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マーティ・フリードマンがJ-POPへの”愛と嫉妬”を告白「AKBの『ヘビロテ』は僕が書きたかった」

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リアルサウンド

20140314-marty01.jpgJ-POPへの愛を語る、マーティ・フリードマン氏。

 メタル界でもっとも有名なバンドのひとつである、メガデスの元ギタリストであり、音楽評論家やプロデューサーとしての功績も数多い、マーティ・フリードマン氏。そんな彼がプロデューサー兼ギタリストを務める鉄色クローンXは、2012年12月に、ももいろクローバーZの楽曲をメタル調にカバーしたアルバム『鉄色クローンX』を発表し、日本最大のメタルフェス『LOUD PARK 13』に出演するなど、勢いのあるメタルバンドのひとつとして活躍している。リアルサウンドでは今回、日本の音楽が大好きなあまり、日本に住むことを選んだというマーティ・フリードマン氏が、現代の音楽シーンや、鉄色クローンXで行っている「コミカルな日本語詞とメタル音楽の融合」について、独自の切り口で語ってくれた。

 

BABYMETALはアイドルとメタルをうまく融合出来ている

——最近ブレイクしたアーティストで、マーティさんが気になっているのは?

マーティ:最近だと、BABYMETALは初期の頃から聴いてましたよ。僕のサイドギターである大村孝佳さんが彼女たちの「神バンド」のギターもやってるから。この間『ミュージックステーション』にベビメタが出たときも、バックでやってたり、『LOUD PARK 13』では僕のバンドとベビメタの両方に出て、忙しそうにしてたよ。世界って狭いよね(笑)。

——ベビメタと、鉄色クローンXの共通点として、「メタルに日本語のコミカルな歌詞が乗っている」ということが挙げられます。

マーティ:日本という国が持っている伝統的な雰囲気や文化と、メタルという音楽は合っていると思ってるよ。だから僕は『TOKYO JUKEBOX』シリーズを作ったわけだし。

BABYMETALがウマいなと思うのは、その若さを上手く活かしているところ。僕も彼女たちがデビューした頃に、雑誌やネットで対談とかをやらせてもらってたんだけど、正直、リスナーがどういう風に楽しむかわからなかったんだよね。メタル好きの若い男は、セクシーなお姉ちゃんの方が興奮するだろうって考えてたから(笑) 彼女たちのコンセプトはとにかく面白すぎるけど、評価されるまでのハードルはかなり高いなあと思ってた。でも、どんどん進化を続けて、素晴らしいものになってるから、彼女たちを見守ってきた立場としては、とてもうれしい。

僕が彼女たちを気に入っている部分は、ハッピーな部分とメタルな部分のバランスなんだ。雰囲気がメタルっぽくて、サビになるとポップになるアイドルソングっていうのがたまにあったりするんだけど、それって海外のメタルファンからすると恥ずかしいんだよね(笑)。彼女たちはハッピーな部分でも、ちゃんと音はメタルで、アイドルとメタルをうまく融合出来ていると思う。ヴィジュアル系もそうだったりするけど振付があることって、洋楽の文化とは全然違うものだし。このBABYMETALはそれをうまく利用していて素晴らしいですね。

——本場のメタルファンは彼女たちを見てどう思うんでしょうね?

マーティ:クレイジーだけど凄く目立って応援しやすい。「日本は最高の国だ!子供だってメタルをやってる!」って思うのかも(笑)。向こうの11歳のティーンって、ヒップホップばっかり聴いてるからさ(笑)。もしかしたら、オジー・オズボーンなんかも同じことを思ってるかもね。アメリカで「日本のBABYMETALって知ってるか?」って聞いて回っててもおかしくないよ。

あと、最近は自分のレコーディングに集中していて、BGMほどにしか聞けてないけど、最近いいなと思ったのがあって。「夢ふうせん」って知ってますか?

——おはガール!ちゅ!ちゅ!ちゅ!が2013年11月5日に出した『夢ふうせん』のことですか?彼女たちのサウンドプロデューサーは元JUDY AND MARYのTAKUYAさんですよね。

マーティ:そう。TAKUYAはやっぱり凄いよね! これ聴いてハッピーにならないわけないもん。そういえば、「元気になれる曲」を表現するのって日本の特徴かも。向こうだと「大変な時期があった時にこの曲に救われた」って表現になるんだけど、これって似てるけどちょっと違うように思う。

——マーティさんも、TAKUYAさんのように、アイドルプロデュースをやるつもりは?

マーティ:過去に北出菜奈さんのプロデュースをしたことがあるよ。またやりたいなーと思うね。いいきっかけがあるといいけど。僕の音楽はアイドルの世界に対して、遠回りに合っているとは思うから。まだまだいろいろ、アイドル以外にもできそうな気がする。J-POPも好きだし。愛さえあれば、うまく融合できる気もする。

これがアイドル界の「ボヘミアン・ラプソディ」だ

——アイドルの現場だと、お客さんがメタルっぽい楽曲でも振り付けを加えて踊っていますよね。これについてはどう思いますか?

マーティ:2011年の『ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会』に参加して気付いたのは、曲はメタルじゃないけど、お客さんがメタルより激しいってこと(笑)。常にシャウトしてるし、汗臭いし。その時、僕はステージの下から出てきたんだけど、メタルのライブよりうるさい男の声が聞こえてきて、「ここはどこだろう?」って。ずっとメタルをやってて、男の歓声には慣れているはずなのに、メタルより凄い反応だから「これパンテラのライブじゃなくてももクロのライブだよね!?」って何回もわかんなくなった(笑)。男の人たちはもしかしたらメタル好きなのかもしれないけど、そんな人がアイドルも応援するって、海外の環境ではなかなか無い文化ですね。

僕は彼女たちのプロジェクトに参加できて、ホントによかったと思ってる。どんなアーティストも、まずは曲ありきだと思ってるから言うけど、ヒャダインさんは天才だよ。はじめに曲を聴かせてもらった時に、これは冒険だなと思った。100人の合唱と、編拍子の捻ったフレーズと、ももクロ5人の掛け合いが混ざっている。そこに僕の変態ギターフレーズから出るメロディーを全部融合させちゃうんだもん。ホント夢みたいだったよ。でも、自分のギターだけをレコーディングする時は、ハードな音だし、冒険的すぎるからこんな大勢の人が聴くと思ってなかった。でも完成した曲を聴いたとき、僕は「これがアイドル界の『ボヘミアン・ラプソディ」だ』と確信したよ。自画自賛とかじゃなくて(笑)。でも、これが流行る国に住むしかないと思ったね。曲が完成したとき、僕はラスベガスにいたんだけど、音源をいただいた後、ラスベガスのストリップでももクロの曲を大音量で流したんだ。それがあまりにも場違いで、急に日本が恋しくなった。母国にいるのに、健康的な日本の音楽環境が懐かしくなっちゃったんだよ。

「ヘビーローテーション」に嫉妬心を覚えた

——マーティさんが推してるアイドルって誰なんですか?

マーティ:関わってるアイドルは気まずいから、AKB48でいいかな?(笑)。それだったら、まゆゆ(渡辺麻友)かな。AKB48といえば、先日のFNS歌謡祭に八代亜紀さんのギターとして出演したときのことなんだけど、出番を待ってる間に大広間でライブを見ていたら、彼女達が僕の1メートルくらい前で「ヘビーローテーション」を歌ってくれたんだ。その時の鳥肌の立ち方は半端じゃなかった。皆でアイコンタクトしながら踊ってるのなんかも凄いし、ドキドキしちゃって、このまま心臓が止まるんじゃないかと思ったよね(笑)

——「ヘビーローテーション」をマーティさん的に分析すると?

マーティ:この曲はね、初めて聞いた瞬間に嫉妬心が芽生えたんだ。「なんでこの曲を僕が作れなかったんだろう」「完全に僕の中にエッセンスとしてはあったのに!」って。ブライアン・ウィルソンが、フィル・スペクターの「Be my baby」を聴いたときに多分そんな気持ちになったんじゃないかな。それくらいツボなんだよね。この曲を聴いたとき、色々なことが頭に浮かんだ。「なんでこんな曲を作れたんだろう」、「どこからの影響だろう」って深く分析して、自分の曲作りに関してもう一度考えさせられる良い機会になった。どうやったら、もう一回「ヘビーローテーション」みたいな曲が作れるのかなって考えているよ。

ジャニーズは成熟したJ-POP

——最近の男性アイドルについてはどう思いますか?

マーティ:ジャニーズは、音楽的に素晴らしい、成熟したJ-POPだと思う。のベスト盤を聞いたら、次から次へヒットするような曲しか出てこないし、聴き入ってしまう。例えば、彼らがイケメンじゃなくて、曲だけで聴かれてたとしても売れてると思うよ。

 この音はTHE 日本の音!って感じ。海外に行って、戻ってきてまずこういう曲が耳に入ってくる。ビートとボーカルのユニゾンとかハモりとか生活に根付いた音だよね。

——ジャニーズの中でも、J-POPから少し離れているものもありますよね。KAT-TUNとか。

マーティ:それは彼らの年齢に関係あるんじゃないでしょうか。その年齢らしいというか。Hey!Say!JUMPは、成長しながら音が男っぽくなっていってるし。プロデュースのやり方が良いんだろうね。音色とか、コード進行なんかも。ボーカルのユニゾンが非常に多いし、四分打ちのディスコ・ハイハット・ビートが多い印象かな。

——同じような年代の子がやってる、EXILE TRIBEは?

マーティ:彼らの音はK-POPを思いださせるね。

——K-POPっぽいというのは?

マーティ:僕の思うK-POPっぽさって、「振り付けが多いMV」のことなんだよね。あと、メロディとサビが印象に残りやすい。K-POPのヒット曲ってサビのときに同じ言葉を繰り返すことが多いかも。「HELLO,HELLO,HELLO……」みたいな。だからわかりやすくて覚えやすい。MVも、人が家で見て真似できるようなレッスンビデオみたいになってるんだ。

——音とふりを合わせて一緒に覚える?

マーティ:そう。日本ではそれもあるけど、基本的にはアーティストのことを魅力的に映そうとしているものが多いよね。見やすいように、真似したければ、曲の真似だけじゃなくて、フリのマネも出来るようにっていうスタンスなんだろうね。EXILEグループって、フリとかダンスが素晴らしいから、もしEXILE TRIBEがこのやり方で勝負したら、若いファンはすごく喜ぶんじゃないかな。EXILE の「RISING SUN」よりは覚えやすいと思うし(笑)。

——K-POPとアメリカのダンスミュージックとの違いは?

マーティ:K-POPのサウンドはアメリカの2~3年前の音を目指してるんじゃないかなと思ってる。だからサウンド的には邦楽ほどオリジナリティはないかもね。LADY GAGAの流れに合わせてみたり、ダブステップの音をそのまま取り入れたり。東洋的な味が少ないと思うし。もう少しR&Bっぽいダンスミュージックになればいい曲が生まれてくるんじゃないかな。日本って、ダンスミュージックでもメロディがしっかりしてるものが多い。J-POPではどんな作品でもメロディがしっかりしていないとある程度しか売れないのかも。世界的にも、きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeみたいな、東洋的なユーモアを入れたダンスミュージックが評価されてるから、中田ヤスタカさんはスゴイと思う。

女性アイドルは売れてなくても、冒険的な曲がいっぱいある

——男性アイドルと女性アイドルの違いは?

マーティ:やっぱり男性向きのアイドルと女性向きのアイドルはそもそも違うからね。一番の違いは歌詞かな。男性アイドルは勇気が出るような応援ソングが多いんだけど、ももクロとかAKB48みたいな女性アイドルは、可愛さを持ち出すフレーズが多い。

——男性アイドルよりも、女性アイドルの方がチャレンジする楽曲が多いのはのはなぜ?

マーティ:いい質問だね。男性アイドルはスタンダードな路線が多くて、女性アイドルは売れてなくても、冒険的な曲がいっぱいある。

ファンの割合も違うのかも。女性アイドルは女性ファンと男性ファンが大体同じくらいいるじゃん。でも男性アイドルに男性ファンはあんまりいない。女性が見る理想の男性像はそんなに変化していないから、女性向けのコンテンツとして、ずっと安定しているのかもね。あとは、女の子のアイドルって、正統派よりもアウトサイダーなのが多いから、応援したくなるのかも。男性が応援したくなるような、アウトサイダーな男のアイドルが現れることを楽しみにしてるよ。
(後編へ続く)

(取材=吉住哲/構成=中村拓海)

■リリース情報
『LOUDER THAN YOUR MOTHER』
発売:2014年3月19日
価格:¥ 3,150(税込)

<収録曲>
1. KRITIKA
2. ダメ元Test yourself
3. Cheers!!!
4. ICHIBAN
5. 東京人間クロスロード
6. ボンバイェ
7. BITE
8. Quell the Souls in Sing Ling Temple
9. METAL CLONE ARMY
10. 胸キュンLOVERS