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AUTO-MOD GENETが語る、日本でポジティブパンクを広めることの難しさ 「“化粧をする”っていう部分だけが率先された」

音楽

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リアルサウンド

 1980年に結成後、日本のポジティブパンクシーンを牽引していた一方で、演劇的表現などをいち早く取り入れたことから「日本のゴシックロックの元祖」また「ビジュアル系の元祖」とも言われているAUTO-MOD。そんな彼らが、11月13日にCD+DVD作品『祈り』を発売。なんとCD作品を発売するのは9年ぶりだ。アコーディオンの哀愁漂うシャンソンから一転、ビートの効いたポップパンクサウンドでバーストする「愛の讃歌」のカバーから始まり、アルバムを通して一つの映画を観ているかのような充実した意欲作になっている。

 今回は、AUTO-MODのフロントマン・GENETにインタビュー。アルバムにこめたメッセージや、今後GENETがAUTO-MODで発していきたいことなど話を聞くことができた。聞き手はハードコアパンクバンド・FORWARDのボーカリストとして活動しているライターのISHIYA氏だ。(編集部)

ゴスをやるために復活したわけではなかった

ーー『祈り』は、AUTO-MODとしては久しぶりのアルバムですよね。

GENET:そうだね。それまでは『Tokyo Dark Castle』っていうゴス(ゴシックロック)イベントを一生懸命やってた(笑)。

ーーAUTO-MODは1985年に解散してから1997年に再結成していますが、再結成した理由も聞いていいですか。

GENET:やっぱりバンドが辞めれなくてさ(笑)。バンドが復活した当時は、KornとかMarilyn MansonとかNine Inch Nailsがシーンに出てきてて、どのバンドもメタルのジャンルに含まれてたけど、こっちには全然メタルに聴こえなくて。「なんだこれ、みんなポジパンじゃねぇかよ。俺の時代じゃん」って(笑)。復活した理由の一つとしてそういう部分もあったかな。それが結果としてゴスっていう方向に流れていった。だから、俺がゴシックの世界を引っ張ってきたくせにこう言うのも変な話だけど、ゴスをやるために復活したわけではなかったんだよね。

ーーそうだったんですね。でも解散から再結成までの間は、様々な活動をされていましたよね。

GENET:解散後は、好きなことをいろいろやってみようと思ってた。ブルース系のハードロックみたいなGenetic Voodooもやったり、もっとポップなことをやってみようと思ってGENET & THE HIPSを始めたりした。でも結局「俺ってやっぱりAUTO-MODなのか…?」って思い知らされて、AUTO-MODみたいなパフォーマンスでいろんな音楽をやりたいと考えるようになった。それでGenet/Rock of RomanceでAUTO-MOD的な表現の封印を解いて……。でもそのときに周りに寄ってきたのはヴィジュアル系ばっかりだったな(笑)。元々“ヴィジュアルの元祖”みたいに言われていたし。こっちとしてはピンと来なかったけど(笑)。とはいえ、今のAUTO-MODメンバーはYUKINO(EX-ANS)も、HIKARU(JUSTY-NASTY)も、EBY(ZI:KILL)も、バリバリのヴィジュアル系バンドの経験者なんだけどね。

ーーでも、GENETさんがポジパンを広めたことで、ヴィジュアル系がシーンとして発展していったのだと思うのですが。

GENET:実際に、俺がポジパンを意識的に日本で流行らそうとしたところはある。もし俺が流行らせてなかったら、あっという間に無くなってたかもしれない。でも日本では、ポジパンの本来の音楽性とか精神性は広まらないまま、“化粧をする”っていう部分だけが率先された結果、独特の“ヴィジュアル系”として発展していったよね。

ーーたしかに。ゴシックに関してはいつ頃から意識するようになったんですか。

GENET:ちょうど21世紀に成る直前、ある外人から「ゴスイベントを一緒にやりましょう」って誘われたのがきっかけ。そこで俺のライブを見た観客が「これはゴスだ」って言うから「ポジパンって今のゴスなんだな」って。かなり違和感あったけど、やってることは変わらないから、まあ良いかと。でも俺はパンク上がりの人間だから、ファッションとか形式ありきというよりも社会に問題提起をしたいっていう気持ちはずっとあったんだけどね。とりあえず、21世紀の17年間は社会性を隠して、墓掘り音楽をやり続ける事になったよ。そんななかで、実は三年ほど前に、AUTO-MODの解散を考え出したころ、ちょうどTPP(環太平洋パートナーシップ協定)あたりから世界で起こっている諸問題、また日本の政治により関心を持つようになって、今のスタンス・陰謀論者なんてことになってしまったんだよ(笑)。

ーージュネさんは、サウンドやパフォーマンス、ルックスにしてもどこかにカテゴライズされる存在ではなかったですよね。

GENET:たしかに。でもさすがに17年間ゴスやってたのが、急にTwitterで政治的発信をし始めたんで、みんなに「ジュネどうしたんだ?」ってビックリされてさ(笑)。

今、ライブをやることで昔の曲が生きてくる

ーーライブでは解散前の楽曲も披露していたかと思いますが、楽曲への感じ方に変化はありますか?

GENET:当時は別の意識で作ってた曲だったのに、歌ってみると今の考えをまるっきり投影できるような歌詞になってることがある。たとえば「デストピア」だったら、“異端者たちのユートピアを作ろう”っていう意味があったのに、今の管理社会自体がまさに「デストピア」になってるし、「世紀末キャバレー」だったら、当時は“酒と薬に溺れ死んで行け”みたいな退廃ソングだったけど、今歌ってみると“貧困層は与えられた娯楽で飼いならされ、何の疑問もなく死んで行く”奴隷階層への曲になってる。今、ライブをやることで昔の曲が生きてくるんだよね。

ーージュネさんの詞は、直接的ではないからこそ時代を超えて別の意味も含むようになるのかもしれないですね。では、『祈り』はどのような意識で制作されたんですか?

GENET:このアルバムは、“世界の仕組み”みたいなつもりで作った。だから一発目は「愛の讃歌」(「Hymne à l’amour(愛の讃歌)」)なんだよ。だってもう、俺たちには何にもないじゃん。本当に0.1%の金持ちが、世界中の99.9%の富を握ってるのがこの世界だから。ほかの連中は富もなければ何もない。じゃあ愛しかないじゃん。だから、まず1曲目に「愛」を歌った。

ーーなるほど。2曲目「Halloween Song」は、タイトル通り“ハロウィン”をテーマにしていて面白いですね。

GENET:俺自身十何年もゴシックの連中を引き連れてハロウィンイベントをやってたけど、その“ハロウィン”自体何なのか知らないやつが多いんじゃないかと思ったんだよね。ハロウィンは、もともとケルト民族系のドルイド教のお祭りで、生贄の儀式があったり、今も日本でいうハロウィンとはまったく別のもの、秘密のサーウィンとして存在しているソサエティーがある。だからこの曲には、「ハロウィンってものには2つあるんだ。だから浮かれてる場合じゃねぇんだよ」っていうメッセージを込めたんだよね。

ーー隠された意味がある楽曲なんですね。

GENET:それで3曲目の「REAL WORLD (double faced society)」は、富を持つほんの一握りの人間が社会を動かしているんじゃないかって思って作った曲。今ではディープステートが世の中に出てくるようになったけど、実際は何を信用していいのかわからない。そんな社会の仕組みを歌ったマジな歌です。

ーーでは、4曲目の「Ave Maria」はどうでしょうか。

GENET:この曲は、戦争で本当のことを知らないまま多くの人たちの命が奪われていく様子を歌ってる。「本当は誰のために子供たちが殺されていってるのか?」「本当は誰が戦争やテロを仕掛けてるのか?」「宗教が本当に救ってくれるのか? 聖母よ、できるんだったら救ってくれ」っていうメッセージを込めた曲だね。

ーー4曲という曲数ながら、ひとつの映画を観たような濃密さがありますよね。

GENET:このアルバムを通して、俺が何のために音楽を続けてきたのかはっきり見えてきた。紆余曲折していろんな音楽をやりながらも、俺は自分自身のことをずっとパンクロッカーだと思ってる。だからこの作品は、これまでの活動の集大成になってるんじゃないかな。

ーー昔のAUTO-MODで発し続けていたメッセージが、今にも繋がっているように感じます。

GENET:昔は、空想の御託を並べてたけど、徐々に空想じゃなくなってきた。だから、俺は作品を作って発し続ける。今は、またパンクに戻れたっていう気がものすごくするんだよね。

ーーでは、今後もAUTO-MODとしての楽曲制作やライブ活動を積極的にしていくということ?

GENET:そうだね。ネタは尽きないよね。今は、自分の発するメッセージを時には笑わせたり怯えさせたりしながら、もっとエンターテインメントとして見せていきたいという思いがある。今年は12月13日に、年末恒例の『FREAKS OF THE LEGEND 2019』を高円寺Highでやって終わりだけど、来年はAUTO-MOD結成40年、当然ガンガンやることになりますね。もちろん次の音源もだしますよ。俺はパンクの連中ってやっぱ仲間だと思ってるし、そいつらが喜んでくれるんだったら絶対やれるって自負がある。今まで培ってきたいろんな引き出しを最大限に利用していきたい。来年の40周年メモリアルイヤー、盛大にやりたいね。

(取材・文=ISHIYA、写真=北村奈都樹)

■リリース情報
AUTO-MOD『祈り』
発売中
¥2,500(税込)
<CD収録曲>
1.Hymne a l’amour (Ai No Sanka)
2.Halloween Song
3.REAL WORLD (double faced society)
4.Ave Maria

<DVD収録曲>
1.時の葬列
2.マイクロチップ…首枷
3.Yapoo Domination
4.Ave Maria
5.Cannibal of Love
6.Hymne a l’amour (Ai No Sanka)
7.Deathtopia
8.Requiem

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