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w-inds.が初主催フェスを通して伝えた、ダンス&ボーカルグループの魅力と可能性

音楽

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リアルサウンド

 7月7日に開催された、w-inds.がプロデュースするダンス&ボーカルグループ中心のフェス『w-inds. Fes ADSR 2018 -Attitude Dance Sing Rhythm-』。これまでダンス&ボーカル系に強い事務所ごとの主催フェスや、男性グループに特化したa-nation『AsiaProgress』といったフェスは存在したが、事務所やレーベル、性別などもろもろの括りを取っ払ったダンス&ボーカル系フェスは、これが国内初の試みとなる。オープニングアクトのダンス&ボーカルバンド・BuZZに始まり、3ステージ計8時間超の熱いステージが繰り広げられたが、ここでは旗振り役であるw-inds.のステージと、w-inds.×出演アーティストによる“ADSR SPECIAL SESSION”コーナーを中心に振り返ってみたい。

(関連:w-inds.が『100』で追求した“ジャンルレスなポップス”「僕らが歩んできた道を表現できると思った」

 袖で他の出演アーティストたちが見守る中、アッパーな「Let’s get it on」(2012年)でスタートしたw-inds.のステージ。当日の出演アーティストでもありw-inds. crewにはおなじみのダンスクルー・GANMIのメンバーらを従えてのファンキーな「Boom Word Up」(2016年)など、のっけからダンサブルな楽曲を連発し、会場をぐいぐいヒートアップさせていく。そして会場の空気にやや緊張感が漂ったのは、その完成度の高さが話題となった橘慶太の初セルフプロデュース曲「We Don’t Need To Talk Anymore」(2017年)。w-inds.楽曲の中でも慶太のハイトーンが際立ち、カウントの細かさなどダンス面でも難易度が高いこの曲で、圧倒的な貫禄を見せ付けた3人。この曲やリリースしたばかりのアルバム『100』からの「Temporary」などはサビ部分に歌が入らずがっつりダンスを見せる構成であり、キャリアを重ねた彼らならではのステージングの妙や、今現在目指すスタイルが伝わるようで興味深かった。MCでは「ここ2年くらい、こういうフェスができないかずっと考えていて。今の日本のダンス&ボーカルグループにはこれだけ実力がある人たちがいるということを、今日のフェスからもっと発信していきたい」(慶太)と、興奮気味に語っていた。

 7曲目の「Paradox」(2001年)からは、“ADSR SPECIAL SESSION”コーナーへと突入。グループのステージではヒット曲「パラダイブ」などでオーディエンスを熱く盛り上げていたDa-iCEが同コーナーのトップバッターとして登場した。慶太が変声期を迎える前にリリースされたこの曲には、4オクターブの音域を誇る花村想太、大野雄大(ともにボーカル兼パフォーマー)もやや苦戦しているようだったが、w-inds.とは親交の深い工藤大輝(パフォーマー)らメンバー全員がキッズのような笑顔でパフォーマンスしていたのが印象的だった。曲を終えてのMCではDa-iCE側から「僕らは形から入るので……」(想太)と、当日の衣装が同曲MVの衣装をパロったものだと告白され、w-inds.も爆笑。

 続けて、朝ドラやミュージカルでも活躍し役者としても人気のYUYA(松下優也)率いるX4が登場。X4としてのステージでは、キャッチーな「声にしたなら」でのオーディエンスの大合唱も印象的だった4人。w-inds.とのコラボ曲「NEW PARADISE」(2002年)ではYUYAと、やはり歌唱力の高いKODAIがボーカル面をリードする形で参加していたが、さりげない動きからでも読み取れる彼らのダンススキルの高さも目を引いた。終演後、YUYAは興奮気味に下記のようにツイート。この共演が彼にとってどれだけ意味深いものだったかが伝わってくる。

 続いて登場したのは、w-inds.の事務所の後輩であるLead。この日はメインアクトのトップバッターとして出演し、ニューアルバム『MILESTONE』からのネオファンク・テイストなナンバーを中心にステージを展開。Leadはダンススキルの高さにも定評があるが、w-inds.とのコラボ曲「SUPER LOVER~I need you tonight~」(2003年)ではあえて踊らずに、2組でワイワイと楽曲を聴かせていた。Leadはデビュー当時にw-inds.のライブのオープニングアクトとして出演しており、長い付き合いでもあるこの2組のある意味戦友のような姿を、感慨深く見守っていたファンも多かったのではないだろうか。

 続けては、ORANGE RANGEのカバー「イケナイ太陽」などで会場を総立ちにさせたFlowBackが参戦。コラボ曲「約束のカケラ」(2005年)では、8人で円陣を作るような振りでしっかりチーム感を出していたりと、先輩格のw-inds.とのコラボでも堂々としたステージングを見せていた。「若くてエネルギーがあって、キャラクターから想像できないようなパフォーマンスを見せてくれる人たち」(緒方龍一)などとw-inds.3人もベタ褒めしていたが、楽曲から衣装やグッズまでを含めてセルフプロデュース志向の強い彼らはw-inds.とも共通点が多く、この日のコラボは非常に意味のあるものになったに違いない。

 この日は2組の女性グループが参加していたが、そのうちの1組、BananaLemonは昨年活動をスタートしたばかりの新鋭。しかし、リーダーのNADIAやもう1人のボーカル、SAARAHともに圧倒的にソウルフルな歌声の持ち主で、当日はアコギ1本をバックに歌ったクリスティーナ・アギレラのカバー「Beautiful」などでも注目を集めていた。w-inds.と共に披露した「LOVE IS THE GREATEST THING」(2007年)での歌声も最高にパワフルで、慶太も「なんだろう、あの上手さ!」と舌を巻いていたほど。慶太、NADIA、SAARAHが繰り広げるボーカルバトルのような白熱したパフォーマンスに、会場から大歓声が上がっていた。

 この日は実力派のニューカマーが多く、耳になじむメロディやボーカル3人の歌唱力の高さが際立ったTHE BEAT GARDENもその1組。フリーライブやイベント出演で鍛えたステージの盛り上げぶりにも定評があり、w-inds.と披露した「Love is message」(2003年)では会場をヒートアップさせつつ、初共演のw-inds.3人とメンバー全員がハグを交わしたりと明るいムードで、続くSOLIDEMOへとバトンを渡した。

 8人組と大所帯のSOLIDEMOは、グループでのステージでアカペラなども披露し、他の出演者とは一線を画すしっとり感でオーディエンスを魅了。w-inds.とのコラボ曲「四季」では、メンバー全員がw-inds. Tシャツを着て登場するという茶目っ気も見せつつ、w-inds.を加えた総勢11人で厚みのあるハーモニーを聴かせた。こういった趣向のパフォーマンスも、フェスならではの楽しみといえる。

 続いて登場したのが、今年デビューしたばかりの5人組・COLOR CREATION。ソウルフルなボーカルを聴かせるRIOSKEや、個性的なハイトーンの持ち主・KAZら、それぞれが非常に歌唱力の高いグループだ。グループ単独のステージでもかなりオーディエンスの注目を集めていたが、w-inds.と披露した「Forever Memories」(2001年のデビュー曲)では、透明感のある歌声で熱気あふれる会場に涼しげな風を呼び込んでいた。

 そしてこの日唯一、海外から参戦したのが韓国のMYNAME。グループとしてはしっとりと聴かせるバラードからバキバキに踊るダンスナンバーまで、振り幅のあるステージングで魅了。w-inds.とは以前から親交があるということで、コラボ曲「Long Road」(2003年)での泣きの歌いまわしには、w-inds.へのリスペクトを強く感じさせるものがあった。

 この日の出演アーティストには海外にルーツを持つ面々が多かったのだが、続けて登場したFAKYもアメリカやニュージーランドなどにルーツを持つメンバーを含む国際派ユニットだ。高いダンススキルや歌唱力でオーディエンスを驚かせたこの日のダークホースの1組でもあるが、w-inds.とのコラボ曲「Feel The Fate」(2001年)では初期w-inds.楽曲との親和性を感じさせるキュートなダンスやステージングで、フレッシュな魅力を振りまいていた。

 ここから「Again」(「We Don’t Need To Talk Anymore」C/W曲)など数曲を挟んでトリを飾ったのが、国内外から熱い注目を集めるダンスクルー・GANMI。w-inds.やLeadをはじめ、国内外のアーティストのバックダンサー/振付師としても活躍する19人組で、当日はサッカーのワールドカップ日本代表のユニフォームで踊りまくるなど、エンタメスピリッツ全開のステージを展開。w-inds.とはメンバーのkooouyaが振付を担当した「New World」(2009年)でコラボし、間奏ではスリリングなダンスバトルを見せるなど、お祭りらしい賑やかなステージでフェスが幕を閉じた。

 このほかに、スケジュールの都合でセッションは叶わなかったが、メンバーのSWAYがw-inds.の千葉涼平、龍一の後輩という縁で出演が決まったDOBERMAN INFINITYのステージも、「SAY YEAH!!」など夏らしさ全開の楽曲連発で白熱。House of Painのカバー「JUMP AROUND ∞」には、龍一、涼平やLeadの谷内伸也ら複数の出演者も飛び入り参加するという一幕も。

 「実力のある人たちとみんなで一緒にムーブメントを作っていきたい」「将来はアジアでもフェスを開催してみたい」(慶太)など、今後のさまざまな野望をコメントしていた3人。w-inds.がデビューからの18年で紡いできた曲たちがリリース時のトレンドの先端を走りつつも聴きやすく耳に残るものであること、ダンスにおける実験性やチャレンジングな姿勢、さらに現在アーティストとして脂ののってきている20代~アラサー世代への影響力の強さなども伝わってきて、非常に感慨深い一夜となった。ダンス&ボーカル系グループのファンは事務所やレーベルで箱推しするケースも多く見られ、ともすればその括りの中でガラパゴス化している印象もあるのだが、こういった開かれたフェスがシーンの新たな起爆剤となることを切に願っている。(古知屋ジュン)