ももクロ、モー娘。、NMB48も……JPOPを席巻する「EDM」はどこまで広がる?
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ざっと2013年を振り返ると、ダンス・ミュージック・シーンはやはりEDMの一言に尽きる。街中で耳に入る音楽もEDMが溢れていて、例えそれが初めて聴いた曲でもとりあえず「これもまたEDMだな」とひとりごちれば、そこそこ様になる。横に彼女でもいればなおよし。「EDMってのはさぁ、エレクトロニック・ダンス・ミュージックの略称で云々」と語れば、彼女もキミに惚れ直すことは間違いないのかもしれない。
と、多少極端ではあるが、ここで言いたかったのは、それくらいEDMは本来のハウスやテクノ、トランスといったジャンルを飛び越えてヒップホップもR&Bもポップも一緒くたになって、猛威を振るったということだ。思い返せば、2013年初頭に音楽ランキングの権威である米ビルボードが「Dance/Electronic Songs」というチャートを新設。これがいわば“EDMチャート”と呼ばれるもので、ビルボードもこのムーヴメントを無視できなくなった。
実際に本場であるアメリカでは、その勢威が衰えることなく、バウアー「Harlem Shake」は社会現象を起こし、ジャスティン・ビーバーも「Beauty And A Beat feat. Nicki Minaj」で華麗にEDMの貴公子を演じる。ウィル・アイ・アムとブリトニー・スピアーズ「Scream & Shout」やゼッド「Clarity」、カルヴィン・ハリス「Sweet Nothing feat. Florence Welch」などヒット曲を挙げればキリがないが、一方でリンキンパークがスティーヴ青木と共作を発表したり(『SUMMER SONIC 2013』で世界初披露)、と他ジャンルとの配合にも依然とし
て積極的。近年におけるヒップホップやR&Bとの親和性は、デヴィッド・ゲッタの諸作やリアーナ「We Found Love」を例に出すまでもなく証明されてきたが、EDM系プロデューサー×各ジャンルのトップ・アーティストといった黄金の図式は今後も多く見られそうだ。
そんな現象は今年、日本でも多く見ることができた。安室奈美恵が「Heaven」(アルバム『FEEL』収録)でゼッドをプロデューサーに迎え、EXILEによる「EXILE PRIDE~こんな世界を愛するために~」や三代目J Soul Brothers「BURINING UP」などに代表されるようにもともとダンス・ミュージックを掲げていたアーティストはごくごく自然にこの流れに乗っているようだ。
一方で、アイドル勢では、ももいろクローバーZ「Neo STARGATE」(『5TH DIMENSION』収録)が2分20秒あたりからスクリレックスばりの尖ったブロウステップをかましているが、モーニング娘。「愛の軍団」やNMB48「カモネギックス」などにもEDMの影響の一端が確認できる。もちろん中田ヤスタカや☆Taku Takahashiなどダンス・ミュージックの先進性をJPOPに落とし込む先鞭をつけたプロデューサーの楽曲が以前より存在するが、より多くの人がEDMを通じて、ダンス・ミュージックに触れたことは間違いないだろう。
そんなEDMの魅力はやはり“キャッチー”であること。エレクトロ・ハウスやトランスなどの高揚感溢れるブレイクが随所に配され、さらにメロディックなラインやフックが存在し、ボーカルがメインになることが多い。これまでのダンス~クラブ・ミュージックは流れが重視され、1日を通して現在のEDMのような楽曲はピークタイムにかかるだけであった。ボクシングで言えば、ジャブで丁寧に組み立てて、チャンスと見るやストレートやアッパーを打つ。かたやEDMは、最初からデンプシーロールやガゼルパンチを打ってくることもあり、派手なKOを狙うイメージだ。ボクシングとK1の違いというのか、どちらが良いというわけではなく、好みの問題であろう。少し前の日本の格闘技ブームに少し似ていて、多くのライトユーザーを取り込むことに成功はしているが、今後そのライト層をちゃんと取り込んでいけるかが、日本のEDMシーンの今後の課題となるかもしれない。
世界的にみると、先述のように依然として盛り上がりを見せているが、やや落ち着きも見せ始めている。ダフト・パンクが生音に回帰したように、アヴィーチーの最新作『True』でも、アコースティックが大幅に取り入れられており、徐々に“ポスト”の動きも確認することができる。常に変化が求められる音楽シーンで、2014年はどのような動きを見せるか、その動向に注目していきたい。
(文=中西英雄)