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アリゾナ・ザーヴァス「ROXANNE」に見るヒットの方程式 リル・ナズ・Xに端を発した新時代のスター誕生

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リアルサウンド

 今年アメリカを中心に大ヒットした曲で真っ先に思い浮かぶ曲のひとつが、リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」。TikTokのヒットを追い風にストリーミングで爆発的なヒットとなり、米ビルボードソングスチャートで19週連続首位を達成、最長記録を更新しました(1週目のみリル・ナズ・X単独での名義)。そのリル・ナズ・Xに続くとみられているのが、今回紹介するアリゾナ・ザーヴァス。10月にリリースされた「ROXANNE」が米Spotifyデイリーチャートで先月末にトップ10入りを果たすと、今月7日には初の首位を獲得。ビリー・アイリッシュの新曲が登場したタイミングで一旦後退するも、11月20日の段階で再度首位に立っています。レコード会社に所属せず同チャートを制したのはこの1年間ではアリゾナのみという快挙を成し遂げました。

(関連:リル・ナズ・Xは、なぜブレイクを果たした? 「Old Town Road」全米17週連続1位の背景

 Spotifyの勢いを受け、米ビルボードソングスチャートでも11月16日付で自身初のエントリーとなる34位に登場したアリゾナ・ザーヴァスは、2016年に初の作品「Don’t Hit My Line」をリリースして以来レコード会社には所属せず、ソングライトおよびエンジニアリングを自ら手掛け(Instagramのプロフィール欄には”non-fiction.”と記載)、親友らをプロデューサーに迎えこれまでにおよそ30曲を発表。大半の曲がSpotifyで100万以上の再生回数を記録してきました。そのアリゾナが本格的にブレイクしたのは、「ROXANNE」がTikTokで流行したのがきっかけ。11月中旬の段階で32万もの動画に使用されていますが、いわゆるチャレンジモノに散見される共通の振り付けはあまり見られず、投稿者が思い思いに楽しめるという敷居の低さも人気の秘訣と言えます。

 「ROXANNE」のブレイクにより、昨年10月にはおよそ50万だったアリゾナ・ザーヴァスのSpotifyでのリスナーは11月中旬には1000万を突破。そして今月、アリゾナは遂に米ソニー傘下の<コロンビア・レコード>と契約を結びました。これによりアリゾナ・ザーヴァスは、あのリル・ナズ・Xとレーベルメイトになります。

 面白いのは「ROXANNE」のヒットを巡り、米ビルボード担当者がこの曲のヒットの理由や今後どこまで上昇するかなどを議論していること。チャートのプロにとっても「ROXANNE」が興味深い事象と捉えていることが解ります(参照:https://www.billboard.com/articles/business/chart-beat/8543356/arizona-zervas-roxanne-five-burning-questions)。

 一方で気になるのは、その米ビルボードソングスチャートにおける登場2週目の伸びが緩やかなこと。サブスクリプションサービスで大ヒットする曲は急上昇する傾向があったのですが、11月23日付米ビルボードソングスチャートで「ROXANNE」は27位、7ランクアップにとどまっています。米Spotifyデイリーチャートで首位を獲得はしたもののその再生回数が増えたのは、プレイリストで偶然アリゾナ・ザーヴァスの曲に触れた人よりもアリゾナの音楽を積極的に聴こうとした人が多く、およそ7割がコアなファンの聴取だと米ビルボードは分析しており、曲がまだ十分には世間に広がっていないと言えるでしょう。とはいえ総合チャートに登場したことで知名度が上昇、また米ではSNSでのシェア回数に基づくSpotifyバイラルチャートでも最近2位以内をキープしていることから、口コミでの拡大に伴い曲や歌手名が広く浸透していくことが予想されます。またレコード会社との契約に伴いラジオでも積極的にオンエアされるようになると考えれば、ラジオエアプレイも指標のひとつである米ビルボードソングスチャートで順位を上げると思われます。「ROXANNE」は世界全体のSpotifyデイリーチャートでも現在4位、日本でも100位以内に入ることが増えたことから、年末にかけて世界中を席巻することは間違いないと思われます。

 今後はアリゾナ・ザーヴァスのように、レコード会社に所属せずともSpotifyやTikTokでヒットした歌手はどんどんフックアップされることでしょう。6月のリリース後、現在までにTikTokにて84万近くの動画に使用された「Yellow Hearts」(最新米ビルボードソングスチャート81位に初登場、米Spotifyバイラルチャートでは1位をキープ)を発表したアント・サンダースが、ソニー傘下の<アリスタ・レコード>と契約を結んだことが今週発表されました。SpotifyやTikTokといった新たなメディアの興隆は、リル・ナズ・Xに端を発した新時代のヒットの方程式とスター誕生に繋がっているのです。(Kei)