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『スカーレット』両親のエールを受け取る戸田恵梨香 でんぐり返しは舞台『放浪記』がモチーフ?

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リアルサウンド

 10月15日放送の連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第14話は、「一生懸命やる」がキーワードだった。

参考:『スカーレット』第15話では、喜美子(戸田恵梨香)が「女中として働かせて下さい」と嘆願する

 住み込みの女中をするために大阪にやってきた喜美子(戸田恵梨香)。はじめて自分の部屋ができたうれしさから、でんぐり返しをした勢いで隣室のふすまを倒してしまう。部屋には、新聞記者の庵堂ちや子(水野美紀)が寝ていた。互いの第一印象は、「若いなあ。どうせ続かんやろ」(ちや子)、「鼻の下にあるあれ、鼻くそちゃう?」(喜美子)と、優雅さとはほど遠いものだった。ユーモラスな出会いは、今後の2人の関係を予感させる。

 喜美子が女中として働く荒木荘は、遠縁の親戚にあたる荒木さだ(羽野晶紀)が経営するまかないつきの下宿。近所に住む元女中の大久保のぶ子(三林京子)が手伝いにやってくる。「うち、一生懸命働きます」という喜美子に、大久保は皿を3枚見せる。「この1枚は家族のために磨きます。この1枚は仕事やから磨きます。最後の1枚は、家族や仕事や関係なしに一生懸命心を込めて磨きます。どのお皿がきれいになるでしょうか?」。

 喜美子が指したのは最後の1枚。それに対して「みな同じや」と大久保。「一生懸命やったからって、人から見たらたいして変わらん」。そして「あんたみたいな若い子には無理や。信楽に帰り」と突き放す。スタートから挫折してしまった喜美子。最後にご飯をごちそうになるシーンで、悲しくてやりきれないけど、ご飯は美味しいという矛盾した感情がそのまま顔に出る喜美子は、生きざまが表現になるタイプの主人公だと思う。

 荷造りをしようとして開けたかばんに、母・マツ(富田靖子)の手紙と汚れた手ぬぐいが入っている。信楽の人たちが喜美子を応援してくれるのは、「がんばってるのを見てきたからや」と母。「どんなことでも、一生懸命やってたら誰かが見ててくれてるんやな」。手ぬぐいは、父・常治(北村一輝)のものだった。「臭うて腹立つさかい、負けるもんかと思うはずや」、「お父ちゃんの働いた汗の臭いです」。臭い手ぬぐいが手から離せない喜美子。第2週のテーマになった意地と誇りがしっかりとつながっている。

 大久保を演じる三林京子は、大阪出身の女優で落語家。連続テレビ小説は8作目の出演で、『カーネーション』(2012年)以来となる。三林の名付け親は、舞台『放浪記』の演出・脚本を手掛けた故・菊田一夫で、三林も同作に出演。喜びのあまりでんぐり返しをする演出は、故・森光子で有名になった『放浪記』の名物シーンである。さりげなく小ネタをしのばせるのは朝ドラならではだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。