エイベックスのアイドル戦略着々 iDOL Streetは現シーンの縮図的ラインナップに
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R&B/ダンス・ミュージックを主軸にしていたavexがここ数年、アイドルシーンにも力を入れているのは周知の事実だが、最近はとくに活発な動きが目立つ。中でも注目したいのは、avexのアイドル専門レーベルであり、プロジェクトでもあるiDOL Streetだ。2013年10月14日に東京・日本青年館にて行われたiDOL Streetのファン感謝祭フェス『アイドル収穫祭 〜iDOL Street EXPO 2013〜』では、iDOL Street第3弾グループであるGEMが、2014年1月1日にメジャーデビューすることが発表された。
GEMは、全国各地で活動するiDOL Streetのメジャーデビュー候補生「ストリート生」の中から選抜されたメンバーで結成。iDOL Streetの第1弾グループであるSUPER☆GiRLSが、アイドルポップとしてブレイクした時期のモーニング娘。を意識し、第2弾グループ であるCheeky Paradeが、激しい楽曲と全力ダンスでももいろクローバーZ的なアプローチをしているのに対し、GEMは、ダンスアンドボーカルというavexの保守本流的なパフォーマンススタイルで勝負している。iDOLStreetというプロジェクトが軌道に乗ってきた今だからこそ送り出せる、avexとしても満を持したアイドルグループといえよう。
そんなGEMだが、先輩グループのCheekyParadeにとってはどう映っているのだろう。CheekyParadeは、SUPER☆GiRLSに落選したメンバーたちが集まり、iDOLStreetのストリート生システムを一から作って、ノルマ制のCD販売や、新宿BLAZEを満員にするなどの試練を乗り越えて、やっとの思いでメジャー デビューを掴みとったグループ。同日は、11月27日に発売されるCheeky Paradeのファーストアルバム『Cheeky Parade I』から、これまでの活動の集大成的な楽曲である「チェケラ」が初披露されたところだった。「チェケラ」は、「C.P.U!?」などのチップチューン的アレンジと、「BUNBUN NINE9’」「チーキードリーマー」などで使われたダブ・ステップ的ビート、そして「無限大少女∀」の疾走感を併せ持った、Cheeky Paradeにとっての最高到達点。この楽曲でスタイルを確立したかに見える彼女たちだが、今後、GEMの存在がその方向性に影響を与える可能性もあるだろう。メジャーデビューが決まった後輩グループに、対抗意識を燃やすこともあるかもしれない。
だが、GEMもすべてが順風満帆だったわけではない。メンバーはGEMに辿り着くまで、ローカルアイドルなどとしてさまざまな経験を積んでいる。特にリーダーの金澤有希は、AKB48の10期研究生として、入山杏奈や市川美織らと共にデビューを夢見たものの、一度挫折を味わっている。地方出身者も多いGEMには、言葉の端々から思いの強さを感じることも出来る。生半可な気持ちではないのは、CheekyParadeと同様だ。
東京女子流、BiS、Dorothy Little Happyに加え、SKE48が移籍。さらにはアイドリング!!!の新グループであるアイドリング!!!NEOまで参入し、avexというレコード会社の枠の中だけでも、幾多のライバルが存在するiDOL Street。だが、AKB以降に作り上げられたパブリック・イメージとしての“アイドル像”を世間に向けて発信し続けているSUPER☆GiRLSを主軸に、先鋭的なCheeky Paradeと保守本流のGEMという、全く逆の個性を持った2組を加え、さらにストリート生システムやローカルアイドルの要素も内包したiDOL Streetというプロジェクトが、今後のアイドルシーンで重要なポジションを占める可能性は充分にあるだろう。なぜなら、iDOL Streetの構造は、現代のアイドルシーンの縮図であり、そこには自家発電的にアイドルたちが高め合う仕組みがあるからだ。
もし、いまのアイドルをどこから見ていいかわからない場合は、一度iDOLStreetをパッケージとして見てみるのもいいかもしれない。シーンの全体像を知る手がかりがあるはずだ。
■エドボル
放送作家。『妄想科学デパートAKIBANOISE』(TOKYO FM水曜25:00-)『安田大サーカスクロちゃんのIdol St@tion』(目黒FM隔週木20:00-)、『Tokyo Idol Festival2013』(フジテレビNEXT)など、テレビ・ラジオなどの構成を担当。サイゾー、SPA!などでもアイドル関連のインタビューを中心に執筆中。