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『サンタ・カンパニー』花澤香菜が明かす、声優業への思い 「誰かの幸せに寄り添えたら」

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リアルサウンド

 糸曽賢志監督によるオリジナルアニメ映画『サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~』が11月29日より公開される。

 本作は、2014年にクラウドファンディングを用いて制作された短編アニメを基に、新たなシーンを追加してより深みある物語として生まれ変わった作品だ。Sony Bank Gateで投資型クラウドファンディングで4000万円を調達して制作され、同監督の短編映画『コルボッコロ』と併映される。

 クリスマスにいつも一人ぼっちなノエルが、ある日自宅に帰ると、「サンタ・カンパニー」という会社が広がっている。そこはサンタクロース事業を会社として運営しており、ノエルはそこで働く同年代の子供たちに感化され、入社しようと決意するという物語だ。

 今回、主人公のノエルを演じる花澤香菜に本作の魅力やクリスマスの思い出、声優としての仕事の姿勢などについて話を聞いた。(杉本穂高)

●「夢と現実を織り交ぜたサンタクロースの解釈が素敵」

――最初に脚本を読んだ時、どんな印象を抱きましたか。

花澤香菜(以下、花澤):サンタクロースが会社として運営されているというのは新しい解釈ですよね。そうすることで大人も子供も楽しめる作品になっていますし、ノエルちゃんたちがお仕事をしていく中で成長し、仕事するというのは自分も得るものがあるんだということが描かれていて、夢と現実がバランスよく織り交ぜられている素敵な物語だと思います。

――主人公のノエルを演じるにあたって、糸曽監督からどんなアプローチをしてほしいなど、具体的なお話はありましたか。

花澤:本編より先にPVの収録があったんですけど、その時自分で思う通りにやってみたのを監督が聞いてくださって、その感じで本編もお願いしますという感じでしたので、割と自由にやらせていただけました。

――糸曽監督はインタビューの中で花澤さんの自然な演技が好きなんだとおっしゃっていました。自然なままの花澤さんの演技がイメージ通りだったのかもしれませんね。

花澤:イメージ通りだったと思ってくださっているなら嬉しいですね。でも、ノエルちゃんはお父さんにも気を使ったり、大人びた面もある子なので、子供らしい素直な面とのバランスを取るのは難しかったですね。それと、ノエル(フランス語でクリスマスの意)という自分の名前が嫌いというのが切なくて、それでもその名前を受け入れていくその過程の心境の変化をしっかり表現しようと意識しました。

――ノエルは引っ込み思案かと思いきや、結構ぐいぐい積極的に行く子なんですよね。

花澤:そうですね。学校でも友達には不自由しない子なんだろうなと思います。孤立することなく周囲に合わせられる、でも本音はあまり言えないタイプでしょうね。でも、サンタ・カンパニーで出会うお友達は率直に言ってくれる子たちなので、ノエルちゃんにとってはすごく良かったんだと思います。特に、プレゼント部のミントちゃんは、思ったことをストレートに素直に言ってくれる子なので、きっと過ごしやすかったんじゃないかな。

――そのミント役は戸松遥さんです。戸松さんとはやりやすさを感じますか。

花澤:それはありますね! 業界的には幼馴染みたいなものですから。

――ノエルはクリスマスにいつも一人ぼっちという設定ですけど、花澤さんは子供の頃のクリスマスの思い出は何かありますか。

花澤:私、実は小学校2年生くらいまでしかサンタさんを信じてなかったんです。毎年、おじいちゃんがプレゼントを買ってくれるんですけど、クリスマスはおじいちゃんがプレゼントを買ってくれる日という認識で(笑)。シルバニアファミリーが大好きだったので、人形などをよく買ってもらっていました。

――花澤さんとクリスマスと言えば、ラジオ『花澤香菜のひとりでできるかな?』(文化放送)の、戸松遥さんと矢作紗友里さんが毎年ゲストのクリスマス回を思い出します。

花澤:ありがとうございます(笑)。もうかれこれ、11年も3人でメリークリスマスを祝っておりまして。

――12年目の今年も期待しています。

花澤:2人と顔を合わせれば「今年もあるかなあ」なんて話をよくしています。大して身のある話はしていませんけどね。他では聞かせられない話ばかりで(笑)。

――しかし、12年ということは人生の半分弱なんですよね。それだけ続いているのはすごいことですよ。

花澤:そうですよね。しかも、その間に2人とも結婚しちゃいましたからね!(笑)。

●「弁護士役にチャレンジしたい」

――この作品はノエルがサンタ・カンパニーで見習いを目指して頑張り、働くことの意義を見つけるお話でもあります。花澤さんは子役の頃からお仕事されていますが、仕事への姿勢でノエルに共感できる点はありましたか。

花澤:私はノエルちゃんほどしっかりしていませんでしたね。幼稚園の年長ぐらいの頃から事務所に入っていますけど、確固たる信念があったわけでもありませんし、その当時は学芸会などで人前に出るのが大好きだったので、お仕事もその延長線上という感じでした。プロとして何かを考えるみたいなことはなかったですし、ただ、負けず嫌いでしたから、オーディションに落ちたりするとすごく悔しかったです。

――なるほど。では花澤さんが仕事をしていて、他の同級生たちとは少し違う世界に生きているのかもしれないと自覚が出てきたのはいつ頃だったんですか。

花澤:お仕事している特別感のようなものは小さい時からありました。でも、仕事の話を同級生にするとみんなの捉え方は様々で、応援してくれる子もいれば、自慢だと捉える子もいたりして。小学校の高学年くらいからでしょうか、それはあんまり人に言うことじゃない、目立つといいことないんだなってわかってきました。それまで人前に出るのが好きだったのが、だんだん内向きの性格になっていったんですけど、そういう時期がありましたね。でも、それでいじめられたりしたわけでも孤立したわけではないので、恵まれていたとは思います。

――では、現在の花澤さんにとって働くとはどんな意味のあるものですか。

花澤:アニメは監督が作りたいものに対して、みんなで向かっていくものですから、声優もその中で監督に求められたものを提供することになります。この仕事で一番嬉しい瞬間は、「良かった」と言われてお役に立てたなと思えた時ですね。そういう充実感を得られるものが仕事なんだと思います。それが巡り巡って、どこかで人の役に立っていたり、誰かの幸せに寄り添えているのなら、すごく嬉しいことだなと思います。

――サンタクロースがプレゼントを配るのも人に夢を与える行為だとすれば、アニメや映画を作ることにも同じようなことが言えるかもしれません。実際、花澤さんのお仕事に触れて声優を目指した後輩もいるわけですよね。

花澤:そう言ってくださる人もいるんですけど、「もっとすごい人たちがたくさんいるから、そういう人を見て!」って言っています(笑)。でもそう言われるのは嬉しいですけどね。

――花澤さんは今回のノエルような小さい女の子役もたくさん演じていますけど、年を重ねて実年齢と離れていくことで、やりにくさを感じることはあるんですか。

花澤:私は今のところ声質もあまり変わっていませんし、それは感じないですね。収録前日のお酒は控えるようにはしていますけど(笑)。でも、本物の子供と共演した時、やっぱり本物は違うなと思わされる瞬間はありますね。

――子供から学ぶこともたくさんあるわけですね。

花澤:そうですね。学ぶこともたくさんあるし、自分にできないことが何なのかもわかってきますね。でも、私よりもずっとベテランで子供の役をやり続けている方々もたくさんいらっしゃいます。そういう方々の芝居を聞くと、この道を極めることもまた素晴らしいことで、だから私もその道に向かうしかないなと思います。

――今後、演じてみたい役はありますか。

花澤:役の幅を広げていくことは大切ですけど、その分自分も成長しないといけませんから、まずは私が成長しないとですね(笑)。でも、最近は先生役など実年齢に近い役も増えてきていて、そういうのもしっかりやっていきたいです。

 私、最近『グッド・ワイフ』という海外ドラマの弁護士ものにハマっているんです。他にも『アリー my Love』なども好きなんですけど、法廷で難しい言葉を操りながら、なおかつ感情が込もった芝居を観て、「すごいな、私もああいう役をやってみたいな」と密かに思っています。

――最後にこの映画をこれからご覧になる方にメッセージをお願いします。

花澤:小さい子たちは、今クリスマスに向けてワクワクしている時期だと思いますが、この映画はそのワクワクをもっと高めてくれるはずです。また、大人の方にも仕事や親子関係などいろいろ考えさせてくれる要素がたくさん詰まっているので、是非劇場に足を運んでいただけたらと思います。

(取材・文=杉本穂高/撮影=三橋優美子)