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FUKIが新曲「オリオン」を通して見つけた、“自分らしい歌”

音楽

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リアルサウンド

 恋愛にまつわる記念日を毎月ピックアップし、そこに寄り添ったラブソングを12カ月連続で配信リリースしていくという、女性アーティスト初となるプロジェクト「12 Sweet Stories」を展開中のFUKI。第5弾となる「オリオン」は、“告白デー”にインスパイアを受けて制作した楽曲で、9月17日に配信リリースされた。今回のインタビューでは、「オリオン」のレコーディングで気づいた自身の歌の特徴などの制作の話を軸に、この夏の思い出、夏の終わりに聴きたい曲など豊富な話題を語ってもらった。(編集部)

自分の中で変わってきたところがある 

ーー今年のFUKIさんはどんな夏を過ごしましたか?

FUKI:これまでの人生の中で一番海に行かなかった夏でしたね。長い梅雨が明けたと思ったら、ものすごいスピードで終わっていった気がします。夏前にはいろいろプライベートの計画を立ててたんですよ。ビアガーデンには絶対行こう、キャンプでBBQしよう、今年は海だけじゃなく川にも行くぞ、みたいな感じで。でも結局、ほとんどクリアできずで(笑)。

ーー「12 Sweet Stories」プロジェクトが進行中ですからね。忙しかったでしょうし。

FUKI:そうなんですよね。楽曲制作とかレコーディングがいっぱいあって。お盆にちょっとだけお休みをいただけたんですけけど、今年は「体力を温存しとこう」みたいな感じになってしまったという(笑)。今までだったら休みがあればすぐさま海に行ってたんですけどね。でも音楽活動が充実してるのはすごくありがたいことなので。

ーー事前に立てた計画で実現できたものもあったんですか?

FUKI:海には1回だけ行きました。ほんとはちょっと遠出して伊豆の方まで行きたかったんですけど、時間がなかったのでいつもの逗子に。あと、フェスに行くという計画も実現しました。サマソニ(『SUMMER SONIC 2019』)の東京1日目に行ったんですけど。

ーー台風の影響でBEACH STAGEのライブは中止されましたよね。

FUKI:そうなんです! 私はBEACH STAGEが大好きで、そこでHYさんと秦基博さんを観るのを楽しみにしてたんですよ。でもあえなくキャンセルになってしまって、来た意味……みたいな(笑)。SNOW PATROLとかリタ・オラ、The 1975が観れたのは良かったんですけど、ちょっと悔しさは残っちゃいましたね。

ーー今年はFUKIさんもいくつかイベントに参加されていましたよね。

FUKI:8月に海でのライブが2回くらいありましたね。広い海を眺めながら歌うのはやっぱり気持ちいいなって思いました。素に戻れるような感覚になれるのも楽しいし。1本はデビュー前からお世話になってるOTODAMA(『音霊OTODAMA SEA STUDIO 2019』)だったんですけど、私が出る日は朝から強風で雨がザーザーだったんですよ。でもたくさんの方が観に来てくださっていたのですごくうれしかったですね。今年も出れて良かった(笑)。

ーー忙しい中、それぞれの活動をすごく楽しんでいるようですよね。ブログには、昔よりもよく笑っている、楽しいと書かれていましたし。

FUKI:確かにそうなんですよ。なんか最近、人生が楽しくなりました(笑)。

ーーって言われると、これまではどうだったんだって思っちゃいますけど(笑)。

FUKI:あははは。そうですよね、それはヤバい(笑)。私は元々ネガティブで心配性なんですけど、最近はすごく前向きになってきてるってことなんですよね。「12 Sweet Stories」をスタートさせたことも影響しているとは思うんだけど、今はほんとに人生が楽しい。そう思えたのは保育園時代ぶりですよ(笑)。だいぶ久しぶりの人生楽しい時期です。

ーーそうなれた理由ってなんだと思います?

FUKI:人とよくコミュニケーションを取るようになったからだと思います。Twitterとかラジオ、あとは週1でやってるLINE LIVEとかでファンのみんなの声を聞いたり、直接やり取りしたりすることで、ちょっと自分の中で変わってきたところがあって。元々は人見知りだし、知らない人としゃべることは基本苦手なんですよ。でも今はそれが逆にパワーになっているというか。ほんとに楽しいんですよね。これはシンガーとしてはもちろん、1人の人間としてもすごく大きな変化だと思っております。

ーーその変化は今後、楽曲にも影響を与えることがあるのかもしれないですよね。

FUKI:そうかもしれないですね。今までは基本的に自分の中だけで作っていたけど、いろんな人とのコミュニケーションを受けて世界が広がっていきそうな感じはします。

ーーでは、新曲のお話を。12カ月連続配信リリースの第5弾となる「オリオン」。今回は9月17日の“告白デー”にインスパイアされた楽曲ですね。

FUKI:“告白デー”は韓国で制定された記念日なんですけど、この日に告白して付き合ったカップルは、12月25日のクリスマスに100日目を迎えることができるんですよ。私はあんまり“〇〇記念日”みたいなことを意識しないけど(笑)、これはちょっと素敵かなって思いますね。だから今、片想いしてる人はぜひこの「オリオン」をもって告白してほしいなって思います。

ーー楽曲制作はいかがでしたか? 4曲作ったけどOKが出なかったからもう1曲作らなきゃいけない、と前回のインタビュー時に話していましたが。

FUKI:けっこういろんなテイストのものを4曲作ったんですけど、「ちょっと“告白デー”には合わないかもね」っていうことになって。まあでもそれはまた別のタイミングに出すこともできると思ったから、前回のインタビューの後にすぐ新たな曲の制作に取り掛かって。そこはすごくポジティブな気持ちで向き合えましたね。

ーー歌詞では、好きな人に対してまだ伝えられていない胸の内の思いが切なく綴られています。

FUKI:最初はもうちょっと明るい、ハッピーな告白ソングにしようと思っていたんですよ。でもリリース日が夏の終わりのタイミングだから、寂しさや切なさを表現したほうがいいかもねっていうことになって。結果、言いたいけど言えない心の中の気持ちをせつなく書いていくことにしました。今回は、告白というテーマはもちろん、季節感をけっこう意識したところはありましたね。

ーー作詞の方向性が固まってからはスムーズに進みました?

FUKI:うん、そうですね。具体的なシチュエーションの描写をふんだんに盛り込んだAメロBメロはさらさら書けて。で、サビに関してはメロもそんなに難しい感じではないから、歌詞でもわかりやすい言葉を使うことを意識しました。あえてオーソドックスな言葉選び、表現をすることで聴いてくれる人の耳にも残りやすいと思ったし、AメロBメロとの差もつけられるんじゃないかなって。その狙いの効果なのか、ラジオでオンエアしたときに今までで一番反響が多かったんですよね。それがうれしかったです。

FUKI – オリオン (Music Video)

より自分の素を出せた 

ーータイトルにもなっている“オリオン”というモチーフを使ったのはどうしてだったんですか? オリオン座は冬の星座として知られていますよね。

FUKI:夏とか秋にも見えるらしいんですけど、一般的には冬の星座ってことになっていますもんね。でも、オリオン座って夜空でパッと見つけやすいから子供の頃からすごく身近に感じていたし、好きな人とのシチュエーションにも登場しやすいじゃないですか。「あのとき一緒にオリオン座を見たな」「オリオン座を見るとあの人を思い出すな」とか。だから今回は夏の終わりを意識した曲だけど、あえて使うことにしたんです。実際できあがった歌詞を見てみると“オリオン”というワードはすごく目立つし、いいフックになったなって思いますね。

ーー歌詞には〈真っ白にこの街が染まる頃 二人は何をしてるかな?〉というフレーズがあって。少し先の未来、冬の自分たちのことにも思いをはせているから、そこで冬の星座である“オリオン”というワードが効いてくる感じもありますよね。

FUKI:うんうん。そのフレーズが入った2番のAメロが個人的に一番気に入ってるんですよ。私はいつも「今が大事」っていう気持ちで曲作りをしているけど、恋をしてると少し先の未来を考えてしまうことって絶対あるじゃないですか。「明日一緒に帰れるかな」とか「クリスマスは一緒にいられるかな」とか。特に夏の終わりにはそういうことをより考えがちだと思うし。なので今回はそういった要素を絶対入れたいなって思ってたんですよね。

ーー素敵な歌詞だと思います。ちなみに、この「オリオン」のジャケ写でFUKIさんが着ているTシャツに「UNION」と書かれているのには何か理由があるんですか?

FUKI:それみんなに突っ込まれますね(笑)。これは狙ったわけじゃないんですよ。気づいたら、「あ、“オリオン”と“ユニオン”似てるね」っていう。偶然です(笑)。

ーー了解です(笑)。歌のレコーディングに関してはいかがでしたか?

FUKI:今回の制作はほんとにギリギリだったんですよ。曲を書いてからトラックダウンまでに5日くらいしかなかったから、もう「ヒーッ!」って感じで(笑)。メロディと歌詞がカラダの中に入りきらないままでのレコーディングだからけっこう不安でしたね。でも自信がないまま歌うとそれは声に出てしまうから、その状況を楽しみつつ、めっちゃ集中力を高めて臨みました。

ーー平メロは言葉数がけっこう詰まっていて、低いトーンのボーカルになっていますね。

FUKI:はい。AメロBメロでは好きな人との思い出を振り返って懐かしんでいる歌詞になっているので、独り言をつぶやくように歌いましたね。自分の中でしゃべりながら回想しているというか。キーは低いけど、表現の部分ではすごく歌いやすかったです。

ーーそしてサビでは心の中の思いがパッと弾けるようなボーカルになっていて。メロディに込められたせつなさをFUKIさんのボーカルがより増幅させてくれています。

FUKI:あーうれしい。ありがとうございます。確かに今回のサビのメロディはいいものが書けたなっていう実感はあって。ただ、そこまで大きな起伏があるわけじゃないから、普通に歌ってるだけだと感情の感じられない歌い方になってしまう難しさがあるんですよ。

ーー7月に配信された「Long Distance」と同様の難しさですか。

FUKI:そうそう、まさに(笑)。今回も怒られながら歌いました。「そんな歌い方だと何の感情も届いてこないぞ」って。メロディ自体はAメロBメロより全然歌いやすいはずなんですけどね。メロディが完全にカラダに入りきっていなかったのもあって、かなり表現に関しては悩みました。ただ、時間がなかったことでより自分の素を出せたところもあった気がするんですよ。いろいろ考えはしたけど、結果的には相手に対して言いたいけど言えない思いを爆発させるようなイメージでストレートに力強く歌ったテイクが採用になったので。

ーー歌詞の世界観にバッチリはまったボーカルだと思います。

FUKI:自然とそういうアプローチにはなったんですけど、できあがったものを聴いた時にはちょっと自分的に懐かしいニュアンスだなって思ったりもしたんですよね。デビュー曲の「キミじゃなきゃ」に近い雰囲気があるというか。「すごくいい曲になったな」って我ながら思いました(笑)。

ーーここ最近のFUKIさんは柔らかいボーカルを聴かせてくれることが多いけど、今回のサビのような強い声も大きな魅力としてデビュー時から持ち合わせていましたからね。

FUKI:そういう部分を久しぶりに出せたから懐かしく感じたんだと思います。Twitterなんかを見てると、「オリオン」の感想として「FUKIちゃんっぽいね」って言ってくれてる子がけっこう多くて。最初は「どこでそう感じてくれたのかな?」って思ってたけど、そういった声の表情の部分が影響してるのかもしれないですね。8月に出たOTODAMAでこの曲を歌った時に、「あ、こういう曲なんだな」「こう歌えばいいんだな」みたいなことがよりわかった実感もあって。なのでこれからまたライブで歌っていくのが楽しみです。

ーーこの曲をきっかけに告白人口がグッと跳ね上がるといいですよね。

FUKI:そうですね。もちろん実際に告白できたら一番ではあるけど、告白できない、相手へ伝えられない思いをこの曲を聴くことで消化してもらってもいいと思うんですよ。どうしても告白できない状況の人もきっといるだろうから。私自身、自分からは絶対告白なんてできないタイプなので、好きという感情が生むもどかしさを私と一緒に感じて欲しいです。もちろんね、この曲をもって告白して成功したよっていう報告もぜひお待ちしてます!

ーーこの曲の到着とともに今年の夏も終わろうとしていますが。夏好きなFUKIさんとしては今どんな気持ちですか?

FUKI:寂しいですよね。心が「うっ!」ってなる。でもね、そういう感覚になってる自分も好きなんですよ。ちょっと痛い感じですけど(笑)。

ーーいやでもその感覚もわかります。その寂しさに浸ってしまうというか。

FUKI:陽が短くなってすぐに暗くなってしまったりとか、まだ暑さもあるけどちょっとずつ過ごしやすくなってくる感じとか、そういう変化を感じながら帰り道に好きな音楽を聴くと最高なんですよね(笑)。「オリオン」もみんなにとってのそういう曲になってくれたらいいなあ。

ーーちなみにFUKIさんの中の夏の終わりにマッチするベストソングというと?

FUKI:えー! なんだろうな? 全然夏の終わりを歌った曲ではないんだけど、フジファブリックの「PRAYER」はすごく合いますね。大切な人との出会いを回想しながら、今を歌っている曲なんですけど、爽やかで、でもちょっと切ない感じが夏の終わりにピッタリで。これを帰り道に聴くと「ゾーッ!」ってなります(笑)。

ーー泣いてしまうってことですか?

FUKI:はい(笑)。でもその涙は悲しいわけではなく、“あったかせつない”からなんですよね。語彙力がなくてほんと申し訳ないですけど(笑)、すごくいい曲なのでみなさんも聴いてみてください。

ーーでは最後に、来月の“月刊FUKI”の予告をお願いします。

FUKI:はい。「12 Sweet Stories」の第6弾となる次回は、10月30日“初恋の日”をテーマにした曲になります。曲はこれから作ることになるんですけど、“初恋”にまつわる歌詞は自分的に得意なんじゃないかなとは思っていて。とりあえず9月中にビアガーデンに行って(笑)、いい曲を作りたいと思っておりますので楽しみにしていてください!

(取材・文=もりひでゆき/写真=竹内洋平)

「12 Sweet Stories」インタビュー

・第1弾「KISS.」
FUKIが語る「KISS.」への思いと12カ月連続リリースへの挑戦「大切なのはやっぱり“今”」
・第2弾「Our Love Story」
FUKIが語る、「Our Love Story」で得たものと「12 Sweet Stories」の充実
・第3弾「Long Distance」
FUKI、“遠距離恋愛”テーマの「Long Distance」で挑戦したこと「頑張る勇気を持ってもらえたら」
・第4弾『COVER FOR LOVERS VOL.1』
FUKI×TEE「12 Sweet Stories」特別対談 二人が語る「ベイビー・アイラブユー 」とラブソング観

■リリース情報
「オリオン」
発売:9月17日(火)
配信先はこちら

オフィシャルサイト