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変化する桜井日奈子 『殺カレ死カノ』『ヤヌスの鏡』で見せた、パブリックイメージとは真逆の役柄への挑戦

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リアルサウンド

 2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」でグランプリを獲得し、現在在籍する芸能事務所に所属し芸能活動をスタートした桜井日奈子。デビュー後は、大東建託の「いい部屋ネット」や、コロプラ「白猫プロジェクト」などのCMでみずみずしい表情や佇まいを披露すると、大きな反響を呼び、インターネット上では「岡山の奇跡」と称されることも。そんな彼女が、ここ最近ドラマや映画で大きな変化を見せている――。
 
 桜井を最初に取材したのは、ハリウッド作品『トランスフォーマー/最後の騎士王』で、イザベラ・モナー演じるヒロイン・イザベラの吹き替え声優を担当した2017年夏。当時すでに、桜井=“岡山の奇跡”という言葉が浸透し、CMで魅せる爽やかでキュートでホンワカなイメージが桜井のパブリックイメージとなっていた。そのことに関して「そのキャッチフレーズがあったからこそ、注目していただけた」と感謝を述べつつも「いつか桜井日奈子という名前で知ってもらえるようになりたい」と意欲を見せていた(参考:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170802-00000001-wordleafv-ent)。

【動画】『殺さない彼と死なない彼女』本予告

 その言葉通り、2018年は『ママレード・ボーイ』で映画初主演(吉沢亮とのダブル主演)を務めると、同年の『ういらぶ。』でもヒロインを演じ、2019年1月期には『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)では、連続ドラマで初めてのヒロインも担うなど大役が続いた。

 『ママレード・ボーイ』では元気で明るい女の子、『ういらぶ。』では自分に自信が持てずネガティブだが一途な思いを持つ少女、『僕の初恋をキミに捧ぐ』では真面目で一生懸命な女の子と、それぞれ役柄の違いはありつつも、恋愛映画の王道ヒロインであり、桜井の持つパブリックイメージを活かした配役のように感じられた。

 それぞれ漫画原作の実写化ということで、キャラクターがデフォルメされがちな中『ママレード・ボーイ』でメガホンをとった廣木隆一監督からは徹底して「自然な演技」を求められ、演じるのではなく、自然と出てくる感情の大切さを痛感。さらなる芝居への向上心が湧いてきたと語っていた(参考:https://www.crank-in.net/interview/55674/1)。

 そんな中、FODで配信され、現在地上波で放送中のテレビドラマ『ヤヌスの鏡』では、激しい祖母の折檻により、自らを追い込み抑圧することで、本来の自分とはまったく違うもう一人の自分を宿してしまう女子高生・小沢裕美(ヒロミとユミ)に扮した。普段は気弱でおとなしい優等生のヒロミだが、ある衝撃により凶悪な不良少女・ユミになってしまう難役に挑むと、今年9月に公開された映画『任侠学園』では、闇を抱えるダークな女子高生を演じている。さらに現在公開中の映画『殺さない彼と死なない彼女』でも、クラスメイトである間宮祥太朗演じる小坂に対して「お前」「殺す」と言ったエキセントリックな発言を繰り返すリスカ女子・鹿野を好演。

 明らかにこれまでのパブリックイメージとは真逆の役柄への挑戦が続いているが、どれも、生々しさと、危うさが感じられる。特に『殺さない彼と死なない彼女』では、セリフが少ないシーンが多い中、なにをしでかすか分からない緊張感で間を持たせている。廣木監督の演出ではないが、まさに演じるのではなく、内から感情が湧き出て、それが言動に結びついているような、芝居をしていないような芝居に惹きつけられる。

 『殺さない彼と死なない彼女』でメガホンをとった小林啓一監督からも、感情を作ってから作品に入るのではなく、まず動くことで、それによって生まれた感情を大切にしようと言われていたという。桜井自身も、キラキラ眩しい女子高生よりも、エキセントリックな鹿野の方が、自分に近いと話しているように(参考:https://www.crank-in.net/interview/70673/1)、役柄を自身に落とし込みやすかったということもあるのだろうが、ここ最近の桜井は、佇まいと相手との距離感だけで、そのシーンを成立させるだけの説得力を感じさせる。

 先述したインタビューで、とにかく緊張し過ぎてしまうことを克服したいと話していたが、10月に行われた第32回東京国際映画祭のレッドカーペットイベントや舞台挨拶では、共演の間宮から極度の緊張でテンパっていることを暴露されていた桜井。それでもバラエティ番組『沼にハマってきいてみた』(NHK Eテレ)ではMCを務め、その他トーク番組でも、パブリックイメージに捉われることなく臆せず自己を表現している姿を見ていると、今後もリミッターを取っ払ったアッと言わせる役柄を演じてくれるのではないかと、大きな期待を寄せてしまう。

(磯部正和)