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YMO、パット・メセニー、バルトーク……SUGIZOの音楽観を変えた幅広い楽曲

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 隔週木曜日の20時~21時にInterFM897でオンエアされているラジオ番組『KKBOX presents 897 Selectors』(以下、『897 Selectors』)。一夜限りのゲストが登場し、その人の音楽のバックボーンや、100年後にも受け継いでいきたい音楽を紹介する同番組では、ゲストがセレクションし、放送した楽曲をプレイリスト化。定額制音楽サービスKKBOXでも試聴できるという、ラジオと音楽ストリーミングサービスの新たな関係を提示していく。11月30日の放送には、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN/Juno Reactor)が登場。“自身が影響を受けた音楽”と“100年後に残したい音楽”を紹介する。今回はそのプレイリストから彼の音楽性を掘り下げるべく、同回の収録現場に立ち会った模様の一部をレポートしたい。

 SUGIZOがまず自身のルーツとして挙げたのは、オルフェウス室内管弦楽団の「バルトーク: ルーマニア民族舞曲」。幼い頃よりクラシックの英才教育を受けてきた彼は、「小さい頃は例に漏れずベートーヴェンやモーツァルト、バッハで育って、バイオリンはクライスラーやブルッフで育ってきた。でも、心から感動したのがこのバルトーク。今思うと不協にも近い、すごいテンションコードがいきなり入ってくるのは、8、9歳の自分には摩訶不思議で。その神秘さにやられてしまった」と語る。当時は天文学や考古学など、未知の領域や歴史を知ることにも興味を持っていたようで、「バルトークの音楽と天文学や考古学が結びついた。すべて僕にとっては未知なものだった」と、自身の音楽観をガラリと変えたことを明かした。

 SUGIZOといえば、スーパーギタリストであると同時に、一流のバイオリニストでもある。最新作『ONENESS M』はギターやプログラミングがメインではあるものの、アルバム最後の「光の涯 feat. MORRIE」では、存分にその腕前を披露。バンド・ソロで書く楽曲にも、クラシックから影響を受けたかのような構成があるなど、この原体験は音楽人生においてかなり大きなもののようだ。

YMO「Perspective」

 続いて「10代20代の節目となった曲」として挙げたのは、YMOの「Perspective」(アルバム『サーヴィス』収録)。SUGIZOがYMOに出会ったのは中学生の頃で「子どもだったので、最初は『TECHNOPOLIS』や『RYDEEN』が分かりやすかったんですけど、その直後に聴いた『BGM』や『TECHNODELIC』といった、彼らのなかでは暗いとされているアルバムにずっぽりハマってしまった」とその影響についてコメント。ただ、そのなかでも1曲となるとこの曲が真っ先に浮かぶようで、YMOが「散開」前にリリースしたアルバムのラストトラックということもあり、「当時の有終の美を飾るこの曲のロマンティシズムにやられてしまった」そうだ。そして、YMOのなかでも「同じクラシックのバルトークやラベル、ドビュッシーをルーツとする坂本(龍一)さんに惹かれていた」と明かしてくれた。

 エレクトリックなサウンドは、SUGIZOのソロ作を語る上では欠かせない要素。本人がプログラミングまですべて行なっており、その緻密さ・繊細さはバンドで見せるサウンドとは異なる魅力を持っている。そういった意味で、電子音楽家としてのSUGIZOの原体験がYMOの『BGM』や『TECHNODELIC』だというのは、ロックギタリストとしてのSUGIZOしか知らないリスナーにとっては衝撃だろう。

The Beatles「Across The Universe」

 また、「音楽を始めてから影響を受けた曲」には、The Beatles「Across The Universe」(アルバム『Let It Be』収録)をピックアップ。「みんなが好きなものが嫌いな子どもだった」という彼は、音楽を始めるまでThe Beatlesを避けて通ってきたのだが、1997年前後にその魅力に気付き、ジョンの声にハマり、そのなかでもこの曲を最も好きになったという。また、彼は「当時、LUNA SEAがどんどん大きくなってきて、反比例して自分の精神状態は落ちていった。人が信用できなくなったり、求めていたものはこんなはずじゃなかったという自問自答があったり、バンドを辞めようとしていた時期がある。そのときに偶然The Beatlesの本を手にして、その内容に救われた」と、音楽だけではなく、人生の転換点を支えたアーティストでもあったそうだ。

Pat Metheny Group「Au Lait」

 そして、同じテーマの2曲目には、Pat Metheny Group「Au Lait」(アルバム『Offramp』収録)。16歳のときより、マイルス・デイヴィスやジャコ・パストリアス、渡辺和美に影響を受けていたというSUGIZO。ロックバンドに入る前はジャズギタリストになりたかったというくらい、ジャズについての造詣も深い。パット・メセニーについては、「当初は興味なかったけど、大人になってから彼の良さに気付いた。とくにメセニーは抜きん出た革命家。元々はウェス・モンゴメリーから始まったスタンダードでモダンなジャズギターを学びつつ、1stアルバムから彼独自のスタイルが出ていた」と絶賛。さらに「ずっとシーンを先導しているスタンスに共感を覚えますし、この人が引くギターのフレーズや音色が好きで。憧れでもあります」と、自身との共通点や彼への思いを明かした。

 なお、番組ではほかにも、SUGIZOの“100年後に残したい音楽”として、「偉大なるロックスターの隠れた名曲」や、「自分が息を引き取るときに思い出すであろう曲」を紹介したり、11月29日にリリースしたアルバム『ONENESS M』についてのトークも行われた。

 幅広いジャンルを横断し、それらを余す所なく吸収しながら、今に至るまで様々なタイプの楽曲を生み出しているSUGIZO。今回紹介したプレイリストと、彼の手掛ける楽曲を聴き比べることで、プロデューサーとしてのSUGIZOの凄さがより理解できるようになるはずだ。

(文=中村拓海)

■番組情報
KKBOX presents『897 Selectors』
DJ:野村雅夫 
放送日:毎月第一・第三週木曜20:00からInterFM897でオンエア
番組ホームページ

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