『スター・ウォーズ』パルパティーン登場の意味とは? ダークサイドの歴史から考える
映画
ニュース

今年最大の注目作にして、物語の完結編となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)。監督のJ・J・エイブラムスが語っているように、この映画はアナキン、ルーク、そしてベン・ソロという、スカイウォーカーの一族による壮大な神話の最終章だ。『スター・ウォーズ/新たなる希望』(1977)から紡がれてきた、42年にわたる歴史が、終わりを迎えようとしている。監督の交代劇、レイア役キャリー・フィッシャーの急死など、さまざまなトラブルに見舞われたものの、制作は順調に進み、いよいよその全貌が明らかになろうとしている。
参考:『スター・ウォーズ』をJ・J・エイブラムスは救えるか!? エピソード9初映像から予想できること
今年の4月にシカゴで開催されたファンイベント「スター・ウォーズ・セブレーション」の会場で、今作のトレイラーが初公開された。それとともに、イアン・マクダーミドが演じるダース・シディアス/パルパティーン皇帝の復活が電撃的に発表された。予告編の最後に流れる不気味な高笑いは、紛れもなくシディアスの声である。
ファンの興奮が冷めやらぬ中、8月に公開されたトレイラー第2弾では、「Your journey nears its end.(お前の旅は……間もなく終わる)」という、シディアスの意味ありげな台詞も収録されている。ここでいう「Your(お前)」とは果たして誰を指しているのか。レイなのか、カイロ・レンか、はたまたルークのことだろうか。こうした考察もまた一興ではあるが、それはまた別の機会に。ここでは、『スター・ウォーズ』シリーズの最大のヴィランであるパルパティーンを紐解くことで、未だ全貌を明らかとしない『スカイウォーカーの夜明け』のベールを剥がしていきたい。
パルパティーンは『スター・ウォーズ/シスの復讐』(2005)の中で、アナキンに対して、シスの暗黒卿ダース・プレイガスの話をする。プレイガスはフォースを駆使し、ミディ=クロリアンを操ることで、死の淵にいる者を救うことができたのだと。そして、プレイガスはその知識のすべてを弟子に授けたという。しかし不幸なことに、プレイガスは弟子によって殺されてしまう。その弟子というは、何を隠そうパルパティーンのことである。シスは常に2人(師と弟子)で行動すべきというシスの古来の掟がある中、パルパティーンは眠っているプレイガスを殺害した。その後、パルパティーンはザブラク(という種族)のダース・モールを正式な弟子として迎え入れたのだ。
パルパティーンはシスの暗黒卿だったが、表では銀河共和国の元老院議員として内政に干渉していたので、シス帝国の再建という目標は極めて安易だった。パルパティーンはダース・モールを失ったあと、ドゥークー伯爵/ダース・ティラナスを、そしてアナキン・スカイウォーカーことダース・ベイダーを弟子とした。思い起こせば『スター・ウォーズ』というのは、常にスカイウォーカーとパルパティーンという、光と闇の戦いだったはずだ。ルークが主人公の最初の3部作では、父と息子、家族の物語を描いていたが、その裏では常にパルパティーンという悪の権化の存在があった。パルパティーンは、ルークにベイダーを殺させ、ルークを新たな弟子として迎え入れようとしたが、その企みは、ベイダーのライトサイドへの帰還をもって、無残にも打ち砕かれた。
奈落に落ちたパルパティーンは、死んだように見えたが、違ったようだ。『スカイウォーカーの夜明け』でパルパティーンはどのように登場するのか。実体のある者として登場するのか、もしくはフォースの霊体のような実体のない存在か。真実は分からないが、いずれにせよ今回の3部作も裏で暗躍しているのは、パルパティーンなのだろう。これで『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)でスノークがあっけなく死んだ理由も明白となった。さらに強力な悪であるパルパティーンが控えていたからだ。パルパティーンの復活がいつ頃から計画されていたのかは不明だが、監督のJ・J・エイブラムスいわく、「パルパティーンの再登場は不可避」だったそうだ。
前述の通り、『スター・ウォーズ』というのは、『新たなる希望』から『スカイウォーカーの夜明け』まで、スカイウォーカーとパルパティーンという一貫した善悪の関係性が貫かれている。であるならば、『スカイウォーカーの夜明け』の開始時点で、ライトセーバーを握るスカイウォーカーの末裔といえば、カイロ・レンだけである。これまでのお約束(スカイウォーカーとパルパティーンという対比)を考慮すると、ライトサイドに帰還したカイロ・レンが、パルパティーンと対峙することになるのだろうか。一部のファンの間では、レイがパルパティーンの末裔だとする見方もあるが、それが事実となれば、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)からずっと、スカイウォーカー(の末裔のカイロ・レン)対パルパティーン(の末裔のレイ)という構図が組み立てられていたこととなる。
話は戻るが、そもそもパルパティーンは、どのように復活を遂げるのか。フォースの霊体としてではなく、『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(1983)の時からずっと、生きていたとすれば……。前述の通り、パルパティーンの師であったプレイガスはフォースのすべてを探究し、死を克服する術を持ち合わせていた。その知識は、弟子のパルパティーンにも受け継がれている。これは、アナキンをダースサイドに惑わすための狂言である可能性も否定はできないが、これが事実であればパルパティーンは、プレイガスの知識を利用して、自らを死から救った、あるいは、さらなる弟子にこの術を伝授しており、その弟子がパルパティーンを蘇らせたのではないか、という可能性も否定しきれない。
これまでの映画作品を通じて、シスが霊体化した描写はないため、フォースの霊体として登場できるのはライトサイドに属するジェダイだけと予想される。いずれにせよ、次作で登場するパルパティーンは、霊体ではない別の形で登場することとなりそうだ。パルパティーンがこれまでそうしてきたように、レイをダースサイドに招き入れる可能性も否定はできない。というのも、トレイラー第2弾では、黒いローブに、赤く光るダブル・ライトセーバーを持った、暗黒面のレイが映し出されているからだ。
前作『最後のジェダイ』では、光と闇、そして、その中間を意味する“バランス”という言葉が印象的に用いられていた。とすると、レイは闇の部分も受け入れることで、ライトサイドの力とダークサイドの力の両方を会得し、光でも闇でもない中間に位置する存在、すなわち「フォースにバランスをもたらす存在」となるのか。であれば、監督のJ・J・エイブラムスが言うように、パルパティーンという最強のダークサイドの登場はサーガの完結編に必要不可欠であるといえるだろう。
■Hayato Otsuki
1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。