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BiS階段がTバックを投げるパフォーマンスも…カオスなDIYフェス「ボロフェスタ」の魅力とは

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20131107boro.jpg「ボロフェスタ2013」公式サイトより

 9月25日~27日に京都KBSホールにて行われた「ボロフェスタ2013」。ソウル・フラワー・ユニオンやPolaris、BiS、でんぱ組.incなど人気アーティストから、関西方面で活躍するインディアーティストまでが集結し、25日の前夜祭を含め全公演ソールドアウト。関東の方には馴染みがないかもしれないが、フェス乱立の時代において個性を際立たせている、今注目すべきDIYフェスだ。 本稿では最終日の27日に注目し、その魅力をレポートしたい。

 まずこのフェス、とにかく忙しい。全部で5つのステージからなる会場では、同時多発的にライブが開催されるので、常に見て回らないと気が済まない。3つのステージが隣接された1階では、忘れらんねえよが暑苦しいほどのプレイで観客を沸かせた後は、Homecomings、Predownらが清涼感のある演奏を披露し、会場をクールダウンさせる。舞台の後ろにそびえる大きな幕が開け放たれると、一面に美しいステンドグラスが登場。曲の美しさを際立てて、特別な気分にさせてくれた。同時に地下ステージでは、関西を中心に活躍するインディバンドが多く出演。濃厚でダンサブルな音楽を見せたワンダフルボーイズ、シティポップな空気をユルユルと感じさせるEnjoy Music Clubなど、新しいアーティストとの出会いに満ちている。また、ロビーのステージでは風営法についてなどのトーク・セッションを開催することも。

 特筆すべきアクトをいくつか紹介しよう。関西出身、いまや東京でも大人気のキュウソネコカミ。「パンティ! 」と、モーモールルギャバン(前夜祭出演)のパクりを取り入れつつ、「DQNなりたい、40代で死にたい」では”ヤンキーこわい”というコール&レスポンスで会場がひとつに。先日の早稲田祭で細野晴臣と共演したことが記憶に新しいceroは、メンバー一人ひとりのテンションがいつも以上に高く、活き活きとしていた。 名曲「ディアハンター」や、音源の世界観をより増幅させた「船上パーティ」が印象的だった。復活を遂げた伝説のバンド・EP-4は今年リリースしたkraftwork「radioactivity」のカバーを披露。その渦巻くグルーブに、もはやEP-4の曲としか思えなかったほどの衝撃を覚えた。

 演奏以外で注目したいのは、会場内の看板や装飾だ。よく見てみると段ボールでできていたりと、すべて手作りだということがわかる。実は高校生や大学生、バンドマンらで構成されたボランティア・スタッフがステージ設営から装飾、当日の警備まで担当しており、そのユルさも含め良い意味で”ボロ”なのだなと実感できる。しかしこのフェス、今年で12回目。京大西部講堂からスタートし、試行錯誤を繰り返した結果、今日の京都KBSホールへと至る。しっかりとしたフェスとして運営がなされているわけだから、単に”ボロ”だとは言えないのだ。

 さて、当日へ話を戻そう。今年のボロフェスタ、テーマは「カオス」だった模様。会場のいたるところに登場しては笑いを誘うサプライズ・アクトのボギーや、トリ周辺に現れるダイナマイト・アクトTRIPMENといった個性あるキャラクター的ポジションの出演者ももちろんだが、「カオス」を裏付けるのは、フェス内で実現したいくつかのコラボレーションにある。当フェスのアイドル枠、でんぱ組.incとBiSは先日発売されたコラボレーション・シングルの楽曲をお互いに披露。BiSは非常階段と共にBiS階段を実現させ、「PPCC」ではメンバーが赤Tバックにゴキブリ(オモチャ)、タンポンまで観客めがけて投げまくる! 恍惚の表情を見せる研究員(BiSファンの総称)と、棒立ちで見つめるそれ以外の観客。そのギャップも面白可笑しい空間として目に焼き付いている。

 ソウル・フラワー・ユニオンのアンコールで披露された、ソウル・フラワーBiS階段も忘れがたい。「海行かば 山行かば 踊るかばね」の演奏に合わせてJOJO広重のノイズが響きわたり、BiSメンバーがいたるところに蒲鉾を投げる! スタッフも隣接ステージに上がって踊り出し、もはや立場など関係ないボーダーレスなお祭り会場へ。筆者が思わず「カオスだなあ……」とつぶやいてしまうくらい、このフェスティバルのユルさ、カオスさをうまく象徴している瞬間であったと思う。

 以前、当サイトの記事「地方の夏フェスの2極化進む 成否を分けるのは「コンセプトの有無」にて、香川県のフェス「MONSTER baSH」を例に、フェスティバルにおける「ストーリー性」について取り上げているが、ボロフェスタにもまさにそれがある。それは、アーティストを主軸としたストーリーだけではなく、スタッフを主軸としたストーリーだ。今回のソウル・フラワーBiS階段での1コマもそうだが、フェス終了後に上映されたエンドロール・ムービーを見て涙ぐむスタッフの姿もまた、味のある物語だと思う。

 東京にはない手作りフェスティバル、ボロフェスタ。それは、関西在住の音楽ファンに嫉妬してしまうくらい、素晴らしい音楽体験と手探りな物語性が詰まっている奇跡のような3日間であった! スタッフ、ミュージシャン、そして観客全員が笑顔になれる理想のフェスがここにはある。

■梶原綾乃
駆け出しライター22歳。編集やフリーペーパー制作をしたり音楽配信サイトOTOTOY、レーベルOnly in Dreamsでも不定期的に執筆活動中。Twitter