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『関ジャム』出演 zoppが語る、結婚式ソングの作詞法「テクニックはない、というのが特徴」

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 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、ヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”としての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらってきた。

 第17回目となる今回は、zopp氏が出演した5月13日放送『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系)のテーマだった“結婚式ソング”についてインタビュー。番組では語りきれなかった結婚式ソングの特徴や、アイドルが結婚式ソングを歌う難しさ、今後の潮流に至るまでを改めて聞いた。(編集部)

「どういう目線で誰に向けて歌うのか」

――結婚式ソングといえば、『関ジャム』のランキングにも入っていた「てんとう虫のサンバ」のイメージが根強いです。何か長く愛される理由があるのでしょうか。

zopp:結婚式っておめでたいんですけど、厳かなシーンと余興のようなちょっとハメを外す場面があるじゃないですか。「てんとう虫のサンバ」はそのどちらにもマッチする曲なんだと思います。てんとう虫の格好をして歌ったら、ちょっとはっちゃけた感じがしますし、普通に歌うと厳かなテンポ感で。もちろん、歌詞の内容がまさしく結婚式を描いたものだから、というのもあります。あとはてんとう虫や鳥が出てきて、おとぎ話のような歌詞で歌いやすく、間口が広いので世代を問わず聴きやすい。童謡が子供に受け継がれていくように、「てんとう虫のサンバ」も普遍的な要素が多いので、これからも継承されていくんだろうな、という気がしますね。

――結婚式ソングに特徴的な歌詞はありますか。

zopp:<未来>や<永遠の愛>は特徴的ですね。普通のラブソングで告白する時に「永遠に君を愛すよ」と歌ってしまうと、説得力がなくなって、逆に軽く見えてしまう。「死ぬまで守りきる」というような、大げさとも言える表現は結婚式ソングならではです。恋愛と違って結婚は周りに祝ってもらう、認めてもらうというのがあるので、第三者が登場することも多い。それこそ木村カエラさんの「Butterfly」や長渕剛さんの「乾杯」も結婚式の出席者や、友達の目線で書かれていますよね。

――嵐の「愛を叫べ」もそうですね。

zopp:「愛を叫べ」は同級生の女の子の結婚式、という設定で。<思えば長い付き合いだけど世界中の誰よりも綺麗だぜ><俺たちのマドンナに>という女の子を主体にして、女の子を喜ばせるような歌詞なのがジャニーズらしいです。歌詞を聴いて「嵐に嫉妬されてる」「嵐に祝ってもらえる」と思えるのが、ファン心理をくすぐるところでしょう。こういう視点の曲はレアですよね。彼らのような男性アイドルが結婚式ソングを歌う時、どういう目線で誰に向けて歌うのかが難しい。

――<ベイベー><マドンナ>といったノスタルジックな歌詞も印象的です。

zopp:多くの世代に受け入れるような歌詞を目指したんだと思うんです。“嵐の歌”というだけで、メンバーと同世代やそれよりも若い世代の人は自然と受け入れてくれる。でもメンバーよりも上の年代の人はそれだけだと共感できないから、式場にいる人全員に届くような言葉にしているんでしょう。ちなみに、結婚式ソングならではの<永久に愛し合って><素晴らしい未来へ>という歌詞もあります。

ーー女性アイドルの場合はどうなんでしょう。

zopp:モーニング娘。さんの「ハッピーサマーウエディング」は、結婚する娘がお父さんに向けて「ありがとう」を伝える歌でしたね。乃木坂46、欅坂46やAKB48グループで結婚式を主観的な目線で歌っている曲はあまりなくて。女性アイドルにとってもやはり、結婚式ソングは目線が難しいところだと思います。「ハッピーサマーウエディング」はモーニング娘。がまさに“国民的アイドル”になった時期だったからこそ、歌えたのかもしれません。あとはメンバーの中澤裕子さんの存在も大きかった。彼女はメンバーの中でも少し年上だったので、「中澤さんが主人公の歌」とすることで、ファンも納得していたのかもしれません。坂道やAKB48にはそういうメンバーがいないのもあって、結婚式ソングよりも恋人気分を歌った歌詞や、<僕>という男性目線の歌詞が多いんだと思います。もちろん、時代性というのも大きいでしょうが。

――アイドルが結婚するとショックを受けるファンも多いですもんね。

zopp:日本だけでなく、アジア圏ではそういう傾向ですが、例えばアメリカではOne DirectionやBackstreet Boysといったアイドル的人気のあるグループのメンバーが結婚しても、ファンがショックを受けるということがあまりなくて。男女ともに、結婚しているアーティストに対してネガティブなイメージは薄くて、むしろポジティブにみられることが多い。そういう文化と国民性も、アイドルが結婚式ソングを歌うことを難しくしているのかもしれませんね。アイドルではないですが、福山雅治さんの「家族になろうよ」の歌詞も女性目線で、結婚からちょっと距離を置いて、当事者ではないように見せています。安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」の頃は主観でもOK、という風潮だったのが、徐々にアーティストやアイドルがリスナーに近い存在になってしまって、変わってきたのかもしれません。僕も歌詞を書くとき、特に恋愛ものは<僕>と言わせることが多いですが、逆に上手くいかない恋愛ものだと女の子を主人公にしてしまう。無意識にそうしているように思います。

――『関ジャム』のランキングでは木村カエラさんの「Butterfly」が1位でした。zoppさんが印象に残っている結婚式ソングを教えてください。

zopp:改めてランキングを見て、1個1個の歌詞を吟味していったんですけど、番組でも藤林聖子さんが言っていたように、小室哲哉さんが描く女性はどこか影がある。安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」って、疑問形のタイトルがなんだか意味深で。主観の歌詞だから、このタイトルは家族か友達に向けたものだと思いますよね。結婚式はポジティブな未来へ、というイメージですが、<CAN YOU CELEBRATE?><CAN YOU KISS ME TONIGHT?>と、この曲は英語詞がちょっと不思議なんですよ。だから個人的には、もしかするとファンに向けて歌っているのかな、と感じました。

ーーなるほど。他にこの歌詞は凄い、と感じたものは。

zopp:中島みゆきさんの「糸」はすごくいいなと思っています。あの歌詞は結婚だけに捉えられないと思うんですけど、すごくわかりやすい例えで。縦の糸と横の糸で作って、生地や布になって体を守ったり、誰かの傷を拭いたりする。糸という素材を人に例えて、それが合わさることによって可能性が広がり、その可能性が全て人のポジティブになる。もう、あれに勝てるものはないんじゃないかな、っていうくらい。だから今も色々なアーティストにカバーされるんでしょうね。

ーー難しい言葉は使っていないのに、すごく印象的ですよね。

zopp:やっぱり、老若男女が集まる結婚式なので小難しい歌詞は少ない。なるべく多くの人に理解してもらえる歌詞が受け入れられやすいので、文学チックな表現や難しい比喩表現は避けられるんだろうな、と。そういう意味では歌詞的なテクニックはない、というのがむしろ特徴なのかもしれません。いしわたり淳治さんも『関ジャム』でおっしゃっていましたけど、Superflyの「愛をこめて花束を」も別に結婚式の歌というわけではなく、壮大な愛の歌ですよね。そういう詳細が描かれていない、大きな愛の歌は結婚式ソングとして使われるのかもしれません。

「嵐の『One Love』は“ザ・普遍ソング”」

――番組では結婚式ソングの目線が、「男→女」だったのが「女→男」、「女→女」と年代によって変わっていったという話がありましたが、今と昔で歌詞に違いはありますか。

zopp:今は昔と違って、結婚適齢期みたいなのもなくなってきている。何歳で結婚するのが普通、とか普通じゃない、というのもないですし。そういう社会の潮流もあって、結婚式ソングの歌詞を誰にフォーカスしていいのかが分かりづらくなっているのかもしれません。普遍的な歌詞や誰もが共感できる歌詞を書くことが難しい時代になったのを感じます。シンガーソングライターは超個人的な歌詞を書けるけど、アイドルは普遍的な歌を歌い続けているので大変だなと思います。最近はA面、表題曲に普遍的な物が少なくて、カップリングで普遍的な歌詞を歌って反応を探っている。昔は逆だったんですけどね。

――そう考えると、10年ほど前ではありますが、嵐の「One Love」は王道で、普遍的ですよね。

zopp:この辺りの時期から嵐が国民的アイドルに変わっていった。僕も仕事で、「○○」という曲を超えたい、とリクエストされる。売上を超えたい、作品の内容として超えたいというのは当たり前だと思うんですけど、歌詞の場合「何をもって超えるのか?」というのが難しいですよね。それでも「WISH」「Love So Sweet」に続いて大ヒットした「One Love」は本当にすごい。“ザ・普遍ソング”です。「愛を叫べ」は「One Love」との差別化も図らないといけないのが大変だったと思います。

――zoppさんなら、どんな結婚式ソングを書きたいですか。

zopp:非現実的なもの。昔観た『卒業』というダスティン・ホフマン主演の映画が、好きな人の結婚式に行って、彼女をさらうという内容で。そういうものを歌詞で表現してみたい。今はアイドルも現実的な歌を歌うようになっていますが、僕は、歌詞は憧れの、夢のある世界を書いている方ががいいなと思います。あとは親目線の歌詞も書いてみたいですね。綺麗事ではない、娘を嫁にいかせたくない父親の目線で。自分の周りで娘がいる人は、娘がどんな男を連れてきても絶対に認めない、って言うことが多くて(笑)。たぶん“お父さんあるある”なんだろうな、と。最終的には周りに説得されたて結婚を認めて祝っているんですけど、心の中では「なにくそ!」って思っている。しかも、自分が結婚する時に、妻の父親にしたことをされる、という。その葛藤を歌詞にできたら面白いと思います。すごくマイノリティな歌なんですけど、書いてみたいですね。男性が歌ってももちろん良いし、逆に女性が歌っても面白そうなので。

――今後の結婚式ソングは、王道の歌詞よりも目線を工夫したものが増えるのかもしれませんね。

zopp:そうじゃないと、これから先に受け継がれていかないような気がします。そもそも音楽以外のコンテンツも増えた現在、なにか大きな改革や分岐点がない限り、一般的なリスナーが90年代や00年代のように音楽に人生や時間を注ぐことはないと思うんです。今回の『関ジャム』のランキングに昔から歌われている曲が多くランクインしていたことからもわかるように、特に結婚式ソングはニッチで開拓しがたい分野だと思いますが、新しい視点を与えたいですね。

(取材・文=村上夏菜)

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