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藤圭子から松山千春、半野田拓まで……豊田道倫が最近聴きこんでいる「名盤」6選

音楽

ニュース

リアルサウンド

20130115-toyota-01.jpg今回のインタビューでは、リスナーとしても定評のある豊田氏が、最近愛聴しているアルバムの魅力を語った。

――前回のインタビューでは、新作『FUCKIN’ GREAT VIEW』について“一瞬の夢としてのポップ”という視点から語ってもらいましたが、後編では最近聴きこんでいる6枚のアルバムを紹介してもらいます。まずは半野田拓の5枚組『5CDS』。円盤レーベルからのリリースです。

豊田:半野田くんは2005年の僕の『東京の恋人』に参加してもらった、当時まだ若手のサンプラーとギターを使うインプロヴァイザーで、音源も作っていました。それからあまり活動していなかった時期があって、去年突然これをリリースしました。音楽としては言葉にするのが難しいものです。「鬼才」というタイプですね。使っている機材はローテクな昔のサンプラーなんだけど、それで何でもやっちゃうという。

――缶バッチ10個付きというパッケージもすごいですけど、音の印象はPOPですよね。

豊田:見た目は金髪でヤンキーっぽい(笑)。アートっぽいところにいくわけでもなく、独自のスタンスのところが面白い。最近の大阪は言葉の鬼才はちょこちょこいるけど、音を追求している人はいそうであんまりいないので、数少ないそのタイプかな。

――次にBUN666の『GIRL! Last Demo Recordings』です。彼は2000年代前半に豊田さんのライブによくゲストで出ていて、私も何度か見ました。前作『m t v』収録の「ブルーチェアー」は彼のことを歌った曲ですね。

豊田:亡くなったのは一昨年の秋で、最近こういうパッケージでリリースされました。彼とはずっと一緒にやっていたんですが、4-5年前に「自分のソロのちゃんとしたものを作りたい」と電話があって、スタジオなどを紹介したけど、あまりうまくいかなかったようで。

――ギタリストとして彼をどのように評価していますか。

豊田:ものすごいものを持っていました。ダンスミュージックとしてのセンスも持っていたし、まだまだできることはたくさんあったと思う。制作前に彼は「マイルス・デイビスとジョン・リー・フッカーと『TAXI DRIVR』のサントラが混ざったようなアルバムを作りたい」と言ってて、それは、ほぼその通りにはなったし、それらを越えてると思う。

――この作品の楽しみ方とは。

豊田:単純に「こういう人もいた」ということです。言葉にはできないんだけれど…「オススメ」というわけではなくて、BUN666という人がいたことを知ってほしい。

――次は冬里工藤礼子名義の『みかん』。豊田さんとの共演経験もある工藤冬里さんと礼子さんによる2013年作品です。

豊田:工藤さんと一緒にライブをしたときに売っていたCDで、流通はしていないのかな? 去年けっこう影響を受けていて、物凄くラフにも聴こえる。これまたどう表現していいか難しいな(笑)。何というか、ヴェルヴェットってこういうものだったんじゃないか、という感じがあります。一番かっこいいロックという感じで音もすごくクールで、計算しているのかしていないのか、本人に訊いたら「マスタリングは素人がやった」って(笑)。でも、何か危険なオーラをビシビシ感じる。さっきのBUNさんと違うところは、彼がちゃんと現実にいることです。普段生活していて、こういう音を人が必要とするかは難しいんだけれど、家にひとつはあってほしい薬のような役割のもの。これを聴いたから自分の『FUCKIN GREAT VIEW』を作れたようなところがあって。音像の部分でちゃんとまとめなくても、歌としての思いが強くあって、ヴォーカルをきちんと録れば良いレコードになるんだ、と。

――次は藤圭子の『GOLDEN☆BEST』です。(2005年バージョン)

豊田:今は毎晩これを聴いていますが、暗いし、「圭子の夢は夜ひらく」が当時100万枚売れていたことがあんまりピンと来ない。でも自分といい感じで相性が合うなぁと、何か惹かれますね。田舎者にしかできない、東京での一瞬の夢というかね。フォークシンガーの三上寛さんが「藤圭子と宇多田ヒカル親子の声は日本海の声で、日本人は結局、日本海の声が好きなんだ」と言っていました。今はそういう声を聴くことがないですよね。だからそれを聴く練習をしています。昔の曲は一曲の情報量が多くて、それは作詞作曲に使う時間も長かったからかもしれない。

――次は松山千春の『生きている』です。豊田さんが松山千春さんをリアルタイムで聴き続けている理由は何でしょう?

豊田:何か聴いちゃうんですよ。この人は生活の雰囲気をまったく想像できないでしょ? で、彼が歌う曲も現実感はなくて、とにかく温かいんです。……本人が言うには「自分は子どもの頃、貧乏の底辺にいた」と。だから逆に開き直って何でも楽しもう、というところがあって、とにかく曲が素朴でシンプルで、一番温かいところしか歌ってない。そこは一貫してるし、やっぱり得がたいものだ、と。

――最後はカオリーニョ藤原の『カオリーニョ藤原の真実』です。(※リリース前のため、画像なし)

豊田:大阪のベテランです。10年くらい前に演歌ボッサをリリースしていましたが、今度のアルバムは僕がプロデュースして3月に大阪の新しいレーベルからリリースされます。オリジナルと、友部正人さんや高田渡さんのカバーなどをボサノバでやっている。ボクサーのアンチェイン梶さんのも。

――どういう出会いだったのですか?

豊田:あるイベントで一緒になって、後、西成の釜ヶ崎の三角公園での越冬闘争で『あの素晴らしい愛をもう一度』のカバーをやっているのを聴いたんです。嫌いな歌だったんですが、すごく良いと思って。ボサノバでやるのは、生き抜くための遊び、お洒落のように思えて、素晴らしいなと。で、これはちょっと一緒に何かやらせて欲しいと思って、声を掛けてソロアルバムを作らせて貰いました

豊田道倫 & mtvBAND ニュー・アルバム『FUCKIN’ GREAT VIEW』 予告編

――最後に、mtvBANDの今後のこともうかがいます。すごくいいバンドですが、これからも続けていくのですか?

豊田:今はあんまり考えてません。後1-2回はもちろんやるけど、自分の状態と各メンバーの状態で、どうなるかはわかりません。やはりバンドではないので、そのときの自分の気分次第です。

――宇波(拓)さんと豊田さんの関係も興味深いですね。お互い独自の音楽論、音楽手法を持っていると思いますが、このバンドでは不思議な一致点もあって。

豊田:よくいつも一緒にやってくれると思う(笑)。もちろんそういうメンバーの存在は大きいけど、レコーディングやライブ、そのときの曲などについてはあまり彼らのことを考えないようにしています。彼らがやりやすいかどうか、ではなくて、あくまでも自分のやりたいことを。それはずっと変わらないと思います。
(取材=神谷弘一/撮影=山本光恵)

■リリース情報

『FUCKIN’ GREAT VIEW』

価格:¥ 2,415 [税抜価格 ¥ 2,300]
発売日:2014年 1月15日(水)

01. ひとり
02. 夜のコーヒー
03. オレンジ・ナイト
04. 26歳
05. G
06. 玄米木苺フレークシェイク
07. ずっとビーチのはしっこで
08. ふたり
09. Heavenly Drive
10. 街の暮らし

■イベント情報
豊田道倫 & mtvBAND 
ニュー・アルバム『FUCKIN’ GREAT VIEW』発売記念コンサート

大阪公演
日程:2014年2月16日(日)
会場:Namba BEARS
(〒556-0011 大阪府大阪市浪速区難波中3-14-5 新日本難波ビルB1 / TEL. 06-6649-5564)
開場:17:30 / 開演:18:00
出演:豊田道倫 & m t v BAND(豊田道倫、久下惠生、宇波拓、冷牟田敬)
前売:\ 2,500 / 当日:\ 3,000
前売予約:1月4日(土)より会場の店頭、お電話(06-6649-5564)、メール(info@namba-bears.main.jp)にて受付中。

More Information:HEADZ TEL. 03-3770-5721 / www.faderbyheadz.com