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佐藤隆太、“人生の教師”として序盤のキーパーソンに 『スカーレット』が貫く「意地と誇り」

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 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第8話では、喜美子(川島夕空)が柔道を習い始める。

参考:北村一輝が川島夕空をひっぱたく 『スカーレット』親子に引き継がれる「意地」の強さ

 第7話で、思わず喜美子をひっぱたいてしまった父・常治(北村一輝)。自分に代わって借金の肩代わりをした草間(佐藤隆太)に好意を返せないふがいなさを「女にはない意地や誇りが男にはあるんじゃ」と表現する。駆け落ち同然でマツ(富田靖子)と結婚した常治だが、父親ファーストな昭和のお父さんの顔が垣間見えた。

 これまでの放送では、喜美子が成長し、陶芸家として歩んでいくのに必要なヒントが随所に示されていた。ポンせんべいを買うお金がなくて、紙芝居を見ずに帰ってきたときのことを思い出し、「女にも意地と誇りはあるんじゃ!」と叫ぶ喜美子。昭和20年代という時代状況を考えると、10歳でこれを意識した喜美子はすごい。「意地と誇り」は、物語を貫くキーワードになっていく予感がする。唐突な言葉に大人たちはきょとんとするが、とりあえず喜美子の明るさに常治も救われる。

 喜美子の宣言に思うところがあったのか、草間は信楽の子どもたちに柔道を教えることに。喜美子だけでなく、信作(中村謙心)や照子(横溝菜帆)たちも草間の道場に入門する。実は、照子の戦死した兄は柔道をやっていた。「柔道を通して、本当のたくましさ、優しさ、強い人間とはどういう人間か。人を敬うことの大切さを学んでほしい」と語る草間は、まるで『スター・ウォーズ』のヨーダのようである。

 焼け出されて家のない人も多かったこの時代に居候じたいは珍しくないが、常治が連れてきた不思議な男・草間は、喜美子の人生に影響を与える物語序盤のキーパーソンになる。長女である喜美子にとっては年の離れた兄あるいはおじのようでもあり、主人公の葛藤を見抜いてすっと言葉を差し出す草間は、両親の愛情とは異なる人生の教師のような役割を担う。

 草間は大学を出ており、柔道の心得もあるいわゆるエリートだが、押しつけがましさのない存在感が絶妙だ。心を病んでいたと思われる描写もあったが、ありきたりなヒーロー像に押し込めず、喜美子たちの「心に栄養を与える」存在としてクローズアップされる。川原家にとっては思わぬ拾いものだった。義理と人情が行動原理の(それゆえ大儲けと縁がない)いかにも不器用な常治のキャラクターが、お金で代えられない縁を呼び込んだとも言える。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。