明るく華やかな「初春新派公演」、波乃久里子「人間は喜劇そのもの」
ステージ
ニュース
劇団新派「初春新派公演」取材会より、左から河合雪之丞、喜多村緑郎、水谷八重子、波乃久里子、栗山航。
劇団新派「初春新派公演」の取材会が昨日12月13日に東京都内で行われ、劇団新派の水谷八重子、波乃久里子、喜多村緑郎、河合雪之丞に加え、男劇団 青山表参道Xの栗山航が登場した。
「初春新派公演」は2部構成で上演され、第1部では喜劇「明日の幸福」、第2部では舞踊「神田祭」が披露される。なお劇団新派が同劇場で「神田祭」を上演するのは今回が初となる。
「明日の幸福」は、昭和29年に明治座で花柳章太郎、初代水谷八重子、伊志井寛、小堀誠らの出演により初演された家族ドラマ。松崎家の家長・寿一郎が大切にしていた埴輪の一部が壊れてしまったことから巻き起こる家族の騒動を描く。寿一郎の妻・淑子を演じる八重子は「『明日の幸福』は母と伊志井寛先生が、現代劇、ホームドラマというものを“お涙ちょうだい”だった新派から生み出そうとしてできあがった作品です」と語り、「喜劇とは、笑わせるのではなく、あるシチュエーションに立たされたときに、まともな人間がどういう行動を取るか、それが絡み合ったときの面白さを表現したもの。昭和29年の戯曲ですが、私たちが自分たちの息遣いで演じることで、お芝居が長生きしてくれる。それが一番望むことでございます」とコメントした。
「人間そのものが喜劇」と言う久里子は、緑郎扮する寿一郎の息子・寿敏の妻である恵子を演じる。来年、芸歴70年を迎える心境を聞かれると、「70年もやってるんですか、私。みっともない! 70年やってこの程度なんだから」と声を大きくし、「先代から『ベテラン女優と呼ばれたら“恥”と思いなさい』と言われて。今やベテランと呼ばれることが多いですが、キャンバスをもう一度白くして臨みたい」と公演に向けて意気込んだ。
一方、「家庭裁判所所長の寿敏は、温厚な性格で頭は法律のことでいっぱい。経験のないお役を頂いただきました」と喜びを見せたのは、緑郎。過去に雪之丞と踊った「神田祭」に触れつつ、「今回、初めて喜多村緑郎紋・笹竜胆の首抜きでやらせていただきます」と明かし、「鳶頭には、色気と威厳、遊び心が必要で、雰囲気を出すのが難しい。久里子さんのお父様(十七代目中村勘三郎)の踊りに近づけるようにしたいです」と語った。
「神田祭」のみに出演する雪之丞は衣装について「江戸前の芸者さんが着ている黒の引き着は、荒磯という裾柄が多いのですが、ふと思い出して三代目市川猿之助さん(現・市川猿翁)が踊りで着ていた芸者衣装を使わせていただくことになりました。あまり世に出ていないもので、師匠の思い出もあります」と胸の内を明かし、「芸者は、色気、かわいらしさ、すっきりとしたところが持ち前。それを心がけ、全力で勤めさせていただきたいと思っております」と言葉に力を込めた。
劇団新派に初参加となる栗山が「明日の幸福」で演じるのは、寿敏の息子・寿雄。登壇者から“昭和顔”と形容された栗山は「(出演が決まって)とてもうれしいのですが、とーっても緊張しています(笑)。先ほど、控室でお話しをさせていただいただけでも、差し入れのことを『お部屋見舞い』と言うことを教えていただいたり、勉強になることが多いと感じました」と語る。また、「金屏風の前で話す日が来るとは思いもしなかったので……」と緊張した面持ちの栗山に、久里子が「かわいいー」と声をかけ、会場の笑いを誘う一面も。これで肩の力が抜けた栗山は「稽古場での雰囲気など少し不安はありますが、粗相がないように、挨拶は大きく、元気はつらつにやっていきたいと思っております」とさわやかな笑顔を見せた。
「初春新派公演」は1月2日から20日まで東京・三越劇場で上演される。
「初春新派公演」
2020年1月2日(木)~20日(月)
東京都 三越劇場
出演:水谷八重子、波乃久里子、春本由香 / 瀬戸摩純 / 田口守 / 栗山航 / 河合雪之丞、喜多村緑郎
一、「明日の幸福」
作:中野實
演出:成瀬芳一
二、「神田祭」
振付:尾上墨雪