OL升野たちが空想トーク「架空OL日記」更衣室に潜入、カットかからず即興の掛け合い
ステージ
ニュース

映画「架空OL日記」より。左から山田真歩演じる酒木さん、臼田あさ美演じる小峰様、夏帆演じるマキちゃん、バカリズム演じる“私”、佐藤玲演じるサエちゃん。
バカリズムが脚本を手がけ、主演を務める映画「架空OL日記」が2020年、公開へ。お笑いナタリーでは6月末に行われた更衣室シーンの撮影現場に潜入し、バカリズムと監督の住田崇に話を聞いた。
撮影されていたのは物語の舞台となる「みさと銀行」の更衣室で升野=私(バカリズム)と同期のマキちゃん(夏帆)、先輩の小峰様(臼田あさ美)と酒木さん(山田真歩)、後輩のサエちゃん(佐藤玲)が仕事開始前に雑談している場面。月曜の憂鬱さをマイルにして貯めたら海外旅行できるんじゃないか、と絵空事を描いて現実逃避している。
行き先候補の話し合いで盛り上がる一連のやり取りは、もちろん流れやおおまかなセリフは決まっているものの、キャストに委ねられる部分も多い。タヒチを勧める酒木さん役の山田はテイクごとに異なることを言い、バカリズムたちから自然な反応を引き出す。そんな山田にバカリズムが鋭くツッコミを入れ、反対に山田を笑わせるひと幕も。住田監督は笑いながら彼らの掛け合いを見守り、台本上の会話が終わってもすぐにカットをかけようとはしない。
バカリズムが「控室も一緒で、空き時間もしゃべってるから同じ空気感、同じ関係性で本番もやれている」と撮影の感触を語るように、みさと銀行の同僚5人はカメラが回っていない間も劇中そのままに他愛ない雑談を続けていた。ドラマ版の第1話が放送されるまでは、特別なことが何も起こらないこの世界観にキャスト一同、不安を覚えていたというが、視聴者からの反響を受けて「これでいいんだ」と納得。“OL”を演じるのではなく、「バカリズムの升野英知という男がOLの世界に入ったらこう振る舞うだろう」という想像から外れない言動を心がけているからこそ、バカリズムも違和感なく彼女たちに溶け込んでいる。唯一の決まりごとは一人称を「私」と言うこと。演技について監督に厳しくダメ出しされるようなことはなく、ときおり「俺」と口が滑ってNGを出すくらいだとバカリズムは笑う。
ひっそりと更新していたブログが書籍化、ドラマ化、そして映画化されたことについて、バカリズムは改めて「夢が叶ったというか『ここまで来たか!』っていう感覚です」と感慨深げ。だからといって映画版ではしゃぐことはなく、「ただあの世界観を大きいスクリーンに映すだけ、という感じになれば」と“ブログを実写化する”ことに徹するのみだ。心に残るメッセージ、壮大なラストを期待している層がいるとしても「そういう人たちは切り捨てていこうと思います(笑)」とブレず、「日記を書いている人間からしたら別に劇場で公開されることを想定してないですからね」と「私」の気持ちを代弁してみせた。
現場でも確認できた、即興で繰り広げられる“余白の会話”が本作の魅力の1つ。バカリズムは「だって、カットがかからなかったら続けるしかないですから」と苦笑いするが、住田監督は「みなさんにいろいろしゃべってもらったものを編集所に持ち込んで、それを再構築して差し込んでいくやり方はドラマ版と同じ。そのほうがみなさんのよさが出る」とその意図を語っている。
(c)2020「架空OL日記」製作委員会