共演していますよね。お二人とも自然体で素敵でしたが、共演してみた感想は?
ジェシカ:「日本で仕事してるな、この人」と思いました。私はアメリカから来た女なんだなっていう温度差は感じます(笑)。すごくしっかりしているし、「ジェシカそこに足は乗せない」とか、「ジェシカそれはやっちゃいけない」って注意されて「すいません」って謝ることは多々あります(笑)。
ーー普段から連絡はよく取っているんですか。
ジェシカ:結構取ってますね。移動中にFaceTimeをします。「何してるの?」とか「何食べてるの?」とか本当どうでもいい話ですけど(笑)。あと、姉が落ちたら私がサポートするし、私が落ちたら姉がサポートする。お互いにアドバイスをし合ったりもしますね。
ーー海外と日本のダンスシーンで違いを感じることはありますか?
ジェシカ:全然違いますね。日本でリハーサルをしたら10人がパッと同じ動きをすぐできるけど、アメリカだと10人の動きを合わせるのに少し時間がかかります。でもその代わり一人ひとりの個性が爆発的に出てるから、見ていて楽しい。完璧にみんなが同じ踊りをすればいいわけではなく、やっぱり自分のアイデンティティを光らせながら皆で踊る方が、私はエンターテインメント的には好きだなと思いました。
ーージェシカさんの周りには日本人のダンサーも多い?
ジェシカ:結構いますね。日本人の子達は私もアシスタントについてもらう機会も多くて、自分がサブミッションで振付をする時は自然と日本人の子に聞いてしまいます。時間通りに来るし、頼んだら絶対仕事をこなしてくれるという安心感もあるし。日本人への信頼感がすごいです。アメリカでもリスペクトされているし。
ーーここ日本でも授業にダンスが取り入れられるようになるなど、10年ほどでダンスに対しての注目度が上がっています。ジェシカさんの渡米前と比べて日本のダンスシーンに変化は見られますか?
ジェシカ:変わっていると思います。昔よりもっと個性を出していいんだって思ってる人たちが多くなってる気はしますね。でも、日本で教える時に反応があまりないので、教えてて「え? 伝わってる? 私今1人で喋ってる?」っていう瞬間がよくありますね(笑)。「わかりましたか?」って言っても「誰かが言うでしょ」みたいな空気になる。以前ワークショップの時に来てくれた子に対して「この子私の振り好きじゃなかったのかな」と思ったことがあったんです。みんなが欲しかったものを私があげられなかったのは悲しいけどしょうがないって自分に言い聞かせようとしていました。そしたら終わった後に一人ひとりに挨拶している時に、その子が「今日めっちゃよかったです」って言ってて。「え? そっち? めっちゃ響いてたんじゃん」って(笑)。もうちょっとわかりやすく楽しんでくれたらいいなぁと思います(笑)。
ーージェシカさんはプロのダンサーとして自分のスタイルをどういう風に突き詰めていこうと思っていますか。
ジェシカ:同じことをずっとやるのは楽しくないので、服装もすごくダボダボな格好で行く日もあれば、ワンピースを着て赤い口紅を塗りたい日もあって、私は自分のことをいろんな色に染まることができるカメレオンだと思っています。「Nice to meet you」って5回ぐらい同じ人に言われたことがあるんですが、毎回私が違う色を見せるから、覚えてくれないんだと思って。1色じゃなくて7色使いできるっていうのは自分の好きなところです。踊りに関しても、ヒップホップからラテンまで踊るし、男っぽいところから女性らしさを出したりもするし、でもそこでうまくミックスした融合したスタイルを出すことができるのが私の強みだと思っています。色んなジャンルをうまくバランス取りながらやるのは結構好きですね。
ーー社交ダンスも踊っていますよね。
ジェシカ:日本でも15年前に3カ月ぐらいかじっていたんですけど、アメリカに行ってバレエ、ジャズ、ポッピン、ロッキン、ハウス、ワッキンやサルサと色々なダンスを踊っていて。そのころに『So You Think You Can Dance』というテレビのショーに出演が決まった時にプロデューサーさんから「一番できないジャンルを練習しなさい」と言われて。その時にはほとんどのダンスを経験していたんですが、ラテンはかなり昔の話だから、もう一度やってみようと思ってクラスを受けたらそこではまっちゃって。できないことがあると、「なんでできないの? これどれぐらい練習したらできるの?」と、自分でどこまでできるか試したくなるので、ラテンもめちゃめちゃ練習してましたね。
ーー『人生が変わる 1分間の深イイ話』(日本テレビ系)出演時にはオレグ・アスタコフさんと踊っていました。
ジェシカ:喧嘩ばっかりしてましたよね(笑)。気が強すぎるんですよ、私。的確に、明確に動きたいタイプなので、ふわっとされると「いやそれじゃあダメでしょ」という風になってしまうんです。でも彼から学んだのは、その瞬間に対応する能力が大切だということです。全てを計画通りにやるダンスはやっぱり見ていて楽しくないし。だから、そこで彼がやることに対して私がどう対応するかっていうのを実は試されていて。その時は一瞬ムカつくんですけど(笑)、でも後々考えたらいい練習だし、いい学びだなって思います。
ーーダンスで影響を受けた人についても聞かせてください。
ジェシカ:日本で習っていた時のショータイム先生、『Juste Debout』でパートナーだったComfort、あとトニー・バジル先生ですね。75歳なんですけど、踊る踊る。トニー先生は心から楽しんで踊る姿に影響を受けました。それに、75年の人生が詰まった踊りをするので、彼女の人生観がすごく伝わってくるんです。『So You Think You Can Dance』のオーディションを受けた時、ジャッジの方に「あなたトニー・バジルを思わせる踊りをするね」って言われたんですよ。「私の先生なんです」って返したんですけど、やっぱり踊りじゃなくて彼女のエネルギーを私も自然とキャッチしていたんだなと思って、面白かったです。
ーージェシカさんのダンスも、明るくてエネルギーに満ち溢れていますよね。自分のダンスを見せる時に「こういうことは表現したい、伝わればいいな」と思っていることはありますか?
ジェシカ:細かいことはないんですが、その瞬間感じてる自分のエネルギーをそのまま外に放つっていう感覚ですね。自分が踊っている間に何を考えてるかはわからないですけど、とにかくその瞬間を届けています。
ーーダンスが嫌だなと思うこともありますか。
ジェシカ:オーディションに受からなかったり、自分の踊りができなかったりとか、こんなに練習してもこの動きができないとか、そういうのは全然あります。でも、そうじゃないとできた時の喜びはないというのを分かっているし、練習が大好きだから楽しいし辞められないんです。
ーー練習は自分との戦いですもんね。
ジェシカ:人前でできなかった時の悔しさや恥ずかしさももちろんたくさん経験してきましたが、そんな時の“失敗貯金箱”が私の頭の中にあるんです。これが満タンになったら、いいことあるぜ〜! みたいな。「よし、今失敗した。よし、また恥ずかしかった」という風に、失敗したらどんどん頭の中でコインを貯めていって、「これが貯まったら大きい仕事が決まる」と思うようにしています。
ーー今後、挑戦したいことは何ですか?
ジェシカ:振付をどんどんしていきたいです。もちろん自分が出るのも好きですけど、自分のビジョンをもっと絵にしていきたいなと思っています。みんなが現場でクリエイションしていく場にいるのがすごく好きなので、そういう機会がもっと増えていったらいいなと思います。
ーー今後も日本とアメリカを行き来しながら。
ジェシカ:そうですね。これからも日本と海外の架け橋になりたいです。海外で実力をつけて結果を出して、それで一皮剥けた自分になって日本に帰って来て、自分の吸収したことを浸透させる。そのインプットとアウトプットを続けていきたいですね。
ーー振付するにあたって気をつけていることや意識してることは何ですか?
ジェシカ:その人の良い部分が見えて、みんなが輝けるような見せ方ができることが一番大事だと思います。みんなが楽しくて嬉しい気持ちで帰って行ってほしいけど、チャレンジ心もその中に30%はあるから、うまいバランスを常に考えるようにしています。あとは空気感も私はすごく大切にしていて。ピリッとした現場の方がもしかしたらクリエイティブになれるかもしれないけど、私はまず心のドアをオープンにして、ハートとハートでぶつかりたい。その意思疎通を大事にしていきたいです。
(取材・文=神人未稀/写真=池村隆司)
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