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「ヒップホップは“バイオレンス”を“競技”に変えた」Zeebraが教える、高校生RAPの見どころ

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リアルサウンド

20130917zbr-01.jpg『高校生RAP選手権』のコミッショナー、Zeebra氏

 スカパー!オリジナル番組『BAZOOKA!!!』から生まれた『高校生RAP選手権』(以下、『RAP選手権』)。不良、ネットラッパーなど個性ある素人の高校生たちが、それぞれの生い立ちを前面にぶつけ、同じラップを通して友情を育む熱い青春バトルだ。その第4回全国大会が9月21日に赤坂BLITZで開催されるのに先駆け、大会コミッショナーのZeebra氏に話を訊いた。

――フリースタイルバトルといっても、さまざまなスタイルがあります。そんな中で、アバウトにいえば、2000年前後のB-BOY PARKで行われていたフリースタイルバトルは、小節でライムを合わせるKREVAスタイルが多かった。一方で、その後のフリースタイルバトルの権威となったULTIMATE MC BATTLEは、細やかな譜割が多かったように思います。『RAP選手権』は、どのようなスタイルが評価されますか?

Zeebra:ラップの良し悪しは、何かひとつのポイントだけで決められるものではないんですけど、英語圏のバトルの方式は、ケツ(小節の終わり)で韻を踏みながら、内容で勝負する。言われたことに対して、「アンサー」を返して、なおかつ最後に「ライム」を入れる。それが基本で、そこに「フロゥ」を入れてきたりする。スタイルの話ですが、実はラップしているヤツらからすると、詰めるほうが簡単なんですよ。というのは、言葉数を合わせなくていいから。詰めないでラップをすると、16ビートなんで、だいたい16文字くらいですよね。息継ぎが入れば、14文字前後かな。そこに文字を当てはめるというのは、俳句みたいなテクニックが必要になるんですよ。

――簡単に見えるけど、実は難しいと言われたダウンタウンの漫才のような深みですね。遊びでラップをしている側からすると、詰めないでラップしたほうが考える時間があって楽だから使いますが、突き詰めていくと、そのようなテクニックがあるんですね。

Zeebra:その中で、カッコいいフロゥを作るのが難しい。ラップの聞こえは、早口で詰めているほうがいいのかもしれない。ラップは、早口っていうイメージがあるから。俺も、誰かとフリースタイルバトルやる時に、向こうが早口で来たら早口で返す。もちろん、早口もフロゥとしてすごくしっかりしていて、2小節の中に3~4個のライムを入れてきてたりするのは別です。ただ、バーって早口でラップして、ケツだけ合わせるのは、比較的簡単ですね。評価の焦点は基本的には内容。こういうこと言って、それに対してこう韻を踏んで、(ストーリーを作って)落としているかどうか。そこに「フロゥ」や立ち振る舞い、キャラクターが加味されます。

――それが、まさに番組内でダースレイダーさんが解説されていた評価基準、「ライム」「フロゥ」「アンサー」「パンチライン」「アーティチュード」ですね。『RAP選手権』では、その総合力で勝負が決まる、と。

Zeebra:そうですね。やっぱりバトルなんで、言われたことに返す「アンサー」。相手をけなすというのは、その特定の相手だけにしか言えないこともあると思うんですけど、それだけじゃないですよね。「お前のラップはダサい」とか、誰にでも言える。それは考えてこれちゃう。つまり、仕込めちゃう。もちろん、多少は自分の得意なラインが入るのはいいけど、アンサーをすることによって、その場での即興性がものすごく重要になるんですよ。パンチラインは、いいジャブを打つのは大切なんですけど、いざという時にバシっとしたストレートをかませないと(筆者注:トラックが『証言』なら「証言で証明するこの上下」など)。アーティチュードは期待度、アーティストとしての期待値。「コイツ、これからやってくれるんじゃないかな」っていうのも踏まえて見ます。

20130917zbr-02.jpg『高校生RAP選手権』には、Zeebra氏以外にもDABO、SEEDA、DARTHREIDERなどのラッパーも出演。

――「アーティチュード」は「姿勢」ではなく、「期待値」と見るのですね?

Zeebra:俺の立ち居地からは、そういうふうに見ちゃいますね。ヒップホップは、若い人たちの大衆文化、大衆音楽だと思うんですよ。芸術音楽(筆者注:クラシックなど)みたいな視点であれば、限られた人に届ける側面もある。ただ、大衆音楽である以上は、カリスマ性だとか、そのアーティストの魅力だとか、そういうものがないと世に出て光っていかない。

――もうひとつ、『RAP選手権』の特色、「試合後の握手とアドレス交換」という試みが面白いですよね。どのような狙いがあったのでしょうか?

マネジャー氏 第1回大会が、不良が多くて、ケンカしそうになったヤツもいたんです。あとフリースタイルバトルって、エキサイトして体ぶつけるヤツがいたりするから、ステージに白線引いて、それを超えたら負けにするイベントもあった。そういった情報を小藪(千豊)さんが知っていて、そういう方向にならないように作ったんじゃないかな。

Zeebra:そうね。「メアド交換」は、小藪さんのアドリブだね(笑)。「握手する」というのは決めました。やっぱり、フリースタイルバトルもスポーツと同じで、正々堂々とやるのが楽しい。アメリカでも、Kendrick Lamarが「Control」で、売れているラッパーの名前を何人も挙げて宣戦布告した。大騒ぎになったけど(笑)、怒りっていうのではなくて、「My n*ggas」、つまり「俺の仲間たち。お前らに愛はあるけど、お前ら全員を食ってやるぞ」って言っているんですね。ディスられたほうも、競技的なものなんですよ。たとえば、バスケットボールを友人とやる時に、「一点も入れさせねぇぞ」って本気でやるじゃないですか? 友人との遊びなのに、熱くなっちゃう時もある。けど、終わった後、飯食い行くじゃないっすか。「ふざけんなよ」「マジやられた」とか言いながら。それと一緒ですね。特に『RAP選手権』って、もともとの遺恨があるわけではない。

――それすごくいいですね。スポーツのように、フリースタイルバトルを成立させる試み。スポーツ的要素があるのは、決してヌルいことじゃないと思います。

Zeebra:ヒップホップの始まりは、ニューヨークのブラック・スペード団のボスだったAfrika Bambaataaが、ギャングの抗争を血で争うのではなくて、ブレイクダンスやフリースタイルバトルで争うように変えたのが始まりのひとつでもある。“バイオレンス”を“競技”に変えたのがヒップホップですよね。

後編:「フリースタイルバトルだけでは食べていけない」Zeebraが身をもって知った、メジャーシーンに切り込む重要

(取材・文=石井紘人[@FBRJ_JP]

●『BAZOOKA!!!第4回高校生RAP選手権全国大会』
日時:9月21日(土)16:00開場 17:00開演(予定)
会場: 赤坂BLITZ(東京都港区赤坂)
出演者:小籔千豊、真木蔵人、紗羅マリー、レイザーラモンRG
Zeebra、DABO、SIMON、DARTHREIDER、DJ KEN-BO
主催:スカパーJSAT株式会社
運営・制作協力:DISK GARAGE
お問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~19:00)

BAZOOKA!!!公式HP