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「でんぱ組.incはルサンチマンに火を付けて飛んでいる」メンバーを奮起させた“屈辱”とは?

音楽

ニュース

リアルサウンド

0923-mohuku.jpgもふくちゃんこと福嶋麻衣子氏

 でんぱ組.incのプロデューサーで株式会社モエ・ジャパン代表の“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子氏が、でんぱ組.incと自身のプロディース論、そして今のアイドルシーンについて語る集中連載第2回。

第1回:「物語性の先に辿りつきたい」でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんが語るアイドル論

 でんぱ組.incは今月16日、初の東京・日比谷野外音楽堂でのライブを成功させた。いわゆる“ミドル級アイドル”の枠を越えそうな勢いで前進する彼女たちだが、かつては「アイドルなのに、なぜかアイドルファンにウケが悪い」という壁に当たったこともあるという。もふくちゃんはプロデューサーとして、そうした壁を乗り越えるために、でんぱ組.incをどう方向付けてきたのか−−放送作家のエドボル氏が切り込む。

――でんぱ組.incは当初、二次元のオタクをターゲットにアニメソングを歌ったり、三次元のアイドルファンに受け入れられることを目指していましたよね。でも今は、ロック好きからも支持されている。どのような経緯があったんですか?

もふくちゃん(以下、もふく):いろいろな挫折があったんですが、いちばん覚えているのは、2010年に出演した『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下、TIF)ですね。多くのアイドルと対バンする初めての機会だったんですけど、その年も翌年も、すごく反応が悪くて。

 2年目のときは、他のグループには歓声が沸くのに、でんぱ組.incのときはシーンとしてしまって。あとから、「曲のBPM(テンポ)が速すぎて、よくわからない」「アニメ声がキモい」などの叩かれ方をしていた。でんぱ組.incとアイドルファンとの相性の悪さを実感して「今まで掘り続けていた壁の向こうに光はなかったんだ」という風に感じました。TIFに来る人は低年齢で、正統派なアイドルを応援するタイプが多いんだ、と(笑)。別のフィールドを狙うべきだと思って、逆にスタンスが明確になり、スッキリしましたね。TIFには、アイドルを追っている人――いわゆる“界隈”の人たちがみんな来ているから、そこでの反応はマーケティング的に役立ちました。その後の方向性を変えるリトマス紙になったんです。

 あともうひとつ、TIFでの出来事で強烈だったのは、エンディングに呼ばれなかったこと(笑)。パフォーマンスは小さいステージでやっていたので、みんな「最後にメインステージに立てるよ!」ってワクワクしながら、舞台裏で待っていたんです。でも、しばらくしたら他のアイドルさんが次々と戻ってきて「どうしたの? もう終わったよ」と……。「私たち、呼ばれもしなかったんだ!」とガッカリしましたけど、今になってみると、そういう挫折を経験してよかったなと思います。そのときの気持ちがなかったら、今みたいに「見返してやる!」というような、いい意味でのルサンチマンは生まれていなかった。でんぱ組.incはルサンチマンに火を付けて飛んでいるようなところがあるんですけど、それはこうした経験がベースになっています。

20130923-denpa.jpgでんぱ組.inc『W.W.D II』

――挫折を味わった分、2012年に初めてメインステージに立ったときのパフォーマンスはすごかったですね。周りを見ると、僕も含めてみんな泣いていました(笑)。

もふく:「今までの屈辱を晴らしてやる!」という気持ちで(笑)。私もあのときのステージは今でも印象に残っていますね。

――今年はテレビ番組のスタッフとしてTIFに関わっているのですが、BiSにもアイドルファンからリアクションがくるようになって「アイドルファンの層が広がったな」と感じました。それはある意味、でんぱ組.incが拓いてくれた道だと言える気がするんです。

もふく:たしかに、初回の2010年、11年のTIFに比べて、だんだんと今は客層が違ってきたと感じます。昔はもっと、いわゆる「アイドルオタク」のものだったのに、世の中的にもアイドルファンのすそ野が広がるのと同時に、変わってきましたね。

 アイドルはみんな、このイベントで何人のファンを獲得できるか、という意識をしていると思うんです。でもTIFでは予想が悪いほうに裏切られてしまったんですけど、ロックバンドが出るような普通のライブイベントに出演したら、想像よりずっと反応がよかったんです。これはもう何年か前の話ですが、その当時から「おや!? このリアクションなら……」という確信めいた予感がありました。だから、本人たちのキャラクターや楽曲の方向性は変えないで、狙う場所を変えたんです。

――異種イベントというと、今年は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013』と『SUMMER SONIC 2013』に出ましたよね。RIJFでは、でんぱ組.incへのリアクションがすごく大きかったと聞きました。

もふく:ロックイベントで受け入れられたのは、そもそもロック界隈だったり、音楽業界の方たちが先に注目してくれたのも大きいと思います。今もライブの関係者席はアイドル関係よりも、音楽ライターさんなどが多いですね。そういう状況を見ていて、でんぱ組.incは楽しみ方が普通のアイドルとは違うのかな、と思っています。

第3回目に続く

■福嶋麻衣子(ふくしままいこ/もふくちゃん)
株式会社モエ・ジャパン代表取締役社長。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。でんぱ組.incのプロデュースのほか、秋葉原にあるライブ&バー『ディアステージ』や、アニソンDJバー『MOGRA』の運営なども手がける。TOKYO FM『妄想科学デパートAKIBANOISE』(水25:00)にもレギュラー出演中。

(インタビュー=エドボル/構成・文=編集部)