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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『アド・アストラ』

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リアルサウンド

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は好きな太陽系惑星は金星の宮川が『アド・アストラ』をプッシュします。

参考:ブラッド・ピットが月でカーチェイス 『アド・アストラ』本編映像公開

 現在公開中のクエンティン・タランティーノ監督最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、スタントマンのクリフ・ブース役でその肉体美を惜しげもなく披露し、50代半ばとは思えない若々しさを見せつけたブラッド・ピット。1カ月も経たないうちに公開される新たな主演作『アド・アストラ』では、アロハシャツを着てキャデラック・ドゥビルを乗り回していたあのカッコいい姿からは一変、孤独で終始悲壮感が漂う宇宙飛行士ロイ・マクブライドを演じ、異なる魅力を見せつけている。

 ラテン語で「星の彼方へ」という意味を持つ本作『アド・アストラ』では、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で消息を絶つも、ある秘密を抱えながら生きていた宇宙科学者の父クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)の謎を追い、息子である宇宙飛行士のロイ・マクブライドが、人類の未来を賭けて、彼の救出に挑む模様が描かれる。

 これまでのSF映画では観たことがないような映像表現がふんだんに盛り込まれ、SF映画として新たな境地に達しているとも言える本作だが、特筆すべきは、その優れた脚本にある。テレビシリーズ『FRINGE/フリンジ』を手がけたイーサン・グロスを共同脚本に迎え、本作の脚本・監督を務めたのは、『アンダーカヴァー』『エヴァの告白』のジェームズ・グレイ。残念ながら日本では「未体験ゾーンの映画たち2018」での限定的な上映となってしまった前作『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』は、アマゾンの奥地に失われた古代都市の遺跡があると信じ続けた、実在の探検家パーシー・フォーセットの不屈の信念と探索への情熱を描いたアドベンチャー映画の傑作だったが、そんな前作にも通じる1人の男の姿が、まるでSF映画とは思えないような語り口でゆっくりと綴られていく。

 映画評論サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家と観客の間で評価が割れている(tomatometer 81%、Audience Score 57%)が、本作はまさにそういう映画だと言える。壮大なSF映画を期待して観に行くと、ブラッド・ピット演じる主人公ロイ・マクブライドの悲壮感漂うモノローグや、なかなか進まない宇宙空間での展開に、眠気を感じてしまうかもしれない。だが、宇宙空間という壮大なフィールドで、親子の関係性というパーソナルな問題を描くという一貫した方向性が、この作品の価値をより強固なものにしている。

 先の述べたように、ジェームズ・グレイは前作『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』が日本では限定公開となり、『エヴァの告白』の前に手がけた『トゥー・ラバーズ』に至っては日本劇場未公開となるなど、日本では不遇の作家となってしまったが、本作『アド・アストラ』で正当に評価されることを願ってやまない。このような意欲的で挑戦的な作品が、20世紀フォックスというスタジオから世に出ることの意味も非常に大きいと言えるだろう。(リアルサウンド編集部)