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綾野ましろが明かす、『Arch Angel』で表現したシンガーとしての決意「最終的に戦う相手は自分」

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 デビューから数々のアニメ主題歌を担当し、儚さとシャープさを併せ持つ歌声で数多のリスナーをとりこにしてきたシンガー・綾野ましろ。まもなく迎えるデビュー5周年を前に、待望の2ndアルバム『Arch Angel』をリリースする。約3年ぶりのフルアルバムとなる本作には、『Re:CREATORS』や『グランクレスト戦記』などのアニメ主題歌はもちろん、自作詞曲を含む新曲も多数収録。自身の内面にも肉薄しつつ、1枚のアルバムという物語と作り上げた。そんな本作の全体像や新曲はもちろん、前作からの3年間の振り返りなど、彼女自身の言葉でたっぷり語ってもらった。(須永兼次)

「アニソンが“音を楽しむ”っていうところで国同士をつないでくれている」

ーー『Arch Angel』は前作から3年ぶりのフルアルバムですが、今作までの期間はどんな期間でしたか?

綾野ましろ(以下、綾野):アニメのテーマソングにも携わりながら、ライブをたくさんやった2~3年だったと思います。海外のイベントにもたくさん出させていただいて、そのときにしかないアツさや海外ならではの緊張感を感じたり……すごく楽しくて充実していて、あっという間の3年間でした。

ーー海外のお客さんは、国内と反応が違うところはありますか?

綾野:海外ではあまり馴染みがないのか、握手会とかサイン会では男女問わずシャイだったのが意外でした。でも逆に、ライブ中のノリ方は似てますね。日本語なのに歌詞を覚えて歌ってくれたり、しっかり楽曲を聴き込んでくれてるのがわかるんですよ。その光景から、たとえ言語が違ってもアニソンが“音を楽しむ”っていうところで国同士をつないでくれているなと感じられるのが、うれしいし楽しいです。

ーーなるほど。似たところ・違うところ両方がある。

綾野:そうなんです。それに、たとえばアメリカに行くと、「ライブを楽しんでいる」っていう感じがひしひしと伝わるんですよ。おかげで自分のリミッターも外れて、いつも以上に声が出たり、みんなに呼びかけたりしちゃうんですよね。MCも、単語単位で簡単な英語を覚えていったりもするんですけど、どうしても何か言いたいときには日本語でもいいからまず喋って、「何か言っている」っていうことを伝えるようになったんです。そういう積極性は、この3年というかデビューからの5年間ですごく増えました。

ーーもちろん、国内でもワンマンライブやツアーも開催されています。そのステージ上からの景色で感じたことや、お客さんの反応で刺激になったことなどはありましたか?

綾野:自分自身が「こういうふうに楽しもうよ」とみんなを先導する部分もあるんですけど、たとえばファンの方が歌詞を覚えて一緒に歌ってくれたり、ライブをやるごとにその曲の定着を感じるんですよね。それに私自身が支えられることもすごく増えて。だからこそ、逆に「引っ張っていきたいな」というときの気合いも大きくなってきています。

ーーそのライブでの姿、様々な機会で拝見するたびにかっこよさが増していますし、歌声のエネルギッシュさもどんどんプラスされていっているようにも感じます。何か「こういうふうになりたい」という明確な理想像があるのでしょうか?

綾野:元々運動をたくさんやっていたので、そこで培った体力が活かされてるのかもしれないですけど……(笑)。でも、昔からロックをすごく聴いていたので、そういうところで触れたかっこいい女性像を常に思い浮かべながら、ライブでの歌やMC、グッズのデザインまでこだわりながらやっています。あと、ここ数年は衣装の形の関係もあって、腹筋をたくさん鍛えたりしてますね。お腹が見えちゃう衣装が多かったので(笑)。

ーー聴かせるこだわり・魅せるこだわりの両方が、どんどん増してきている。

綾野:そうですね。でも、今後出そうとまだ心の中にためているものもあります。それを「ここだ」と思ったときに出せるよう、今は順序立てて実現させていっているような感じですね。

「“考える”ことが、やんちゃだった子供から少し大人になっていく第一歩」

ーー今回のアルバム『Arch Angel』のタイトルやコンセプトは、どのようにして決まったんでしょう?

綾野:チームみんなで話し合っていくなかで自然と“天使”がコンセプトになっていって。それで「白いイメージは外せないな」ということで衣装を真っ白にしました。“Arch Angel”は天使の階級の1つで“大天使”を指したものです。一曲一曲が天使であり、みなさんの感情に触れることのできる楽曲を作りたくて、いろいろな角度の歌詞やサウンドを作っていきました。

ーーなぜ天使を選ばれたんですか?

綾野:小さい頃に「天使になりたい」と思っていたぐらい、昔から天使とか翼というものの存在が自分の中ではすごく大きかったんです。でも結局今は普通の人間なので、だったらいっそテーマを天使にしてしまおうと思って(笑)。音楽で表現しました。

ーー8曲目の「Unleash」から終盤にかけては、特にそのタイトルとの親和性の高い流れになっているように感じました。曲順も、やはり一枚の物語になるということをかなり意識されましたか?

綾野:そうですね。ただ単純にできた順番に並べるとかではなく、物語を思い浮かべてもらえるようなものになっていればいいなと思います。

ーーでは、今回の新曲について楽曲順にお聞かせください。まずオシャレなロックナンバー「TRUE KISS」では、yukaricoさんと共作で作詞も手がけられていますが、どんな世界を形作ろうと思われたのでしょうか?

綾野ましろ 『TRUE KISS』リリックビデオ・YouTube Edit

綾野:今までは基本的に自分と戦っていたり、アニメの世界観に沿っていたりする歌詞が多かったんですけど、この曲ではそこからちょっと離れまして。今まであまり歌ってこなかった、男女の恋愛の駆け引きみたいなものを歌詞にしたいなと思ったんです。駆け引きをして強がりながらもお互い大好きっていう二人がかわいらしいんじゃないかなと思って、妄想しながら書いてました(笑)。

ーーAメロの歌詞のカギカッコの位置がだんだん斜めにズレていっている点も、非常に気になりました。

綾野:そのカギカッコの位置は、この曲の登場人物二人の心の距離感を表しているんですよ。yukaricoさんの曲って、今までも歌詞カードでのギミックみたいなものが多かったんですけど、今回もこだわってレイアウトしていただきました。

ーーレコーディングで歌ってみて、いかがでしたか?

綾野:同じフレーズがよく出てくるんですが、そこでの表情を変えるというのが勉強になりました。たとえば繰り返し出てくる〈キュンと〉っていう言葉を同じように歌うのではなく、感情をグッと入れてみたり、かわいらしく歌ったりといろんなパターンで歌わせてもらって。しかもそれが、どれもその場で「あ、なんかいいねぇ」ってなったんですよ。今まであまり書いたことがない方向性の歌詞での歌声で褒められたので、うれしかったです(笑)。

ーー続いて、先ほど話題に出たミドルナンバー「Unleash」です。この曲はおひとりで歌詞を手がけられていますね。

綾野ましろ 『Unleash』リリックビデオ・YouTube Edit

綾野:はい。タイトルは「解き放つ」という意味がある言葉なんですけど、自分自身の内面にある、抱えていたくない感情を鳥にたとえまして。サビに出てくる鳥を“FEEL”という名前にして、最後はその感情を受け入れることで自由にしてあげられたら……という気持ちの流れを歌詞にしました。

ーーそのサビのサウンドからは、光が差し込んでくるような印象も受けたのですが。

綾野:そうですね。ただ、だからといって明るく歌って終わるというふうにはしていなくて。「囲われたなか、ひとりきりで動けない」という寂しさも描いた曲なので、あえて歌声は切ないままで、最後まで歌っていきました。あと、私の楽曲の中では起承転結がすごく大きい部類に入る曲で、物語として進んでいくようなものになっているんですけど、その一瞬というか一日ぐらいの短い時間を切り取りたかったんです。なのであまり機微をつけず、ぽつぽつと出てくる言葉に淡々とメロディをつけるように歌っています。

ーーそして「caelum」は明るいポップロックではありますが、歌詞にはファンタジックさもあって。〈マーメイド〉や〈気泡(あわ)となる声〉というフレーズもあるので、人魚姫をテーマにしているようにも感じたのですが。

綾野ましろ 『caelum』リリックビデオ・YouTube Edit

綾野:いや、実はこの曲の歌詞は、自分の実体験を絵本を描くように伝えられればと思って書いたんです。何も考えなくても目標に思い切り飛び込んでいけていた、無敵だった時期があったのに、誰かの目を気にするようになったりビジョンを描くようになるとうまくいかなくなってしまったこともあって……。

ーーまわりに合わせて自分の行動を変に意識してしまって、できていたことができなくなったもどかしさというか。

綾野:はい。それに今でも私、たまに悩みごとがあるときに走り方を忘れちゃうことがあるんです。それって頭の中が整理整頓されてなくて考えすぎちゃうからだと思うんですけど、その“考える”っていうことが、やんちゃだった子供から少し大人になっていく第一歩だったのかなと思うんです。それで、サウンドとすごく合っているように感じたので、この子供と大人の狭間の頃の思い出を書くことに決めました。なので、水の中から見える空の青さのイメージから“天空”という意味のある言葉をタイトルに、歌詞にしていったんです。それを歌えたことで、またひとつ自分も大人になれたような気がしています。

「歌手としてのオールマイティさは、これからも突き詰めていきたい」

ーーそしてアルバムのラストを飾るのも新曲。タイトルチューン「アークエンジェル」です。

綾野ましろ 『アークエンジェル』 -MUSIC VIDEO- YouTube Edit

綾野:この曲の歌詞はRUCCAさんが書いてくださったんですが、自分自身が空の上から人々の流れを見下ろしながらも、それでいてすごくそっとふわっと寄り添うような世界観のものになっています。

ーーそういったテーマで歌詞を書いてもらったのは、なぜですか?

綾野:「自分が弱かったり、何かに対して向き合うときに怖さを感じちゃうことって、ダメなことではないんだよ」ということを、聴いてくださる方と一緒に共感したかったからです。私デビュー当時から「頑張ってね」って言ったり言われたりするのが、ちょっと苦手だったんですよ。それは、「まぁ頑張って」って軽いノリで言っちゃうことで傷つく人がいるかもしれないと思って、私自身が言いたくないからだったんです。だからよくライブのMCや文章を書くときには、「才能の乏しい人も、たえず努力すれば、やがて才能のある者と肩を並べることが出来る」という意味を持つ「駑馬十駕(どばじゅうが)」を使うようになりました。そういった意味合いのメッセージをこの曲には込めていただきました。

ーー相手を限定しすぎていないので、誰もが受け取れる曲になっていると思います。

綾野 そうですね。“アークエンジェルさん”が、本当に天界から見下ろしてるような(笑)。私もこの歌をうたうときは、アークエンジェルになった気持ちで歌えればと思います。

ーーレコーディングのときも、実際そんな気持ちでしたか?

綾野:いや、レコーディングでは感情を抑えるのがすごく大変でした。今まで私の曲ってアップテンポで勢いのいいものが多かったので、1コーラス目のサビからガーッて歌いたくなっちゃったんです。でも、この曲の1番はぐっとこらえたいなと思っていたので、そこからの声の使い方とか、ナチュラルに音量を上げていく感じに注意しながら歌っていきました。

ーーこの曲も、ライブなどで歌う機会が増えてくると思います。

綾野:レコーディングのときから難しさを感じていましたし、シンプルに声とピアノが中心になる曲なので、ライブで歌うのは緊張しそうですね。でも基本的に、歌っているというよりは言葉を置いていくようなイメージで歌わせていただいたので……ライブでも優しい気持ちで歌って、しっかりみんなに伝えられればと思います。

ーー今作を振り返って、楽曲制作への携わり方には何か変化はありましたか?

綾野:ありました。特に今回は新曲のうち3曲で作詞をやらせていただりと、より音楽の制作に関わっているという実感がありましたね。それは今回の新曲だけじゃなくて、これまで発表してきた曲でも徐々にやってきたことなんですけれども。

ーーということは、アニメ主題歌もありますけど、ご自身の「こういう曲歌いたい!」というものも詰まっている。

綾野:はい。もちろん「頑なに」っていうわけではないんですけれども、やはり自分で納得ができるものでないとみんなに自信を持って発信できないし、それでは責任もないなと思うので。それに、歌詞を書いてても楽しいですし、できあがった自分の曲を一日中聴いてても飽きないときもあるし……次は11月に開催するワンマンライブ(『綾野ましろ LIVE 2019 「ARCH」』)に向けてもたくさん覚えなきゃいけないことがあるので、頑張りたいです。

ーー新曲はもちろんですけど、そのライブのなかで何をやるかも形作って覚えなきゃいけないですからね。

綾野:そうなんです。最近のライブでは、いわゆる本編とというかアンコール前までの一連のなかで盛り上がる瞬間を意図的に作るんですけど、曲が増えたことによってまた新しいセットリストの組み方ができそうだと思っています。ミディアム曲とバラード曲も増えたので、メリハリのきいたライブにしたいですね。

ーーワンマンライブはもちろん、国内外を問わずライブイベントの出演も続いていきます。

綾野:海外でのライブイベントって、同じレーベルのアーティストさんとも一緒になったりして、ライブ前には「楽しんでねー」みたいに声をかけあったり一緒にごはん食べたりもするんですけど、5周年イヤーに入ってからイベントに出ると自分の立ち位置については結構考えます。後輩ができながらも、先輩もいらっしゃるという状況なので。

ーー今の立ち位置や、今後なりたい姿などを考える機会にもなる。

綾野:はい。「このマイペースな感じは、なかなか変わんないのかなぁ」とは思っちゃうんですけど(笑)、「ライブだけはキメたいな」って思いますね。フェスとかで初めて観てくれた方にも、「普段はちょっと変わったことを言ってるけど、あの人のライブってすごい」って思ってもらえるように。

ーーそれは今後10年、15年と活動を続けていくなかでも、変わらずにいたいところ。

綾野:そうですね。小さい頃から負けず嫌いなところがあったんですけど、歌って勝ち負けではないじゃないですか。表現の世界って終わりが見えないものだと思うので、最終的に戦う相手は自分になっていくと思うんですよね。そのなかでも、やっぱり持ち味のハイトーンを活かした激しいライブパフォーマンスもみせたいし、一方でバラードのような曲もちゃんと歌いこなせる存在でもいたい。なので、歌手としてのオールマイティさは、これからも突き詰めていきたいですね。

(取材・文=須永兼次)

■リリース情報
2ndアルバム 『Arch Angel』
【完全生産限定盤】 7,000円(+税)
CD+Blu-ray(MV映像)+ Tシャツ + フォトブック 
【初回生産限定盤】4,000円(+税)
CD+Blu-ray(LIVE映像) 
【通常盤】3,000円(+税)
CDのみ 
<CD収録内容>
01 pixy breath
02 NEWLOOK(TVアニメ「Re:CREATORS」 エンディングテーマ)
03 confession
04 MATROSKA
05 TRUE KISS(※新曲)
06 衝動(TVアニメ「グランクレスト戦記」 2期エンディングテーマ)
07 starry(TVアニメ「グランクレスト戦記」 1期オープニングテーマ)
08 Unleash(※新曲)
09 ANGEL HORIZON
10 caelum(※新曲)
11 GET OVER(TVアニメ「パズドラ」エンディングテーマ)
12 アークエンジェル(※新曲)

<完全生産限定盤Blu-ray 収録内容>(ミュージックビデオを収録)
01 NEWLOOK -Music Video-
02 starry -Music Video-
03 衝動 -Music Video-
04 GET OVER -Music Video-
05 confession -Music Video-

<初回生産限定盤Blu-ray 収録内容>(ライブ映像を収録)
公演:綾野ましろ One-man Live 2018「YOUR WORLD」
(2018.11.03 @マイナビBLITZ赤坂 )
01 OPENING
02 衝動
03 starry
04 NEWLOOK
05 MATROSKA
06 ideal white

■ワンマンライブ情報
『綾野ましろ LIVE 2019 「ARCH」』(ヨミ:アヤノマシロ ライブ 2019 アーク)
日時:2019年11月16日(土)・17日(日)
※詳細は後日発表

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