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CrazyBoyが語る、初シングルCD『DONNA???』の狙い ダースレイダーがインタビュー

音楽

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リアルサウンド

 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのELLYによるソロプロジェクト・CrazyBoyの自身初となるシングルCD『DONNA???』が、11月25日付のオリコン週間シングルランキングで2位にランクインした。音数の少ないメロウな楽曲の上で、ダンスと連動したラップを聴かせる同曲は、果たしてどんな狙いで作られたのか。これまでCrazyBoyの楽曲群やその試みを高く評価してきたヒップホップシーンのご意見番・ダースレイダーが、CrazyBoy本人に楽曲のクリエイションやそのヒップホップ観を聞いた。(編集部)

ダースレイダー「CrazyBoyはリズムという観点から新しいアプローチをしている」

ダースレイダー:『DONNA???』のリリース、おめでとうございます! 早速、聴かせてもらったところ、身体的な裏付けがあるフィジカルなラップを披露しているという印象がさらに強くなりました。単純に「こういうリズムで、ここに言葉をハメていきます」ということではなくて、体の動きと言葉のタイミングが一致している感じで、それが全体のグルーヴ感にもつながっている。そこにCrazyBoyのラップの説得力があると思います。今回の楽曲「DONNA???」は、これまでにないほどメロウなアプローチの楽曲ですが、そこでもしっかりCrazyBoyらしい表現がされていて、スタイルに磨きがかかっていると感じました。

CrazyBoy:ありがとうございます。これまでCrazyBoyとして、日本のシーンだけではなく、アジアやアメリカのシーンも意識したワールドワイドな音楽性に挑戦してきました。その音楽性のままで、日本のメジャーシーンで『DONNA???』をリリースすることができたのはとても嬉しいです。こうした作品がオリコンなどで売り上げの上位に入ることで、日本の音楽シーンをさらに豊かにしていけたら良いなと考えています。

ダースレイダー:いろんなポジションで、いろんなアーティストがそれぞれの役割を果たしていくことが大事だと思う。CrazyBoyのいる場所、まさにオリコンとかも狙える場所の人が攻めた表現をすることは、今後、10代とかの若い子がそれを聴いて育っていくということも含めてすごく大事だと思っていて。アンダーグラウンドで実験的なリズムやサウンドにチャレンジする人ももちろん大事なんだけど、一番目立つ場所の人が挑戦的な作品を作ることにもたしかな意義があります。CrazyBoyがやっていること、つまりメインストリームのど真ん中にいる人が尖ったことをやるというのは、ヒップホップ的なアティテュードとしても正しいし、だからこそヒップホップは世界的に聴かれるようになった。J-POPにはメロディや歌詞が素晴らしい作品はたくさんあるけれど、CrazyBoyはそこにリズムという観点から新しいアプローチをしようとしているアーティストで、そのアプローチにこそ世界に通じる音楽になる可能性があると思っていました。実際、リズムという部分についてはどれくらい意識している?

CrazyBoy:スタジオに入って、自分にフィットする感じのリズムで楽曲を作るようにしています。まず、ちゃんと現行のシーンを捉えたトラックを選んで、それをもとに歌詞がない状態で意味不明の“宇宙語”でなんとなくラップをしてみるところからスタートして、ダンスの動きも含めてだんだんとフロウのイメージを固めていくというやり方です。ある程度、フロウが形になってきたら、そこに日本語を落とし込んでいくという感じ。完全にリズムありきで作っていますね。

ダースレイダー:“宇宙語”っていう表現はすごく分かりやすいね。ビートに合わせて、自然と降りてきたものを直観的に捉えて、それを日本語に翻訳していくというイメージ。ラッパーにとって、その感覚は大事ですよね。

CrazyBoy:最初の〈Hey, baby, 夜どんな?〉の部分はもともと英語っぽい発音だったのを、日本のリスナーに伝わる言葉にしようとして、自然と出てきました。親しい友達の間ではもともと、その日の晩に誘うとき、「今日の夜どんな?」って聞いていたんですけれど、それを女の子を誘うときの誘い文句にすることで、だんだんとリリックの世界観も固まっていきました。実際に、スタジオから知人の女性に電話をして「今日の夜どんな?」と聞いてみたところ、ちゃんとみんなに意味が通じたんです。しかも「今日デートに行こうよ」だと「OK」か「NG」の二択だけれど、「どんな?」だったら会話も膨らむじゃないですか。それで、これは誘い文句としてもパワーワードになるなと。

ダースレイダー:実際に使える誘い文句として流行りそうだね。日本語としてはずっとある言葉なんだけど、「どんな」っていう言葉のリズムもファンキーでピタッとビートにハマっていて、今言ったようにそのあとの会話が続くことも想像できる。「どんな?」というところで止めると、能動的に誘ってる感じが抑えられるし、相手の意向も聞くことができて……。

CrazyBoy:そうそう、駆け引きが生まれるんです。だから俺、この言葉は男性に使って欲しいなと思っていて。特に中高生くらいの年齢だと、どうやって女の子をデートに誘えば良いかがわからなかったりするじゃないですか。でも「今日の帰りはどんな?」だったら、ツンデレしながらでも聞けるのかなと。もし断られても、「ああ、予定あるんだ、OKまたね」で大丈夫だし。最初のラインで、〈Hey, baby, 夜どんな? 着てる服はどんな? 明日の予定はどんな?〉と三つの問いかけをしていますが、ここから「今日の夜は空いているよ」「そうなんだ、今日の服はどんな感じ?」「じゃあこういう店に行こうよ」という会話に繋がっていくことを想定していて。逆に女性のリスナーの方には、こういう風に聞かれたら、こういう風に返そう、ということをイメージしながら聞いて欲しいです。

ダースレイダー:こういう風に身内同士のスラング的な言葉を楽曲に落とし込むのも、すごくヒップホップ的なアプローチだよね。最初はリスナーも「どういう意味?」と思うかもしれないけれど、聴いてみれば意味がわかるし、そこから広がっていく可能性もある。ラッパーの言葉の使い方としても面白いし、CrazyBoyが仲間たちと普段どんなやりとりをしているのかも透けて見えるのが良いね。

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CrazyBoy「いろんなシーンを繋いでいきたい」

ダースレイダー:CrazyBoyのこれまでの歩みも振り返りたいんだけれど、『NEOTOKYO』シリーズから聴いてきて、自分がどこにいて何を表現すべきかを明確にしているアーティストだと感じていたんだよね。改めて、CrazyBoyにとっての今の東京はどんなイメージなのかを教えてくれるかな。

CrazyBoy:だんだんと外に開けてきているというイメージはありますね。来年のオリンピックに向けて、東京も変わってきているし、ヒップホップのシーンとかもそう。ヒップホップはこれまで、それぞれのシーンが孤立しすぎているイメージがあって、それは俺たちがいるシーンもそうなんだけれど、本当はもっと良い形で繋がっていけると思う。少しずつだけれど、良い意味でメジャーとアンダーグラウンドの壁もなくなってきて、それぞれの派閥やクルーを尊重しながら、面白いフィーチャリングやコラボができるようになってきたのかなと。

ダースレイダー:東京にはいろんな奴がいて、いろんなスタイルがあるけれど、それを全部ひとつの皿にうまく盛り付けてドーンと出していけると良いよね。上海にはこういうシーンがあって、香港にはこういうシーンがある、というのと同じような感じで、世界に向けて東京の今を伝えていければ、すごく面白いことになるんじゃないかな。LDHとも関わりがある88risingは、アジアをレペゼンしていくことで世界中で注目されているけれど、そういうワクワクするようなシーンに、日本もエントリーしていくタイミングだと思う。実際にCrazyBoyは、海外のアーティストともフィーチャリングしているよね。

CrazyBoy:そうですね。先日は元・少女時代のJessicaさんと「Call Me Before You Sleep」という楽曲で共演しましたし、海外アーティストとのコラボレーションはどんどん現実的なものになっています。とある大物ラッパーとのフィーチャリングの話も進んでいて、その作品には自分だけではなく、ほかの東京のアーティストと一緒に参加したいなと。そういう作品を通して、国内のいろんなシーンを繋いでいけたら嬉しいですね。音楽的にも、トラップ全開な感じではなく、次のスタイルを模索していきたいなと。そういう中で、ダースレイダーさんや、その周囲の方々とも繋がっていきたいです。

ダースレイダー:「DONNA???」ではすでにトラップ以降のラップのスタイルに挑戦しているよね。CrazyBoyはANARCHYとも一緒にやっているわけだし、それこそBAD HOPとか、新しい世代のアンダーグラウンドのアーティストと絡んでも面白いはず。みんな、それぞれのシーンで自分の役割をきっちりこなしてきているから、それが一つになっていったら、ものすごいエネルギーになるんじゃないかな。ヒップホップシーン全体でいえば、10代から50代まで幅広い世代の人がすでにいるからね。CrazyBoyの“リズムで遊ぶ”という感覚は、ラッパーがシーンを超えて繋がれる共通言語でもあるから、そのさきに世界基準の楽曲ができたら、日本のシーンはさらに盛り上がるはず。

CrazyBoy:リズムでセッションができれば、歌詞はそれぞれのことを歌えば良いんじゃないかなと思うんです。アメリカは実際にそうなってきていると思います。日本にはまだまだ世界に通じるようなラッパーがたくさんいますし、自分の役割はいかにしてその人たちの魅力を幅広いリスナーに向けて伝えていくかだとも思っていて。

ダースレイダー:リズムを伝えるのは何語だって良くて、それこそ宇宙語でも良い。このビートにこういう風にラップをハメるのがかっこいいという感覚は、すでに世界標準であるから、あとはそれをいかにして幅広いリスナーに楽しんでもらうかだよね。その意味では、三代目 J SOUL BROTHERSはドームツアーを何発も打てるようなビッグアーティストだし、リズムで遊ぶという感覚をもっとも多くの人々にわかりやすく伝えているグループのひとつだと思う。

CrazyBoy:先輩方のヒップホップシーンにはもちろん、ストリートにも才能のあるアーティストがたくさんいることはわかっているので、みなさんの作品がさらに多くの人々に届くように、その礎の部分を広げることができたらという想いは、ずっと抱いてきました。

ダースレイダー:素晴しいね。世界中どこの街に行っても遊べる仲間がいて、ビートを流せばすぐに繋がってパーティーができるのが、ヒップホップの可能性だから、CrazyBoyには率先してみんなをそこに連れていってほしい。この遊び方を知っていれば世界中どこに行っても友達ができるし、それこそFunkadelicの「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」のように一つになれるんだということを、ぜひ幅広い音楽ファンに伝えていってもらえれば。

CrazyBoy:ありがとうございます。本当におっしゃる通り、ヒップホップのシーンには友達がたくさんいるので、そろそろこれまで一緒にやっていない人たちとも何かを作っていきたいなと思います。「Donna???」の後も、色々と動いて仕掛けていきたいと思っているので、楽しみにしていてください。

(取材=ダースレイダー/構成=松田広宣/写真=三橋優美子)

■リリース情報
CrazyBoy『DONNA???』
発売:11月13日 (水)
価格:初回生産限定盤 CD+DVD ¥2,000(税込)
通常盤 CD  ¥1,200(税込)

初回生産限定盤 DVD収録曲
1.「DONNA???」MV
2.「PINK DIAMOND」MV
3.「PINK DIAMOND Part2」MV

CD収録曲
1.「DONNA???」
2.「PINK DIAMOND」
3.「PINK DIAMOND Part2」
4.「Call Me Before You Sleep / Jessica feat. CrazyBoy」

特典:初回生産分購入者汎用特典:オリジナルB2ポスター
EXILE TRIBE FAMILY OFFICIAL CD・DVD SHOP、LDH official mobile CD/DVD SHOP 購入者特典:オリジナルB2ポスター

公式サイト