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いきものがかり、倉木麻衣、miwa、山本彩……最新作で表現の幅を広げる女性ボーカリストの歌声

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リアルサウンド

 2年の“放牧”期間を経て約5年ぶりのオリジナルアルバムを完成させたいきものがかり、世界最高峰のエンジニアがマスタリングを手がけてた初のシングルコレクションをリリースする倉木麻衣。キャリアを重ねるなかで、意欲的なトライを続ける女性ボーカリストの新作を紹介します。

(関連:いきものがかり 『STAR LIGHT JOURNEY』試聴はこちら

●いきものがかり『WE DO』
 “集牧”後、最初にリリースされた「WE DO」、メンバー3人の共作による「太陽」などの配信シングルを含む、 5年ぶりのオリジナルアルバム『WE DO』。叙情的なメロディとともにそばにいる大切な人への思いを描いた「スピカ~あなたがいるということ~」、ウォールオブサウンド直系のガーリーなポップス「STAR LIGHT JOURNEY」などを収めた本作は、王道のJ-POPという従来のスタイルを維持しつつ、水野良樹、山下穂尊、吉岡聖恵のソングライティングセンスを存分に活かすことによって、音楽の幅を大きく広げた作品に仕上がっている。軸になるのはもちろん、吉岡のボーカル。これまでは“男性ふたりが書いた楽曲を伝える”というスタンスが中心だったが、本作では歌のなかに彼女自身の意思が色濃く反映されているのだ。“個”をしっかり出すことで、グループ全体のクリエイティブを活性化につなげる。それこそが本作の充実ぶりの要因だろう。

●倉木麻衣『Mai Kuraki Single Collection ~Chance for you~』
 デビューシングル『Love,Day After Tomorrow』(1999年)リリースから20年。アニバーサリーイヤーを迎えた倉木麻衣から、初のシングルコレクション『Mai Kuraki Single Collection ~Chance for you~』が届けられた。CD4枚組からなる本作は、ライアン・スミス(ビヨンセ、Green Day、DREAMS COME TRUEなど)、テッド・ジェンセン(ノラ・ジョーンズ、マドンナ、Coldplay、米津玄師など)、クリス・ゲーリンジャー(Jay-Z、レディー・ガガ、リアーナなど)、ランディ・メリル(アデル、ティラー・スウィフト、リアム・ギャラガーなど)という凄腕のエンジニアがマスタリングを担当。既存のシングルを集めただけではなく、気鋭のエンジニアの技術によってアップデートされたサウンドを堪能できる。繊細で美しいウィスパーボイスから、チアフルなボーカルまで……R&BやEDMなど幅広いジャンルの楽曲を歌うことで、シンガーとしての表現の幅を徐々に広げてきたプロセスを、世界最高峰の音質で追体験できるゴージャスな作品だ。

●miwa『Storyteller/ティーンエイジドリーム』
 2020年のデビュー10周年へのキックオフを告げる両A面シングル『Storyteller/ティーンエイジドリーム』は、彼女自身のポジティブな思いを込めた楽曲を収録。「Storyteller」は、尖りまくったギターサウンド、アグレッシブに突き進むビート、強い意思を感じさせるボーカルがぶつかり合うアッパーチューン。“私という物語の主人公”として、人生を主体的に選び、前向きに生きていきたいという願いを刻んだ歌詞もインパクト十分だ。TVアニメーション『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オープニングテーマとして制作された「ティーンエイジドリーム」は、爽やかさ、切なさをたっぷり含んだ旋律、“自分らしくいたい”“大切な人を守りたい”というピュアな感情を綴った歌詞を軸にしたポップナンバー。聴く者の感情を自然に引き上げてくれるボーカルからは、前進を続ける彼女自身の現在のモードが真っ直ぐに伝わってくる。初回盤のボーナストラックには、NHK FM『miwaのミューズノート』スタジオライブの音源(武部聡志のピアノとmiwaの歌によるライブ)を収録。

●山本彩『α』
 2018年11月にNMB48を卒業した山本彩。2019年2月に行われたソロライブツアー『I’m ready』、4月に発売された1stシングル『イチリンソウ』によってソロアーティストとしての本格的に始動した山本彩。全曲の作詞・作曲を手がけたニューアルバム『α』には、シンガーソングライターとしての表現力と、ポップアーティストとしての魅力がバランスよく体現されている。大木伸夫(ACIDMAN)、Kai Takahashi(LUCKY TAPES)、亀田誠治、小林武史、トオミヨウといったプロデューサー陣とのコラボによる多彩なサウンドも魅力的だが、本作の中心を担っているのはやはり彼女が紡ぎ出す言葉とメロディ。“自分と向き合いながら、その先に進む”というメッセージが伝わる「TRUE BLUE」、〈私の歩く道は いつだって君の元へと続いている〉というフレーズが印象的なラブソング「Homeward」をはじめ、彼女自身の感情がしっかり感じられることこそが本作の最大の魅力だろう。(森朋之)