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サマソニ”ミスチル地蔵”問題はなぜ起きた? その原因と解決策を探る

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『SUMMERSONIC』

20130723samasoni.png『SUMMERSONIC 2013』公式サイト

 8月10日、11日に東京、大阪で行われたサマーソニック2013。東京、大阪で20万人以上を動員して成功裏に終わった同フェスだが、ネットでは”ミスチル地蔵”と呼ばれる一部参加者の行動が話題となっている。

 ミスチル地蔵とは、ミスターチルドレンのライブを最前列で観たいがために、その前のアクト(今回はスマッシング・パンプキンズ)の演奏時から最前列を陣取るファンのことを指す。ミスチルが登場するまではボンヤリと立ちすくんだり、その場に座り込むなどする姿が見られたことから、ネット上で”地蔵”と揶揄されてきた。

 今回の大阪でのライブに参加したリスナーの声をまとめたNAVERまとめ記事によると、「サマソニで前の方でシート敷いて座って場所取ってるとか予想を遙かに越える行動をとるミスチルファンがいっぱいいるとは…」「スマパン始まっても前方のお客さんずっと棒立ちで、さすがにビリーも怒っちゃって、”Thank you for the warm reception. “(温かい歓待をありがとう)って皮肉なジョークを言ってた。悲しかった」と、場所取りをしている人々の行動に驚く声もあった。

 この現象について、夏フェスに詳しい音楽ライター・柴那典氏は「ツイッターとNAVERまとめの組み合わせで過剰なフレーミングが行われていると思う。東京のサマソニを観る限り、大きく問題視されるほどではなかった」としつつ、次のように分析する。

「”地蔵現象”はミスチルに限らず、ほかのアーティストのアクトでも起こり得るものです。特に国民的バンドといわれるクラスの大物になれば、フェス文化そのものに慣れていないファンも多い。そういうタイプのファンは、ワンマンライブのチケットを取り損なったがためにフェスに参加している。それゆえにほかのアーティストに興味がなく、棒立ちになってしまうんです。

 また、特にSNSを使いこなしていないファンは、ファン同士の交流もなく、アーティストと自分の関係性が”一対一”でしかない場合が多い。つまり、自分たちのマナーがそのバンド自体の評判にかかわってくる、という客観的な視点がないことも、フェスの常連である音楽ファンの不評を買う原因になっているのでしょう」

 SNSの登場以降にブレイクしたアーティスト――例えば、ももいろクローバーZのファンであれば、「自分たちのマナーが悪ければ、SNSを通じて悪評が拡散し、ひいてはももクロ本人まで叩かれる、という視点を持っている」と柴氏。

「今回のミスチルも、2日目の東京では1日目の大阪ほどそういった行動が見られなかった。それはツイッターやフェイスブックなど、SNSを通じて自分たちの行動が問題視されていることをファンが認識したからかもしれません。これは、ネットリテラシーが大きく関わってくる問題なのかもしれませんね」

 サマーソニック大阪の公演を担当しているキョードー大阪の広報部に、この問題について尋ねてみたところ、「広報では現場に行っておらず、公演担当者もまだ現場の仕事に従事しているため、お答えしかねる」との返答があったのみで、スタッフ間ではそれほど大きな問題として把握されているようではなかった。また、ネット上では「スマパンの後にミスチルというブッキングに問題があったのでは」との声もあったため、運営元のクリエイティブマンプロダクションにも問い合わせてみたが、本日はサマーソニックのために休業しているとのことで、回答は得られなかった。

 ”フェスマナー”の周知徹底は重要かもしれないが、ファンに悪意はなく、また運営側にも、もちろんアーティストにも責任があるとは言いがたいこの問題。有効な解決策はあるのか? 再び柴氏に聞いた。

「一つの解決策としては、バンドのリーダーやスポークスマンがファンに対して、他のバンドにもリスペクトを示すように呼びかけること、そしてその声を隅々まで浸透させることが挙げられるでしょう。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんをはじめ、実際に自分たちのファンに向けてそういった発言をしているミュージシャンも多いです。

 今回で言えば、もしミスチルの桜井和寿さん自身が他の出演アーティストへの興味や共感を積極的に語ってきたのならば、ファンの意識も変わっていたかもしれません。実は、ミスチルの『Worlds end』はスマパンの『Tonight Tonight』に影響を受けた曲だと言われています。それを大阪で一曲目に演奏したのは、桜井さんなりのリスペクトの表明だったのではないでしょうか。しかし、その思いは残念ながら一部のファンには届いていなかったようです」

 夏フェスがブームとなり、客層も幅広くなっている昨今。誰もが気持ちよくライブを楽しむためのポイントは、リスナーのネットリテラシーと、人気アーティスト自身の呼びかけにかかっているのかもしれない。
(文=編集部)